「変な0系新幹線、元の色に…」のニュースで塗装屋が思うコト

「変な0系新幹線、元の色に…」というニュース記事に塗装屋として思うコトがありましたので一筆したためました。

大阪府摂津市の展示用で置いていた新幹線公園の塗り替えで、色が変だから1600万円かけて直した」という内容です。

「そりゃー全車両塗ったら高いよナ。でも、何両塗ったんだろう?」と思い、新幹線公園を検索すると・・・

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なんと、1両だけの塗装でした。

「これだけで1600万円???」

ぱっと見、平均的な木造住宅の1.5倍程度の平米数に見えました。

そこで、特殊な修繕を行なっているのかと思い、仕様を確認すべく摂津市のサイトにアクセスし、入札情報を探すも何故か見つからない!?(摂津市のサイト内検索を駆使してみましたがダメでした。)

そっと分からなかった事にしたいところですが、別の資料を見つけてしまいました。

「まちづくりの目標3(みどりうるおう環境を大切にするまち)」のPDF「政策2-施策2」に新幹線公園の利用者数が公示されています。平成24年の実績で1年間で約8千人の利用。一日平均22人・・・さらに現場までのアクセス方法を調べてみますと、駅から徒歩20分か最寄りのバス停から徒歩10分、駐車場なしという、利用者数も納得の条件でした。

そこの公園の「オンボロ電車」、もとい「歴史的車両」に1600万円です。

しかし、いったいどこからお金が出たのでしょうか?もしかしたら「クラウドファンディング」でサクセスしたのでしょうか?まさか市の財政からでしたら、摂津市の市民オンブズマンが怒りだすこと間違いありません。

しかしまー、そこは0系新幹線の歴史的価値と美観の観点、一部の鉄道マニアの熱い支持がある訳ですから、と言いたいところですが・・・たった1両の塗替えにどうして1600万円もかかったのでしょうか?

恐らく・・・これは推測ですが、劣化した状態があまりにもひどかったのだと思います。仕上がりの状態がこちらのサイトに載っていました。

非常に光沢のある外装が復活しています。劣化した凸凹の塗装があまりにもひどく、パテ埋めに相当苦労したのでしょう。しかも新幹線の塗装方法を調べてみますと、0系新幹線は製作当初から溶接の捻じれをパテ埋めし外装を仕上げていたようです。また、検査毎に塗装を行ない毎回0.25mm程度の塗膜で何重にも塗り重ねられています。

そんな状態で20年くらい使用した新幹線が引退すれば、表面はもう「塗膜とパテの塊」だった事が容易に想像できました。何重にも重なり劣化した塗膜とパテを除去し、更に新設当初の溶接捻じれをパテ埋めし、光沢のある塗装で仕上げているのですから頭が下がります。ひっそりとライトのアクリル(ガラス)もキレイになっていました。しかし、よくよく見てみますと、車体のスカート部分はゆず肌でローラー仕上げな事が分かります。

車体の下は無塗装ですし、何度も言いますがこれで1600万円です。一応、雨除けの折板屋根が付いているようですが、ほぼ屋外展示で金属系の塗装なため、5年から8年程度で再塗装が必要になって来るでしょう。1600万円のコストを年で割りますと、5年後再塗装で年間320万円、8年後再塗装で年200万円の修繕費が必要なります。

さらにこの年間修繕費を公園の年間利用者数で計算してみますと、5年後再塗装は来場者1人あたり400円。8年後の再塗装ですと一人250円、自治体が支払っている計算になります。

摂津市の住民の皆さん、心中お察しいたします。

でも、役所のご担当者さんも大変だったと思いますよ。しかし、1600万円ですから平米で計算した場合、単価はいくらになるのでしょうか?住宅塗装では聞いた事のない金額になるのは間違いありません。

むむむ?閃いたぞ!明日からは弊社も、日本全国にある「鉄道車両の展示物修繕」のご提案へ行脚したいと考えております。

自治体の皆様、宜しくお願い致します!

一級塗装技能士のほか「ひび割れの専門家」としての樹脂接着剤施工技能士の2つの国家資格と、塗装科・職業訓練指導員の所有者でもあります。 塗装業者さんはたくさんあれど、本質的な工事品質の差は「社長が職人の業者は現場に魂が宿る」という言葉に表されるのではないかと自分を戒め修行中です。

些細なことでも構いませんのでお気軽にご連絡ください

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