もくじ
今回お話しします雨漏り工事は、複数箇所に雨漏り原因の疑いがあるものでした。
よくお客様から、雨漏り工事のご依頼を頂く際に、雨漏り原因を一つだけだと勘違いしている方がいらっしゃいます。実は雨漏りというのは、様々な箇所の不具合が重なって起こるのです。
実例を踏まえて、どういったものが雨漏り原因になるのかご紹介いたします。
雨漏りは原因となるものを潰していくのが重要
ご相談くださったお客様は、弊社にご相談頂く以前に別の塗装会社で外壁塗装をしていました。数年前に塗装工事をしたものの、艶ありの塗料をリクエストしても艶なしを塗られてしまったり、今回の雨漏りについての相談も、サーモグラフィで診断をして屋根が原因と言われたり、お客様としては疑問が残る工事や見積もりだったそうです。
そこで、どこか別の業者にも相談をしたいと思い、頭に浮かんだのが街で見かけた塗装職人でした。
何度か弊社の事務所前を通ったことがあり、ご存じだったそうです。
しかし相談するかどうかを非常に悩まれ、弊社の前を3回も素通りしたのだとか。
(その後、あの時決心して相談をしてよかったと、工事が終わってから言っていただくことができ,本当に嬉しく思いました。)
ご相談を頂いてから、まずは僕がご自宅へ伺い、雨漏りについてさまざまなチェックを行いました。
雨漏り原因として怪しい箇所を一つずつ潰すため、何日間かお客様宅へ通うことに。
労基にひっかからない高さの箇所に関しては、はしごを使って登り、下屋根なども拝見しました。
原因として潰せるところを全て潰し、簡単な補修ですむところは手を入れてみましたが、それでも雨漏りは続いていましたので、ここからは本格的に原因をしぼるために工事に入ることに。
これらのチェックは、僕が職人だからできることです。
職人ではない営業の場合、現場調査の際に職人を引き連れて来ることでしかチェックができません。
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〔参考ブログ:雨漏りを様々な角度から検証〕
この方と別の話しですが、現場調査に来た際に、こんなことがあったそうです。現場調査当日、約束の時間よりも早く塗装業者が来てしまい、まだお客様の準備ができておらず少し待ってもらったところ、
営業が職人を制止することができず、職人が壁を乗り越えて家の周りのチェックを始めてしまったのだそうです。
たしかに職人としては、現場調査は作業としてお金にならないため、少しでも早くチェックを終えて自分の現場に向かいたかったのでしょう。
とはいえ、そんな調査をされてしまってはお客様が恐怖を抱きます。
その点、弊社の場合はマナーも兼ね備えた一級塗装技能士がそろっていますので、そんな無作法な職人はいません。
ましてや僕自身が職人のため、きちんと雨漏り原因を探すために丁寧に時間をかけたチェックをすることができます。
この点が、職人が社長の会社である塗装職人の技術力なのです。
雨漏りの原因は天井裏の中に
現場調査に伺い、実際お客様宅を拝見してみると台所の天井に穴が空いていました。
ということは、その部分に1点集中で水が落ちてきているということです。
そこでまず、お客様に許可を頂き、天井に穴をあけて中をのぞくと、配管部分に水が漏れ出ており、今まさに水がしたたり落ちる瞬間でした。
写真をご覧ください。
ビニールテープをぐるぐる巻いてある配管のL字部分の中心に、へそのような〇部分があるのがわかりますでしょうか。これは水滴です。
さらに側面にある壁を見ると、打ち込まれた釘穴から水がしたたっているのが、ベニア板についた水の跡からわかります。
その釘を外壁から見てみると、原因になりそうな釘が帯部分にありました。
通常の工事では釘を打たない場所です。
みなさん、たかだか小さな釘だと思われると思いますが、釘穴はよく雨漏りの原因になります。こんな小さな水の通り道が、雨漏りを引き起こすのです。
今回は、配管の水漏れが一番大きな原因でしたが、この釘穴の雨漏りもじわじわと家を蝕むものでした。
次に気になったのは、キッチン上にある下屋根(げやね)です。竪れだけの雨漏り原因が見つかったので、さっそくそれぞれ専門の職人に手配をし、補修工事を行いました。
雨漏りを防ぐための工事いろいろ
一番目は、屋根にある明り取り窓の雨漏り補修工事です。本来であれば使用しないシリコンで補修をしました。
あくまでも弊社のやり方ではありますが、ガラスと密着させることを優先した結果です。
ここは防水職人が担当します。
二番目は配管です。
設備の専門職人が、補修を行います。
ビニールテープを剥がしてみると、半透明の緑のエルボ配管が出てきました。
実はこの半透明のエルボ配管はハウスメーカーなどで指定があり最近多くの現場で使われているものなのですが、透明になっていることで内部がチェック出来る反面、接続している配管と材質が違うため10年経つと緩みが出てきてしまうことがあるのだそうです。
この配管を作った当初は、こんな欠点が出てくるとは思わなかったのだと思います。
しかし設備の職人の話では、この水漏れは最近よくあることなのだとか。
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(弊社の職人ブログ・内藤ブログでもこちらの工事について紹介しておりますので、是非ご覧になってみて下さい。)
緩んでいる部分の配管交換をしたのですが、こちらの配管は全て壁の中にしまい込まれているために折れ曲がり、非常に複雑な工事になる予定でした。お金も時間もかかりますため職人からお客様へご相談をし、配管をあえてトイレ内部に少し出すことで、工期も費用も抑え家を壊さない方法で工事することに。
選択肢を提示したことで、お客様の納得いく形で補修を行い、非常に喜んでいらっしゃいました。
ちなみに、工事後に点検口も作り(上記写真参照)、また何かトラブルがあった際にはすぐに点検できるようになっています。なぜなら、一度雨漏りが起こった場所というのは、病気の既往症と同じで繰り返すことが多いからです。こうすることで、また何かあった際には無理に天井に穴をあけずとも、点検と補修ができます。まずはこれで配管の補修が終わりました。
三番目は、余計な箇所に打ってある釘穴には水が入らないようにカバーを。
点検の際におこなった簡単な工事でしたが、少しでも壁内に水がしみこむのを防ぐようにしました。
最後は、下屋根の工事です。
防水シートなど、非常におさめ方のおかしい屋根でしたので、屋根職人とシール職人とで回避方法をいろいろ相談しました。
こちらの屋根は写真では少しわかりにくいですが、左から右にかけて勾配があります。
今回は屋根の勾配の高い部分に、写真のような形でシールを打って、防水紙の端っこを袋状にし、壁の中に屋根を伝って雨が入るのを少なくしました。
またコーナー部分は、角度をつけるために防水紙を切ってあるはずなので、そこも補修を。
また板金を切るときに、点で穴があくため、そこから水が入らないようにしました。
なぜぐるりと壁を一周するのではなく、このような山という字のようなシーリングを打つのかと言いますと、別の箇所から入り混んだ水が抜ける隙間が必要だからです。
屋根の壁の中に潜り込んでいる屋根の端を全て埋めてしまうと、壁中の水が抜けなくなってしまいます。
こういった屋根の雨漏りを止める為の工事も、屋根の構造や仕組み、そして水の入りこみだけではなく別の箇所から入りこんだ水の排出などを知りませんと、雨漏りを止めることだけに特化した工事だったはずが、壁の中に侵入した水の出口がなくなり、結局また別の雨漏り原因を作り出してしまうことに。
これではせっかく工事をしても、家の状況改善にはなりません。
雨漏り工事には、こうした様々な方向からおさめ方を考える必要があるのです。
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〔参考ブログ:雨漏りの修繕工事振り返り〕
雨漏りは職人の現場経験にも発見度合いは比例する
よく防水工事の職人で、数年ほどしか経験を積んでいない職人をメインとした現場を見かけます。
防水工事は雨という自由自在に形を変えられる相手との戦いなので、現場の経験が少ないと無数にある雨漏り原因を見つけられないため、非常に厳しい工事となります。
それゆえに、「原因が分からなければ、とりあえず屋根をなおしておけ」のような、乱暴な論法が出てくるのです。
是非依頼する際には、職人の技術だけでなく、経験もふまえて検討してみて下さい。
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〔参考動画:雨漏りの悩みから本気で解放されたい〕
塗装工事をする際も雨漏りを防ぐ手段を考える
こちらのお客様宅では、雨漏り補修工事以外にも、屋根のカバー工法と壁の塗装も行いました。
カバー工法の際に使用する、防水紙はお客様に実際さわっていただき厚みの確認を。この防水紙の素材は改質アスファルトとなっています。
先ほど雨漏り原因で紹介しました帯の上に打ってあった釘もそうですが、釘は場所によっては打つことがNGな箇所も。屋根や天板もその一つです。
ただこの防水紙の場合、あけた釘穴を塞ぐことができます。
防水紙は通常屋根に大きなステープラのような工具(タッカー)で打ち付けていくのですが、この防水紙の場合、貼り付け後に太陽熱でアスファルトが柔らかくなり、釘穴に入り込み穴を塞ぎます。
こうすることで、屋根上に釘を打ったにもかかわらず雨漏りを回避することが可能に。
雨漏りになりうるところに気を配り、前もって手を打つことで雨漏りを回避するのも大事な雨漏り工事です。
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〔参考動画:屋根の雨漏り対策におすすめの工事費用150万円のカバー工法〕
雨漏り補修工事は各専門分野の職人が必要だからこそ、良い業者選びを
今回の雨漏り補修の工事には、本当にたくさんの専門職人が集結しました。
家というのは、さまざまな職人の技術が集まってできているからこそ、これだけの手法と工事が必要になるのです。
僕は常日頃から、お客様には塗装業者を見定める為の目を養うために多くのことを知って頂きたいと願っています。
しかし、最近はネット上の知識で理論武装だけして、塗装工事をするための目的を見失っている方も。
上記でご紹介したように、雨漏りを引き起こす原因は複数あります。
実際、こちらのお客様宅では今回の台所の天井以外にも、別の箇所から2回ほど雨漏りがあったそうです。
現在は確かめられませんので、原因を確定することはできませんでしたが、少しでも雨漏りの原因になりそうなところは、今回の工事でできる限り潰しました。
こうして雨漏りの原因を潰すことこそが、雨漏り工事に必要な『内容』なのです。
雨漏り工事は、工事が終わってからようやくスタートラインに立ちます。
施工した内容が合っていたかどうか、雨が降る度に答え合わせが始まるのです。
家を永く持たせるためにも、業者選びをただのディスカウント交渉だけにしないでください。
それよりも、どれだけ家の事に向き合って工事内容を提案してくれるかが肝となります。
工事内容に着目すれば、良い塗装業者に出会えるはずです。