もくじ
塗装職人に塗装工事のご依頼を頂いた場合、外壁を塗るだけの工事でしたら着工して順調なら2~3週間で完工しますが、塗装工事に追加して大工、シール、屋根板金などが入りますと、工事は長期にわたります。
そのため、夏に契約した工事が、ようやくこの11月に完成するという現場もありました。
そんな夏の契約時に多いのが、遮熱塗料での屋根塗装です。お客様達は、みなさん暑さを実感していらっしゃいますので、自然と選択肢の一つとなります。
さらに最近では、夏・冬関係なしに屋根塗装を検討されている多くのお客様が、この遮熱塗料を選ばれているのです。
今回は、そんな遮熱塗料の効果とそれに比例した仕上がりのギャップについてお話ししたいと思います。
今、遮熱塗料が選ばれる理由とは
一昔前は、夏場にエアコンをつけすぎると体が冷えて自律神経などがおかしくなるので、クーラーを使用するのは控えめにしたほうがいい・・・などと言われていましたが、しかし現在ではエアコンをつけることを下手に我慢してしまうと、家の中にいるにも関わらず熱中症になってしまいます。
とはいえ、電力不足や電気代の高騰がある今、エアコンを好き放題使えばいいかというとそうではありません。
そのため、屋根に遮熱塗料を塗って、少しでも家が暑くなるのを回避しようとするお客様が多くなっています。
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この遮熱塗料、もともとは工場用に開発された商品のため、色や体裁よりもいかに遮熱塗料を塗ったことで建物内の温度が下がりエアコン代をマイナスにできるか・・・という性能に特化した商品です。
そのため、遮熱塗料の色はファクトリーカラーと呼ばれています。
通常屋根に塗る塗料は、黒や濃いグリーンや紺などが一般的で、多少明るめがあったとしても赤茶がせいぜいです。
しかし、ファクトリーカラーと呼ばれる遮熱塗料の場合は、白や薄いグレーなど明るい色がほとんどとなります。
では、なぜ白い色が多いのでしょうか。
遮熱塗料の効果と見栄え
塗装職人で使用している遮熱塗料は、日本ペイントのサーモアイが主流となります。
こちらのカタログを見ますと、クールホワイト、クールパールライトといった商品名の下に『全日射』『近赤外』と表示があるのがお分かりになりますでしょうか。
(出典:日本ペイント株式会社 サーモアイシリーズ カタログNo.NP-X044 )
『全日射』はまぶしさの指標で、『近赤外』というのが太陽光の反射率です。
遮熱塗料は、色が白ければ白いほど遮熱効果が高くなります。しかしその一方で、反射率が上がるためまぶしさも上がるのです。
弊社の現場ではありませんが、以前新築の家が白い遮熱塗料で屋根を仕上げたところ、向かいに建っているマンションから「まぶしい」と苦情が入り、屋根を塗り替えることになった事例も・・・・・・。
そのため、弊社では遮熱塗料を提案の一つに入れる際には、必ず遮熱塗料について反射率の説明だけではなく、まぶしさについて、そして思ったよりも屋根が白いということに驚く方が多いということなどご説明いたします。
しかし、丁寧に説明しても伝わらないことがあるのです。
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遮熱塗料を選ぶ際に受けやすい誤解
ここで、最初に申し上げておきたいことがあります。
それは、遮熱塗料について弊社から白色をゴリ押しするということはありません。
まれではありますが、このことを誤解する方がいらっしゃいます。
そもそも弊社は訪問販売ではありませんので、お客様の元に押しかけて商品を売りつけるということはしませんし、あくまでもお客様が望む工事をするために「ご希望を叶える塗料にこんなものがあります」とご提案をするだけなのです。
しかし、お客様の中には「白い遮熱塗料を使うように、うまくいいくるめられてしまった」と思われる方も。
これは営業として、本当に悲しく思います。
なぜなら、遮熱塗料で塗装する場合、カタログに載っている色はどれも標準色のため、値段が変わらないからです。
白色を選んで頂いても、暗めの色を選んで頂いても弊社の工事費は変わりません。
ですから塗装職人としては、この標準色の中からお客様が一番欲しい効果と見栄えの塗料を選んで頂けるように、サポートをするだけなのです。
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遮熱塗料を選ぶ際には面積効果にご注意を
先日もこんなことがありました。
お客様から見積もり依頼のご連絡があり、いざお伺いしようとしたところ、「家族から工事の反対にあってしまったので見積もりをやめたい」とお電話があったのです。こちらのお客様は、ご高齢で一人暮らしだったため、工事のことを別の場所に住んでいらっしゃる息子さんに相談したところ、塗装工事に反対されてしまったとのことでした。
ご連絡をうけ、「大丈夫ですよ。また何かありましたら宜しくお願いします」とその時は電話を切ったのですが、結局その後お客様が息子さんを説得し、弊社で工事を担当することになったのです。
菊池は、こうした経緯もありましたので見積もりの打ち合わせや、契約書の確認、ご近所への挨拶回りなど、全てに息子さんに立ち会いをお願いし、遮熱塗料を決める際も色のまぶしさや遮熱の効果、そして見本帳は色の見本が切手サイズしかないため、実際広い面積である屋根に塗ると、思った以上に白く見えることなどもご説明いたしました。
しかし、いざ仕上がってみたところお客様から「なぜこんなにうちの屋根は白いのかしら?」とご連絡が入ったのです。
契約が夏だったため打ち合わせ内容について思い出しにくくなっていたことと、いざ仕上がった屋根を見て、ご近所の黒い屋根の中にある我が家の白い屋根に違和感を覚えてしまったようでした。
そして最終的には「私は今の家と同じようにやってくれと言った。白っぽくとは言っていない」・・・と。
そこで、改めて契約書を持ってご説明に伺い、息子さんへも再度ご連絡をいたしました。
契約書に明記した内容と、契約当時のことをお話ししつつ、最終的にはなんとかおさめることができましたが、ご高齢のお客様の場合、こうした行き違いはあります。
そのためにも、塗装職人ではご家族に立ち会って頂くことなどで、行き違いで工事のやり直しなどにならないよう、細心の注意をはらっているのです。
そしてさらにここで問題になるのは、この面積効果についてです。
色というのは、面積が広くなればなるほど、元の色よりも明るく感じます。
そのため、見本帳ではそこまで明るく感じなかった色も、屋根全体に塗るととても明るく感じてしまうのです。
もちろん、このことについても遮熱塗料を選ばれる際にご説明をさせて頂いています。
それでも、こうしたお客様との行き違いが出てしまうのです。
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遮熱塗料の色選びは慎重に
さらに、遮熱塗料を塗る際にこのようなことがありました。
完工後、すべての検査も終わりいよいよ引き渡し・・・となった際に、最初は仕上がりに満足されていたお客様が、急に「やっぱりもっと暗い色にすればよかったかも」とおっしゃったのです。
理由をお聞きしますと、ご近所さんと話したときに「あらー綺麗になったわねぇ。でもずいぶん屋根が派手ね」と言われてしまったのだとか。
そこで端と気がつき、周りをみまわすと確かに他の家の屋根は暗い色ばかり。気に入っていたはずの涼やかなスカイブルーの屋根が、急に派手に思えてしまった・・・とのことでした。
色選びというのは、個人の感覚によって感じ方はいろいろです。
遮熱塗料を使った塗装工事は、色味による値段差がないからこそ、効果を追求するお客様が多くいらっしゃいます。
しかし、ここで慎重になって欲しいのは、効果に比例した色味バランスです。
塗装職人でも、屋根や壁の色決めというのは非常に慎重になります。
お客様と、色味の相違があるとトラブルになってしまうからです。
それゆえに、弊社ではオススメを押しつけるのでは無く、お客様のご希望に合った色選びや効果選びができるように、サポートをします。
遮熱塗料では、上記にあげたようなトラブルはありますが、それでもこの日本の異常な暑さを確実に軽減するため、白を選ぶ方というのは確実に増えています。
遮熱塗料を選ぶ半数の方が、白や白っぽい色を選んでいると言っても過言ではありません。
是非一度、遮熱塗料を塗る際には、面積効果やご近所とのことや、色バランス、そしてお客様が本当に欲している塗装の目的とは何かということを考えてみて下さい。
暑い夏を少しでも安全に乗り切るために、より良い塗装工事ができればと思います。
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