塩害でサビの腐食が進んだ立駐機、塗装によって美しく復活

今回の記事は、日産株式会社様の地上多段式立体駐車場の塗装です。

鉄製の立体駐車場にサビが発生し、その腐食が進んでいるということで、その修復のご依頼を頂きました。

 

鉄への塗装では、サビの影響を受ける前の塗装であったり、サビが内部に侵食していない間に補修ができれば、防サビの耐久性は高いと言えます。

ただし立体駐車場の場合、車が乗ったり地面に擦れたりする部分の塗料が剥がれるため、どうしてもサビが発生しやすくなるのです。

 

しかも今回のケースは東京湾のすぐそばの、屋外にある立体駐車場。潮の塩害をモロに受けてしまうため、一見してわかるほどに、サビによる腐食がかなり進んでいました。

作業は、状況確認から始めます。

 

サビ状況の確認

作業の前に、状況の確認です。

サビの状況によって必要になる施工が変わるため、問題点を見落とさないように確認する必要があります。

かなり腐食が進んでいるのが分かります。

海の潮の影響ですね。

 

 

これはパレット(床面)部分のサビです。

タイヤが乗るような接地面は特に、重さと摩擦で塗装がはがれやすいため、腐食が進んでいます。

 

 

おもて面では、ビス周りもかなり酷く腐食しています。

 

パレットの裏も確認します。

塗膜が完全にはがれてしまい、内側まで腐食していますね。

 

床が一階に降りた時に地面と擦れる部分も、塗装がはがれやすいためダメージが大きくなります。

 

こちらは、腐食によって鉄板に穴が開いていますね。

こうなってしまうと、塗装だけでは修復はできません。鍛冶屋さんに鉄板を使って補修してもらう必要があります。

サビの状況を確認したところ、かなり腐食が進んでいることがわかりました。

 

ケレン

状況を確認しましたので、塗装の準備を進めます。

 

鉄部塗装の場合、最も重要な作業がケレンです。

ケレンというのは「素地調整」を意味する言葉で、塗装の前に素地の部分を研磨することを意味しますが、特に鉄素材に関してはサビを落とすことを指す場合があります。

このサビを落としきらないと、その上に塗装したとしても塗料が剥がれやすくなり、内部の腐食を止めることもできなくなるのです。また、研磨そのものによる表面の滑らかさも仕上がりに大きく影響するので、このケレン作業はプロの技術と知識を持って、手間をかけて施工する必要があります。

特に今回はサビがかなり強いので、ケレンも慎重に行います。

 

ワイヤーカップを付けたディスクサンダーでサビを落とします。

 

パレットの裏の部分も見落としません。これは金属ヘラでサビをこそぎ落としているところ。

 

塗装を見越して、研磨によって表面を磨きます。

 

ケレンはさび落としだけではありません。例えば、これはシンナーを使って油をふき取っているところです。

立体駐車場の「ローラーチェーン」というパレットを上下動させるためのチェーンには、潤滑な動作をするために給油をします。そのため、周辺の柱部分にその油が飛び跳ねています。

油が付着していると塗料が弾かれてしまうため、塗装前に丁寧に拭き取る必要があるのです。

 

溶接補強

ケレンは終わりましたが、サビによる腐食度合いが酷くて、鉄板に穴が開いている個所もありました。

そのため、鉄板を修復するために鍛冶屋さんに依頼します。

 

鍛冶屋さんが前もって加工場で調整した鉄板を持ち込んで、溶接します。

 

この赤い鉄板が、持ち込んだものです。これを溶接することで、穴をふさぎ、補強します。

 

裏側も補強します。角の部分は、Lアングルを使用します。

 

塗装

ケレンによってサビを削り落として研磨し、鉄板による補強も完了して、いよいよベース部分の修復ができました。

ここからが、塗装になります。

いつも通り三層塗り重ねる中に、今回のケースに適した塗料を選定しました。

 

 

足場を組んで、作業開始です。

 

下塗り塗料に錆止め

下塗りは、下地の状況に適合した塗料を選択します。

今回は下塗りに、鉄部用サビ止め塗料を使用しました。サビ止め塗料には、そのサビ止め効果の違いから強溶剤と弱溶剤があります。

強溶剤強力にサビを防ぐが、刺激が強いため素材を選ぶ
弱溶剤サビ防止効果は強溶剤には劣るが、多くの素材に使用できる

塩害地域のサビは強力なので、今回はより防サビ能力の高い強溶剤塗料を使用します。

下塗りを順に進めます。近頃では、防サビ塗料も色の選択肢が増えました。

こちらは海沿いにある鉄製のタンクでさびに強い「ハイポン20デクロ」を使用した動画です。

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中塗りには防塵塗料

下塗りが乾いたら、中塗りの行程に映ります。

中塗りは塗料の厚みを確保するためにたっぷりの塗料を使いますが、ここでも立体駐車場という特性を考えて塗料を選択しました。

 

選択したのは「防塵塗料」です。

防塵塗料はチリやホコリなどの付着を防ぎ、床面からゴミが舞い上がるのを防ぐとともに、耐摩耗性、密着性に優れている塗料です。そのため、車の駐車や人の歩行路など摩擦が多い場所で使用されます。

今回は乗り入れが多いパレット(床面)に、防塵塗料を使用しました。

 

仕上げの上塗り

中塗りが乾いたら、最後の上塗りです。

 

艶が出て、きれいに仕上がりました。

 

外周もキレイに。

 

 

パレットの裏側も漏れなく補修ができています。Lアングルの補強が利いて、穴もしっかりと埋まっています。

 

油が付着していた柱も、きれいに仕上がりました。

 

サビの影響が強かった立体駐車場でしたが、補修は成功。

お客様にご確認いただいて、無事にお引渡しさせていただきました。

 

1年後の点検

今回のお客様とは、1年後の経過状況の確認もお約束していました。

そこで1年後に再度訪れ、お客様と共に塗装の経過と、サビの発生状況を確認を行います。

 

裏面の塗装は、まだ艶を残しています。

 

溶接したLアングルの部分もキレイに残っていますね。

 

周辺部分もキレイなままにしっかり残っています。

塩害の影響が強い地域なのですが、おおむね、1年経過しても塗料のコーティングによる保護は維持できていそうです。

 

ただし、立体駐車場にはその役割上、どうしても避けられない弱点がありました。

それは摩擦です。

 

今回の施工では、鉄部用サビ止め塗料や摩耗に強い防塵塗料を使っていました。

それでも、駐車をする以上タイヤ部分の摩擦や車の重さの影響は避けられず、その部分の塗装はどうしても剥がれてしまうのです。

 

その影響で一年後には、タイヤの跡を中心にサビが発生してしまっています。

海の潮の影響は、とてもつよいことがわかりますね。

 

また立体駐車場であることで、床が一階に降りた時に地面と接地する部分も擦れている個所もありました。

このような場所もまた、塗料が剥がれてしまうことでサビが発生しています。

これは場所によって強く地面に触れるパレットとそうでないものがあるようで、影響には個体差があるようです。

 

また、鉄骨の構造上、内部に空間があります。こういったすき間にも刷毛を入れて届くところまでは塗料を塗っているのですが、雨水などが届く内部の錆までは保護しきれません。

外部の塗装は残っていますが、内部のサビのサビ汁が垂れてしまっています。

塩害の強い地域の駐車場では、弱い点を中心に、定期的にメンテナンスしていただくのが良いかもしれません。

 

今回は、塩害によってサビの腐食の進んでしまった、鉄製の野外立体駐車場の補修施工をご紹介しました。

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