街にある壁の状態についてプロの視点で解説!ご自宅の補修工事にも活かせる考え方とは?

年内最後のブログになりました。

みなさんはどのような年末をすごされていらっしゃいますでしょうか。

 

僕はこの年末も東奔西走状態で、感染対策をしっかりと行いながら東京から横浜までさまざまな現場に伺っています。

そんな現場への移動中にふと道路わきに目を留めると、いろいろな外壁の状況を目にすることが……。

これまで僕のブログでは、「工事では金額だけではなく、中身を見て頂きたい」という旨を一貫してお伝えして参りました。

建築というのは、水と油の詰め合わせのような工事で、不具合は必ずおこります。だからこそ工程が大事なのです。

そして、管理者の裁量と重要性です。

今回は僕が通り掛けに見た外壁工事や建物などを例に、工事内容の大切さについてお話したいと思います。

 

高速道路のトンネル補修工事検査からわかる綿密な工事

まずはこちら、高速道路のトンネル内なのですが壁がボロボロになっています。

 

これは、トンネル内の補修工事をするため壁にハンマーを打ってはがれ方を調べているのです。

かなり狭い間隔でハンマーが打ってあり、はがれた壁の中からは無数の鉄筋が見えます。

車線を1本通行止めにし、夜間の深夜料金などを工事費に加算してお金も時間もかけ、丁寧に検査をする。

こうしたひと手間も二手間もかけた検査をすることによって、日本の動脈である高速道路のトンネル事故を防ぐための補修工事が可能となるのです。

 

これを見かけた時は、狭い間隔に鉄筋が何本も入っていたことにも目がいきましたが、それ以上にここまで丁寧に検査していることに驚きました。

検査箇所を見ると、壁のはがれた方がバラバラなことがお分かりになりますでしょうか?

コンクリートと鉄筋の組み合わせは、工事の仕方によって膨張の仕方にクセが出ます。

それを調べるために、ここまで丁寧に検査をしているのです。

 

コンクリートと鉄筋は、まさに水と油の建材です。

これを組み合わせて工事するからこそ、不具合はなんらかの形でおこります。

だからこそ、その不具合を念頭に置いて、細かに検査をしているということなのでしょう。

 

建材の特性を理解した、非常に内容のしっかりした工事だと思いました。

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外壁に挟まったスポンジは工事中に応急処置をした証

次にこちらの外壁です。

写真をよく見ると、コンクリートとコンクリートの隙間に黒いスポンジが入っているのが見えますでしょうか?

また、十字の中心部分には丸いスポンジも入っています。

 

通常であれば、コンクリートの隙間部分には防水を目的として目地を打ちます。

ですがこの場合、誘発目地のみを目的としているためこのような納まりとなっていました(某大手鉄道会社様です)。

 

「誘発目地」とは、鉄筋コンクリートの収縮により入ってしまうひび割れの位置を、意図した場所に誘発するもの。

詳しくはこちらの記事を参照ください。

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この黒いスポンジはバックアップ材というものです。

バックアップ材とは、コーキングが外壁の隙間が広がって切れてしまうことを防ぐために、補助として使用されるはずのもの。

この場所にむき出しになった丸いバックアップ材が使われているあることに関しては、意味不明です。

 

本来であれば十字の形をしたきれいな溝ができるべきところに、バックアップ材が入ると、見た目としては非常に残念です。

コンクリートのクセを理解せず工事をしたためこのような仕上がりになってしまったのでしょうか?

先ほどの高速道路とは逆の結果を招いてしまっている工事ですが、この内容からも建材を見極めて工事をすることがいかに大事かお分かりいただけるかと思います。

 

コールドジョイント結合部分から分かる計算された工事内容

三番目にご紹介するのは、こちらのコールドジョイントです。

コールドジョイントとは、コンクリートを1回目、2回目と流し込む際に、時間差がある部分に不連続な面が生じている状態のことをいいます。

通常コンクリートが乾かない内あれば、バイブレーションをかけることでコンクリートが重なった部分が混ざり合います。

ですが、ある程度の時間が経つと1回目に流し込んだコンクリートが固まってしまい、2回目に流し込んだコンクリート混ざらなくなってしまうのです。

 

以前、こちらのブログでご紹介した高速道路のコールドジョイントは、無計画に起こってしまった現象でした。

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ですが、今回ご紹介しているコールドジョイントは計算された意図的なものです。

なぜ計算されていたことが分かるのかというと、連なる壁全てのコールドジョイント部分がきれいに一直線でならんでいるため。

計画的に1日の工事でどこまでコンクリートを流し込むかを決め、打ち重ねた部分に補強用の防水剤を塗っているのが分かります。

 

国が手掛ける工事などの場合は、このコールドジョイントが起こらないように昼番、夜番など工事の職人を24時間配置して施工できます。

それであれば一般的な工事でも、コールドジョイントが起こらないように24時間施工すればいいのでは…と思うかもしれません。

ですが国の工事には予算に余裕があるため。一般的な現場ではそうはいかないのです。

 

もし24時間の施工をしてしまうと、夜間手当などを含んだことで工事費や人件費が跳ね上がり、予算オーバーになる可能性があるのです。

また、労基問題や近隣問題のリスクも大きくなります。

そのためコールドジョイントが起こる前提で、計算のうえ作業をしているのです。

 

この写真の壁はコンクリートにおこりうる不具合を熟知した上で、予算などの背景も計算に入れた適切な施工を行っています。

これもある意味では、建材のクセを熟知した工事内容といえます。

 

土砂崩れ 現場を放置し目をそらしてしまうことの危うさ

4番目は、かなり危ない現場です。

写真をご覧のとおり、山が土砂崩れを起こしています。何度かこの場所のそばを通っているのですが放置されたままでした。

この山の下は道路があり、その道路のフェンス下には川があるのですが、前回の土砂崩れで壊れたのか道路沿いのフェンスは外されたままです。

近くまで行ってみると、道路は通行止めされているものの簡単に入り込める状況になっていました。

万が一、子どもや高齢の方が迷い込んでしまったら…道から川へと転落してしまい、ただの事故では済まないかもしれません。

山には雨による水路(みずみち)ができやすく、工事する際に適切な対策を取らないとこのような土砂崩れをおこします。

また土砂崩れが1度発生すると二次災害、三次災害を引き起こす可能性があるため、本来は早急な補修工事が必要。

しかしこの山の所有者の方は、この現場が抱える危険を見ないようにしているのか、見ているけどお金がないから無視しているのか分かりませんが、長く放置しています。

 

この土砂崩れは例として極端ではありますが、こうした補修するべき箇所を放置している一戸建てをたまにお見掛けします。

補修工事のご依頼を頂き見積りをお出しするのですが、工事の内容よりも金額だけを重視される方も……。

そうなってしまうと、十分な補修工事の提案ができなくなってしまいます。

 

本来は工事の内容で比べなければならないところを、相見積の金額だけにとらわれてしまうと、補修工事をする目的を見失ってしまいかねません。

場合によっては補修工事の意味がなくなり、結局この土砂崩れの山と同じく、補修箇所を放置しているも同然になってしまうこともあり得るのです。

しっかりと意味のある工事をすることこそが、その時にかかるコストは高くなったとしても、長い目で見れば低コストとなります。

 

安価な建材だからこそ細かな補修が必要なコンクリートブロック

最後に、どこでも見かけるブロック塀です。ブロック塀のはしが破損し、鉄筋がむき出しになっています。

 

なぜこのようになるかというと、理由は簡単。コンクリートブロックだからです。

コンクリートブロックのはしはCの字のようになっており、はしの部分にモルタルを流し込んで成形しブロック塀を施工します。

そのモルタルを流し込んだ際に、鉄筋が入っている部分は流し込んだモルタルの層が薄くなります。

そのため鉄筋とモルタルの隙間から水が入り込んだ時に、鉄がさびて膨張し力が加わることで簡単にモルタルが割れてしまうのです。

コンクリートブロックは安く扱いやすい建材の一つではありますが、破損も起こりやすい建材です。だからこそ不具合がおこったときに、どう対処するのかが大切なのです。

お客さまの中には、こうした破損箇所に対して「今後壊れないよう完璧に直してほしい」という万能型の工事を求める方もいらっしゃいます。

ですが、いくら名医が手術をしたとしても完璧な元の体に戻すことができないのと同じで、家も補修は行えますが完璧に元の状態に戻すことはできません。

 

家を建てるというのは、本来であれば混ざらないものを混ぜて工事することです。

そうした混ざらない者同士が起こすトラブルもしっかりと把握し、理解をした上で最善の補修をすること。

これが元の状態をできるだけキープして、家を長持ちさせる近道となります。

 

このブロック塀も、安価だからこそ手をかけた工事内容で補修すれば、これからも塀として維持することができるのです。

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工事の内容をご理解いただくことが、とても大切

今回は年納めということで、プロの目線から見た外壁の状態について、五つの事例をご紹介しました。

かなり盛沢山な内容ではありますが、一貫してお伝えしたいことは「すべての結果に対して、素材の特性をしっかりと理解した内容ある工事が大切」ということです。

不具合が起きた時には、その観点から適切に対処することが重要となります。

 

最初にご紹介したトンネルの補修工事も、壁の中で鉄筋の爆裂がおこることを想定して、検査をしていました。

コールドジョイントとなってしまう現場の壁も、それを踏まえて対処がしてあります。

そうした不具合を予測すれば、不揃いにスポンジをいれた不格好な壁になったり、土砂崩れが放置されたり、破損したブロック塀を放置するようなことはおこりません。

 

ご自宅の補修でも、素材や状況まで理解した内容のある工事が大切なのです。

どうか、工事の金額だけではなく工事の内容も見て下さい。工事の内容をしっかり詰めることで、トラブルとうまく付き合うことができます。

また、ご自宅のことはお客様ご自身でも管理をすることも大切です。

「~何年だからそろそろ外壁の検査をするか」というように、ご自宅の管理について意識できるようになれば、長く安定してご自宅を維持できるはず。

 

管理は最重要テーマですね。

弊社も各担当者が「報・連・相」で密に打ち合わせをして、お客様にもわかりやすく共有させていただくことがとても大切と考えています。

これからもお客さまとのご縁を大切にしながら、さまざまな外壁工事の実例や知識を踏まえて、お客さまへご提案を致します。

みなさま、どうぞ良い年をお迎えください。

来年も塗装職人を宜しくお願い致します。

若い時から大手の大規模改修工事に携わり、官公庁の仕事も多くこなしてきました。知識は当然のこと現場も正しい仕事ができて当たり前です。常にお客様の立場に回り物事を考えて行動しています。 漏水対策も得意分野で2人の子供を抱えて毎日仕事に励んでいます。防水施工技能士。

些細なことでも構いませんのでお気軽にご連絡ください

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