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塗装をするなら知っておきたい 施工方法がかかえるマイナス面とは

塗装会社で、塗料のいいところや利点をアピールする会社は多くありますが、塗料を塗ることで起こる副作用についてアピールする会社はごくまれです。塗装職人では、塗料をお客様にご提案する際に必ず副作用についてもお話し致します。塗装工事をする際に、塗料の良い特性や、工事内容の利点にだけ目を向けるのは本当に危険だからです。

今回はアパートやマンションなどにある、外階段の塗装を例にさまざまな塗装工事のマイナス面と効果の関係をお話ししたいと思います。

目次

アパートやマンションの外階段塗装工事例3つ

アパートやマンションの外階段は、雨や熱気、寒さにさらされる場所のため、経年とともに劣化が見られる場所です。そんな外階段の塗装について、今回は3種類ほど塗装方法をご紹介します。

 

・一つ目 リムスプレー


リムスプレーは数年前まで、多くのマンション階段工事の際に使用していました。超速乾型硬質ウレタンのスプレーですので、下塗り後であれば朝からリムスプレーを階段にふきつければ夕方には乾き、階段を封鎖する時間が少なくて済みます。階段を封鎖する時間が短く、住人の方にもオーナーにも利点がある工法でした。ただこのリムスプレーの塗装、現在はあまり行われていません。なぜなら、リムスプレーで吹き付けた塗膜は切れやすいことが分かったのです。階段にはステップなどが付いている『踏面(踏板)』、階段の次の段につながる階段の立ち上がり部分を『蹴上(踏み込み板)』と言い、ステップの脇にある壁面を『ささら』と言います。

この階段の立ち上がり部分である蹴上は靴の先などで蹴ることが多く、その際にリムスプレーの塗膜を靴先で切りつけてしまうのです。塗膜が剥がれてしまいますと、防水などの効果はなくなりますので、さらに工事が必要となります。これでは、イタチごっこのようにいつまでも塗装工事をしなければならなくなり、塗装方法として持ちがあまり良くないため現在は工事する業者が減ったのです。

 

・二つ目 鉄部とモルタルの階段塗装


次に多いのが、モルタルやコンクリートとささら部分が鉄部になっている階段の塗装です。(写真は階段ではありませんが、壁が鉄部、床がモルタルになっています。)

階段では踏面部分は鉄部でささらがコンクリートやモルタルになっている逆バージョンもあります。この場合、鉄部にきちんと防水塗装を施せば問題なさそうに思いますが、階段というのは必ず踏面に雨水が表面張力などの効果によりたまりますので、長時間水が付着した鉄は錆びます。

この写真をみて分かるように、最初のうちは防水効果があったのとしても、防水塗膜が劣化した時点で水を吸い込むようになり、端末部分からサビが出てきます。サビは爆裂(錆びた鉄が膨らんで破裂すること)のような状態でモルタルやコンクリートの間に隙間ができてしまうため、早々の応急処置が必要になるのです。サビを出さないためにサビ止めを塗るといった対処法もありますが、これも100%サビを防ぐというものではありません。サビはがん細胞と同じで、いくら表面に出ているサビを塞いでも内側にあるサビが増殖すればサビは広がる一方です。この場合、サビの進行がひどいと階段を取り壊して再度建築する必要が出る場合も。

鉄階段というのは、最初は安く建てることができますが、サビに対するこまめなケアが必要なため、管理する上ではかなりお金がかかるものなのです。

 

・三つ目 タキステップ施工

最後に紹介するのは「タキステップ」と呼ばれる長尺シートです。これは、階段の上にかぶせる床材で、ボンドとよばれる糊で階段そのものに貼り付けます。材質も強いためちょっと靴で蹴ったくらいでは切れませんし、滑りにくい素材のものが多く、外階段用の床材としてはいろいろ利点も多くあります。

先ほどお話しした鉄階段にもかぶせることができるため、階段を補強するために使われることも。また耐用年数以上の持ちをするため、保障年数以内に再度工事をする際に「タキステップはまだ持つから剥がすことはやめよう」となることも。一見しますと、良いところしか無いように感じるタキステップですが、鉄部と結合する部分についてはやはりサビが出ます。


鉄部との結合する部分には、シーリングを打って接着させるのですが、この写真を見てもわかるようにシーリングの際の上からサビが広がり、シーリングの裏にサビが回り込み、最終的には内部で爆裂を起こすことも。こうなってしまいますと、タキステップをそのままにしておく訳にはいきません。タキステップの下までサビがまわってしまう場合もありますため、タキステップをむりやり剥がして、再度工事をするしかないのです。
今回紹介した工事の中で、一番費用がかかる工事がこのタキステップですので、再工事になってしまうと剥がす為にさらに労力がかかるため費用がかさみます。タキステップは通常保障を5年、そして使用期間を10年ほどです。

しかし、鉄階段を覆うためにタキステップを使用しますと、保障期間は2年となり減ってしまいます。ここで例に出しているのは鉄部にタキステップといった長尺シートを貼り込んだ場合ですが、下の階段がコンクリートやモルタルであれば全く問題がない…というわけではありません。

コンクリートやモルタルの内側には、ほとんどの場合鉄骨があります。これらが水の浸入により爆裂をおこしたら、やはりタキステップを剥がさなければならいのです。タキステップであっても、防水塗装であっても、リムスプレーでも悪い条件が重なれば塗装は剥がれ効果はなくなります。もしくは、内部が朽ちて最悪階段の崩落へとつながっていくのです。

 

長尺シートの施工動画です

どんな工事にもマイナス面があるという事実

ここまで、マンションやアパートの外階段の塗装についてご紹介しました。
どの塗装や補修方法にも必ずマイナス面があります。上記の写真のように塗料と壁の密着不良がおこれば塗料は無残に剥がれ落ちてしまうのです。

「この塗装工事を選んだから完璧!」というものはありません。だからこそ、きちんとマイナス面を知った上で、どの工事を選ぶのか決めましょう。短時間の塗装であるリムスプレーを選ぶのであれば、かなりこまめな再工事が必要ですし、鉄部とモルタルの塗装であれば、最悪の場合は階段の建て直し工事が必要です。そしてタキステップの場合は、サビが確認された場合にはまだ使用期間がのこっていようとも剥がして長尺シートを敷き直さなければなりません。このように、どの施工にも覚悟しなければならないマイナス部分があるのです。
お見積もりをご依頼頂くお客様の中には、このマイナス面について何も見ようとしないお客様もいらっしゃいます。「100万以上もかけるのに、そんなにマイナス面がある工事は困る」とおっしゃり、そうしたマイナス面を見ようとしないばかりか、マイナス面を伝えない業者の方を良い業者だと思われる方も。その業者は言わないだけで、マイナス面を保障したわけではないというのに…。

またお客様の中には、インターネットで間違った知識を学ばれて「錆びたところはタキステップでふさげる」と勘違いされている方も。これについて、「サビを覆うためにタキステップの工事はできますか?」と聞かれれば、僕の答えは「できます」としか言えないのです。なぜなら、やってはいけないという注意書きはどこにも無くできるにはできるからです。しかし「サビを覆うために松尾さんならタキステップで塞ぎますか?」と聞かれたら、絶対にNOと答えます。なぜなら、錆びた鉄部の上をタキステップで覆ってもサビを止めることにはならず、爆裂が起こった際には先ほどもお話したようにタキステップをまた剥がして再工事しなければならないからです。そうしませんと、最悪階段が内側から朽ちて崩落事故になってしまう場合もあるでしょう。塗装工事は、お客様に選んで頂く以外には工事の内容を決める方法はありません。

業者である私たちは、工事の提案しかできず、自動車の点検のように法律でこの基準をクリアしなければ点検をクリアできない…といった基準もないため、例えよくない結果を招く工事だとしても、お客様から要請されれば工事をするしかできないのです。私たち塗装職人ができるのは、あくまでもお客様の家を持たせるためのご提案でしかありません。最終的に選ばれるのは、お客様なのです。

しかし、残念ながらこうした塗装工事内容をご提案しても、金額で他社と比べて「工事の内容は塗装職人さんにお願いしたいのだけれど、金額を別の業者さんと同じくらいに下げてもらえない?」とおっしゃる方がいらっしゃいます。工事の内容が違いますのに、料金を同じにすることはできません……。カウンターのお寿司屋さんと、回転寿司では値段が違いますよね。それと同じです。ネタも仕込みもまったく別ですのに、回転寿司と同じ値段にしてほしいと言われたら、寿司職人が握るカウンターのお寿司屋さんはそのほとんどが潰れてしまうでしょう。同じ寿司ですが、比べている寿司自体が違います。塗装工事もこれと同じです。内容や手のかけ方、アフターフォローの違いから、同じ値段で比べることはできません。

 

マンション外階段の塗装施工動画です

創業30年の塗装職人だからできるお客様の技術とご提案

今回は、階段の塗装を例にお話しいたしましたが、同じ階段塗装でも方法が違うだけで、これだけ良い面と悪い面があります。建築してから10年以上の家は、新築には戻りません。かならずどこかが傷んでいて、それを補うために強い効果のある材料を使えば使うほど、その反動で副作用が起こります。副作用も踏まえた上で、お客様に最適な工事を選んで下さい。

私たち塗装職人は、ありがたいことに創業して30年が経ちます。30年の経験がありますからこそ、さまざまな提案ができますし、もしも何か予想外な副作用が起こったとしても、歴史の浅い業者とは違いますので、しっかりと受け止め対応策を講じられます。塗装において、良い面だけでなく悪い面も見つめ我々にご相談下さい。

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