もくじ
前編(合格率50%という一級塗装技能士になるまでの道のりと職人の素質 【前編】)では一級塗装技能士について詳しくお話しましたが、後編では一級塗装技能士の上位資格でもある塗装指導員の資格についてお話していきたいと思います。
一級塗装技能士の更に上の塗装指導員とは何か
一級塗装技能士の資格が取れると、塗装指導員という資格も取れるようになります。
塗装指導員とは、正しくは塗装科の職業訓練指導員のことです。
この資格は、実務経験15年以上、または一級塗装技能士のみが受験することができるのですが、実務経験15年以上でこの資格を取る人はほとんどいません。
というのも、この資格は職業訓練学校で教育として人に指導することができるようになる資格なので、特に現場仕事には関係がないとされている資格だからです。
通常15年も現場をこなしていれば、日常の現場で人に指導することはできますし、特段必要を感じない資格ともいえます。
この資格テスト自体はそんなに難しいものではないのですが1週間会社を休んで1日8時間ほどの講習を受けに行かなければなりません。
フラワー装飾、造園、大工、板金などなど多岐に渡るジャンルの一級資格者が、職業訓練指導員の講習を受けるために、講習が行われる場所へ1週間通い続けるのです。
通称「よんぱち講習」と呼ばれ、1週間の講義時間を合計すると48時間となります。
安全管理や、人への指導の仕方についてなど、様々な職業の人たちと一緒に受けるので、塗装技能に関するものはほとんどないのですが、この講習を受けることで、塗装の職人とはまた違った観点を勉強することができます。
この講習は「人に教える」ということを通して、改めて人との接し方や、安全面の考え方などを見直すことができるのです。
これは現場で長年仕事してきた職人の観点かもしれませんが、一級建築塗装技能士の資格以上に指導員免許を取得しようという志を持つ職人は、特段自分の仕事に対してプライドを持っているので、見積もり依頼をする際に塗装業者選びに悩む人はこのような免許のあるなし基準で選択するのも大いに有効だと思います。
一級塗装技能士、塗装指導員を通して現場を見る
努力して勝ち取った一級塗装技能士や、塗装指導員の資格は、私たちの場合で言えば即効性はないものの長期視点で考えると現場でも大いに活かされています。
様々な技能を学んだことで、より知識を使った塗装の提案ができるようになり、現場が見通せるようにもなりますが、それ以上に難易度の高い塗装工事などのときに耐える力がUPします。
一度、辛いものに耐えた記憶はかならずその人間を一回りも二回りも大きくしてくれるのです。
また現場を取り仕切る時にも、塗装指導員の経験は役にたちます。
また不思議なことに、こうした資格を取った職人は、その資格に恥じないようにとマナーも良くなるようです。
厳密にいえば、資格や免許を取得したからというよりかは、元々職人の素質や人間性がそうさせているというのもあるかもしれません。
職人のマナーとはお客様への挨拶や態度などもそうですが、それ以外にも「作業中に無駄なおしゃべりをしない」などがあります。
この無駄なおしゃべりは、もちろん作業効率を下げるという理由もあるのですが、塗装の現場というのは、お客様が住んでいらっしゃるお宅を塗るのがほとんどです。
ですので、家の壁際で職人同士が話している声というのは、家の中にいらっしゃるお客様にも聞こえます。
作業関連の話以外は、時には騒音となり得るので、お客様が不愉快な思いをされる場合もあるでしょう。
塗装職人でも過去にこうしてお客様にご迷惑をかけたこともありますが、現場での職人の無駄なおしゃべりは、マナーが悪いと言わざるを得なくもないのです。
また、塗装工事中は10日ほどお客様のお宅へ伺うのですが、毎日お客様にお会いし仕事中も応対をします。
私たちが作業している間に、お客様がお仕事や学校へお出かけになり、また帰宅される場合もあります。
それなので、いつお客様に見られても大丈夫なように気を配って作業をします。
特に今は新型コロナウイルスの感染に注意しないといけません。
こうしたことから、いまや外壁塗装は接客業などのサービス業であるともいえるかもしれません。
その甲斐もあってか、知人に工事を紹介してももらうなどこれまで多くのお客様にも支えられています。
ただ今でも、少なくなっては来ましたが昔かたぎの仏頂面でぶっきらぼうな職人というのはいると思います。
例え本人からすればそういうつもりがなくともそう映ってしまうのです。
作業について聞きたいことがあっても聞きにくい雰囲気ですし、素人からすれば理解不能な職人目線での話は意思疎通もできにくいため、お客様の要望をかなえることが難しい結果となる場合があります。
一級塗装技能士資格を持っている、塗装指導員の資格を持っている人間で、仏頂面のままお客様に応対する人間はあまり聞いたことがありません。
そういったことからも、一級塗装技能士や塗装指導員であるということは、マナーの良い職人であることを判断する目安にしても良いのかなと思っています。
ネットにはびこる悪徳業者に外壁塗装を依頼しないために
ここまで、一級塗装技能士と塗装指導員について細かくお話しをしました。
この資格を正しく知ることで、悪徳業者を判断することができます。
みなさん一昔前まで「塗装の訪問販売」なるものがあったのを覚えていらっしゃいますでしょうか。
ある日突然、塗装業者を名乗る人間が訪ねてきて、「家の外から、壁などを拝見したが、このままでは家が腐ってしまうので塗装をした方がいい。
今なら無料で外壁の診断をしますよ」と言ってくる。
なんとなく「そろそろ塗装しなければ…と思っていたし、家が腐ってしまうなどと言われれば不安だわ…」とオロオロしているうちに押し切られて契約をしてしまい、実際の塗装工事は手抜き工事そのもので、訴えようにも塗装会社に連絡がつかない…。
などといった、訪問販売業者です。
今や訪問販売業者は影を潜め、まるで居なくなったかのように思いますが、会社の規模に関係なく実はネットの塗装業者になっただけということもあります。
ネットには元訪問販売の業者を含め、塗装業はとくに資格がなくても誰でも開業できるので、塗装の知識無く開業する業者も沢山いるのです。
技術の持ち合わせがなく営業のみに特化した会社で、実際の塗装工事はまるっきりの丸投げで質の悪い外壁塗装工事も少なくありません。
そうした工事をした後に、結局家の塗装が剥がれてしまったり、屋根の厚み部分である破風板などが腐ってしまったりしてからうちに依頼が来る場合があります。
そういう質の悪い塗装を見るたびに、なんとかこうした業者に依頼をしないで済むように出来ないだろうか…と考えてきました。
街中には、父親から息子へと代々家業として塗装業を続けてきた良心的な業者も数多く有ります。
私たちの周りでも家業として継いだ塗装店の職人で痛い仕事をする職人はいません。
それにも関わらず、なぜネットでは、代々家業として塗装業を行ってきた業者などのホームページは少ないのでしょうか。
それは、代々家業として塗装をやっている業者のほとんどが、HP制作などに精通しておらず、ネットでの宣伝に無関心なことが多いのです。
ですので、こうした業者に依頼をしようとしても、近所の口コミを頼りに探すしか手立てが無く、一般の人にはなかなか探せません。
では、ネット上で良い塗装業者を見つけるにはどうすればいいのでしょう。
そこで、目安にするのがこの一級塗装技能士の資格なのです。
まずは、一級塗装技能士が在籍している業者を探します。
できれば、社長や代表者が一級塗装技能士だとさらに安心といえると思います。
見積りの際には「ネットに載っている一級塗装技能士の方が実際に工事をして下さるのですか?」と聞きましょう。
在籍のみで実際の工事には携わらないということもあるので慎重な姿勢を取ることも重要です。
一級塗装技能士が工事をしてくれる業者をみつけたら、見積りを取ってじっくりと検討しましょう。
当然ながら一級塗装技能士ではないけれどもマナーも良く腕もいい職人も数多くいると思います。
ただそれはそれでどのようにして探し出せれば良いのかという問題がでてきます。
このブログを読んで、一人でも多くのお客様が欺かれることなく、良い塗装をして、お客様の家が保てれば、書いた意味がでるので本当に嬉しいです。
これからも一級塗装技能士を通して塗装の向上を目指す
一級塗装技能士は、上記でもお話ししましたとおり、私たち職人にとって難しい試験です。
以前も弊社から関連会社も含めて、3名の職人が受験をしましたが、全員不合格になってしまいました。
その3人のうち一人はこの業界自体を辞めてしまい、あとの二人もその後一級塗装技能士の試験に再挑戦はしていません。
それくらい、試験を受けるためのモチベーションを維持し続けるのは大変で厳しいものなのです。
試験前の追い込み期間は真夏なので、現場作業としても一番体力的にきつい時期です。
体力を使い切った後にする勉強は、本当に辛く、仕事もあることから実技の練習もままならないことが多々あります。
前述したとおり、これらを乗り越えて、3年越しで受かった職人が弊社にもいます。
彼は実に粘り強い仕事をしますし、資格をとったことで信頼もあがりました。
現在、弊社には一級塗装技能士が十数人(そのうち塗装指導員は8人)が在籍しています。
元々自社職人とも言われる社員だった職人を独立させて、今は専属の下請けとして仕事をしているものもいます。
これからの目標もお客様により良い塗装を届けられるよう、日々精進していきたいと思うのです。
当社代表が回答しているヤフー知恵袋もご参考ください。