今年は早いうちから猛烈な暑さに見舞われましたね。
毎年夏になると工事数も落ち着いてくるのですが、今年は例年以上のペースで見積り依頼やご相談があります。
その中で最近ちょっと気になっているのが「屋根工事」についての相談です。屋根塗装にしたらいいのか、それとも屋根の葺き替えや、上から重ね葺きするカバー工法が適しているのか、いったいどの工事がベストなのか、といった内容です。
よくよく伺ってみると多いのは、ある一般社団法人が行っている外壁塗装のセミナーに参加したら、後日その団体と提携している大手の塗装業者がやってきて、塗装ではなく屋根工事を勧められたというケースです。
そこで本当にこんなにも高額な屋根工事が必要なのかと、うちにご相談にいらしているのです。
もし雨漏りがあれば、塗装だけで直すのは難しいので、屋根工事を行うのはやむを得ないかもしれません。しかし私たちが実際に屋根に上って調べてみると、雨漏りも見受けられず、どう見ても屋根工事は不必要だ、という診断結果になることもあります。
これではわざと高額な工事を推し進めているようにも受け取れなくもありません。都内と神奈川県内で頻繁にセミナーが行われているため、このようなお問い合わせが増えているようです。
この団体では、大手関連業者と連携してセミナー参加者に屋根工事を勧めるというしくみで、利益を確保しているようです。それ自体は別に悪いことではないかもしれません。しかしそこまで必要がないのに高額な工事を勧めるのは、やっていいことではありませんね。
そもそも一般社団法人は一般の会社と異なります。そのため消費者は一般社団法人なら営利目的ではないと思い込み、信用してセミナーに参加してしまったのではないのでしょうか。
このような屋根塗装のセミナーに出かけた時は塗装の知識だけを持ちかえり、会場で家の修繕について相談しても、住所など個人情報は教えない方が無難です。ちなみにここの関連会社から、ずっと前加盟のお誘いもありましたが、丁重にお断りさせて頂きました。
ただ実際に個別のケースでは、「屋根塗装がよいか」「屋根工事がよいか」は、とても悩ましい問題です。
塗装だけで十分持つ場合でも、お客さんによっては屋根工事を希望されることもあります。何度も塗装をするよりも、屋根工事をしてしまえばそれ以降は塗装のメンテナンスが必要なくなるからです。そのように考えていらっしゃる方は、屋根工事は築年数が相当経過してから行うより、築後早い時期のほうがよいでしょう。
例えば築10年目に屋根塗装をして、さらに築20年目に屋根工事をするなら、はじめから屋根工事にすればよいのです。
しかし家によっては、そのメリットはわかっていても、予算の都合で塗装を選択することもあります。ですから塗装だけで済むような屋根に対して、屋根工事をしなければならないような説明は、消費者をとても困惑させてしまいます。
また屋根工事をするのであれば、どのような種類の工事にするか、が問題です。現在の家屋はコロニアル系のスレートが主流です。屋根工事を行うなら、同じく新たなスレートに葺き替えることもできますし、ガルバリウムの鋼板(金属)屋根に葺き替えることも可能です。
和瓦の屋根は、鋼板屋根に葺き替えれば屋根自体の重さが軽くなるので、地震による倒壊対策にもなります。ただし鋼板屋根にした場合、雨音などが前よりも響いたり、直射日光の影響を受けて室内温度が上がりやすいというデメリットがあります。
下地に断熱材を使用したり、遮熱塗装を施すと、そのようなマイナスの影響を少なくすることもできます。ただ最近はそれよりも、今ある屋根をはがさずに上から重ね葺きする「カバー工法」が流行っています。
ひと昔のアスベストが含まれているスレート屋根であれば、はがす際にアスベストをまき散らしてしまいます。しかしカバー工法ならそのリスクもありません。
防水性については、屋根の場合も平面よりも接合部などから雨漏りする可能性が高くなります。ですから、例えばトタンの釘抜けで棟がバカバカになっていたり、シーリングが劣化して切れていたりするのを見ると心配になります。
そのような劣化に対しては、カバー工法は上から被せるので、一定のクオリティを保っていつも同じ工事ができるというメリットもあります。ただ下地がすでに湿気ている場合、そのままふたをするカバー工法で工事を行うと、下地の腐食が進んでしまう危険性もないわけではありません。
このようなケースでは、下地の野地板から交換するなど、葺き替えの方が適していることもあるので、業者に調査診断をしっかり行ってもらうとよいでしょう。
何事にも損をしないために、知識や情報を得ようとするのは消費者として当たり前の行動です。ところが折角の努力にもかかわらず、高額な工事を勧められてしまうのは、何だか報われない気がしますね(^^;