住まいのリフォームや外壁塗装、あるいは屋根の修繕工事を検討するとき、「どの業者に依頼すればいいんだろう」と悩む方は多いかもしれません。家は人生の中でも大きな買い物ですし、その修繕や改修にかかる費用も決して小さくはありません。
工事の内容や規模によっては何百万円単位の大金が動きますので、慎重に選ぶのは当然のことです。そこで一つの目安になるのが「建設業許可」の有無です。許可を持たない業者がすべて悪いというわけではありませんが、工事の安全性や将来的な保証を考えると、建設業許可を持つ業者に依頼するメリットは非常に大きいのではないでしょうか?ここでは、建設業許可の概要や、500万円を超える工事の注意点、無許可業者のリスクなどを、親しみやすい職人の目線で詳しくお話ししたいと思います

建設業許可とは? 大きな工事を請け負うための重要な許可
建設業許可は、簡単に言えば「一定の技術力や財務基盤を備えた業者だけが取得できる公的な証明」です。法律では、税込みで500万円以上の工事を請け負う場合、原則として業者は建設業許可を取得しなければならないと定められています。
外壁塗装やリフォーム、さらには大型の建築工事なども含め、工事規模が大きくなるほど求められる責任やリスクも増えるため、国や都道府県が「この業者は信頼して任せても大丈夫か」を確認する制度でもあります。実際に許可を取得するには、施工管理の能力や従業員の技術力(専任技術者)、そして財務状況までチェックされます。
いくら腕のいい職人がそろっていても、経営が破綻寸前では工事の途中で資金が回らなくなったり、十分な資材を用意できなくなったりしてしまう恐れがあります。そのようなリスクを減らすために、許可申請の段階で審査が行われるのです。

また、建設業許可は一度取れば終わりではなく、5年ごとに更新が必要になります。更新時には過去の施工実績や財務状況、法令順守の実態などが再度チェックされ、問題があれば更新を認めてもらえません。
加えて、毎年行う決算報告では事業の収支状況を公的機関に提出しなければならないため、営業状況が不透明だったり、資金繰りが怪しかったりする業者は指導を受けたり、最悪の場合には許可の取り消しや業務停止を命じられることもあります。このように、許可業者は常に行政の監視下にあり、許可を維持し続けるにはしっかりと健全な経営をしていかなければならないというわけです。
こうした仕組みのおかげで、建設業許可をきちんと持ち、しかも何度も更新している業者は、長年にわたって安定した運営を続けてきたと判断しやすくなります。
さらに、施工管理技士や一級塗装技能士といった有資格者をそろえていたり、過去の施工実績をきちんと公表していたりするようであれば、技術面でも安心感が増すといえると思います。また一級技能士がいないにもかかわらず名義だけを外部から借りて在籍扱いするということも建設業許可を取得するうえではごまかしが効きにくくなります。
神奈川県知事許可から国土交通大臣許可へ更新した意義
建設業許可には「都道府県知事許可」と「国土交通大臣許可」の2種類があります。都道府県知事許可は、その都道府県内だけで工事を行う場合に必要となる許可で、他の都道府県をまたいで工事を受注する場合には国土交通大臣許可が必要になります。弊社の場合もこれまで神奈川県知事許可で工事を行っていましたが、国土交通大臣許可へと更新しました。

地域を超えて幅広く工事を請け負えるだけでなく、国レベルの基準をクリアしているという証明にもつながったと思っていますが、更新の過程で国土交通省の厳しい審査を受けるわけですから、企業としての信頼性がより一層高まる点が大きなメリットです。
特に複数の都道府県でリフォームや塗装工事を行う機会が増えてきた場合は、国土交通大臣許可を取得していることが施主さんにとっても安心材料になります。工事対象エリアが広がると、それだけさまざまな法律や行政手続きに対応しなければなりませんし、管理体制の強化も求められます。そうした要求にきちんと応えられているからこそ、県知事許可から国土交通大臣許可にステップアップできます。
500万円の壁:戸建てとマンションで違う事情
外壁塗装などのリフォーム費用は、建物の規模や内容によって大きく変わります。戸建て住宅の場合は、よほど大掛かりな工事を同時に進めない限り、500万円を超えることはあまりありません。屋根の修繕と外壁の塗り替えをセットにしても、二世帯住宅のような大きな家でなければ400万円台以下に収まることが多いです。通常の戸建ての場合は100万円台がほとんどなので、今回お話ししている建設業許可などは無関係です。

一方で、マンションや集合住宅の大規模修繕は費用が高額になりがちです。高さもちろんですが、エントランスの改修や共用廊下の防水、外壁タイルの補修、給排水設備の更新など、建物全体にかかわる工事をまとめて行う場合があり、こうなると工事費が500万円を優に超えてしまいます。そのため、マンションの大規模物件では、建設業許可を持っている業者を探すのがほぼ必須といってよいかもしれません。

とはいえ、戸建てだからといって安心というわけでもありません。たとえ500万円に満たない工事であっても、大切な住まいを任せるのであれば業者の信頼度は気になるところです。事実として、建設業許可を取得している業者よりもしていない業者のほうが、不良施工やトラブルが多く報告されているのも現状だと思います。

500万円を分割してごまかす手口とそのリスク
建設業許可が必要になるラインは税込みで500万円以上ですが、中にはそれを回避するために「分割契約」を提案してくる業者もいます。たとえば本来600万円かかる工事を、屋根工事300万円と外壁工事300万円に分けて契約書を2枚作成するような手法です。この方法であれば書類上は500万円未満の工事が2件という扱いになり、無許可でも違法ではないように見せかけることができます。しかし、こうした分割契約にはいくつかの大きなリスクが潜んでいます。

まず、法律的に問題がある場合があります。書類上だけ工事を分割しても、実際の施工内容は600万円規模の一体となった工事ですから、「そもそも手法自体が違法性を帯びるのではないか」という指摘が出ることもあります。もう一つは、工事の管理が不十分になる可能性です。屋根と外壁を同時並行で修繕するはずが、契約上は別の工事として扱われるために、施工段階で責任の所在があいまいになる可能性もあります。

どちらの契約にも含まれていない追加工事が必要になった場合、施工範囲が不明になる結果、最終的に高額な追加請求につながることもあります。
先日もある地域で建設業許可を持たずに500万円を超える工事をしていた業者が逮捕されるという事件も起きています。訪問販売が主流のようでしたが、年代的にもネット検索がそれほど得意ではない高齢者が中心といわれていますが、分割契約の提案を受けたら、その理由をしっかりと聞いて納得できないようであれば、契約は見送った方が安心です。


保険と保証の面で差が出る理由
建設業許可を持っている業者に依頼するもう一つの大きなメリットは、万が一のトラブルに対する保険や保証の範囲が充実していることです。
たとえば国土交通省の指定を受けている住宅保証機構が提供する「大規模修繕工事瑕疵担保責任保険」という保証制度があります。集合住宅などで大規模修繕を行う場合に適用される保険制度ですが、無許可業者では加入資格がありません。
足場を組んで高所作業が必要な工事は何かとリスクが伴いますし、このような部分からも建設業許可の有無についても施主の負担は大きく変わって来るかと思います。
許可業者は行政の監視下で営業しているという強みもありますし、リフォームや外壁塗装は、施工が終わったらそれで完了ではなく、その後のメンテナンスや補修対応まで考慮するのが理想です。もしトラブルが起きた際に、業者が経営不振で連絡が取れなくなってしまったり、保証制度そのものが存在しなかったりしたら困ってしまいます。そうした意味でも、許可を持つ業者に依頼することには、見えない部分での安心感があるかとと思います。
無許可業者に多いトラブルと実際の現場の声
建設業許可を持たない業者がすべて悪いわけではありません。優れた技術を持つ職人が個人経営をしていることもあり、工事費を抑えるために無許可業者に頼むという方もいるかもしれません。ただし、無許可業者によるトラブル事例は少なくありません。工事の途中で連絡が取れなくなったり、見えない部分の下地処理を適当に済ませてしまったりと、住まいにダメージを与えるようなケースが散見されます。
特に外壁塗装は、家の外から劣化がわかりやすいため、訪問販売をして回る業者に狙われやすいジャンルでもあります。素人目に見てひび割れがあると不安になりがちで、「このまま放置すると大変ですよ」と急かされて、十分な比較検討をしないまま契約を結んでしまう詐欺似た悪質な営業もあります。

しかし、いくら外壁の傷みを指摘されても、すぐその場で契約するのは危険です。きちんとした業者であれば、工事の必要性を説明すると同時に、時間をかけて見積もりを出してくれますし、気になる点を丁寧に教えてくれるはずです。少しでも不審に思う点があれば、ほかの業者にも声をかけて相見積もりを取ってみることをおすすめします。
私たちも長年現場で仕事をしてきましたが、無理やり契約を急がせたり、分割契約に誘導してくるケースはあまり良い結果にならないことが多いと感じています。
民間資格より実務経験を要件とする公的資格
建設業許可がなくても工事は可能ですが、「できる」ということと「安心して任せられる」ということは別物です。住まいは一度工事をすると簡単にやり直しがききませんし、金銭的な負担も大きくなりがちです。だからこそ、最初に業者を選ぶ段階で、許可の有無、過去の実績などをしっかり確認する姿勢も大切です。
もし資格等で判断する場合は、座学で与えられる民間資格ではなく確実な実務経験が要求される公的な資格かどうかで判断してもいいでしょう。
資格がなかったとしても最低限その会社の拠点に足を運ぶなどして、豪勢な会社案内カタログや担当者の人間性などに信頼を寄せるのではなく、その会社の実像を見ることが重要なのかと思います。

建設業許可は国や都道府県の厳しい基準をクリアし続けています。更新制度や決算報告、行政の監視下で誠実に経営をしている業者かどうかは、長期的に付き合っていくうえで大きな目安になります。自宅の外壁や屋根といった目に見えやすい部分の工事であっても、内部の下地や仕上げの工程は施主にはわからないものが多く、信頼関係が大きな役割を持ちます。
大規模に比べれば外壁塗装のような比較的安価な場合でも、許可を取得している業者を選ぶのは一つの安心材料になりますし、大掛かりなリフォームやマンションの大規模修繕ではほぼ必須といってよいでしょう。分割契約の提案を受けたら、その理由をしっかり尋ねて「本当に工事を分ける意味があるのか」を考えることも重要です。もし納得がいかなければ、他の業者に相談してみるのも一手です。
リフォームや外壁塗装は決して安い買い物ではありません。施工後の生活の質にも直結しますし、大きな投資となるわけですから、焦らずにじっくりと判断しましょう。