なぜ塗装会社によって工事費用は違うのか 事例をあげて大解説

塗装工事の費用の差は、ほとんどの場合作業内容や技量の差です。
分かりやすい例で言うと、壁に何回塗料を塗るかによってだけでも費用は変わり、あたりまえですが1回塗りや2回塗りと3回塗りでは塗装の持ちに差が出ます。(塗装職人は三回塗りが基本です。)

また他にも、水性塗料を希釈する際の水の量によって、工事費用に差がでることも。
こうお話ししますと、料金の差を塗料のグレードによる差だと勘違いする方もいらっしゃいますが、実は塗料のグレードの差は特別な塗料、高耐久塗料を除けばあまり変わりません。
それよりも、注意しなければならないのは、塗料の希釈率です。
薄めに希釈した塗料は水分が多いため塗りやすくなり、工事が早く進みます。それによって工事日数を短縮することができ、費用を圧縮することができるのです。

しかし、薄めた塗料では塗膜が薄くなり、いくら塗料本来の効果が10年保障を謳っていても塗膜の効果はほぼ無いに等しくなります。(保証は一定基準を満たしたものに限られる)

さらにひどい場合は、他の現場で残った塗料缶に水をはって保管し、その塗料を違う現場で使い回すことも…。
新しい塗料缶を使用するよりも費用は下がりますが、水をはったところに塗料を溶くための水を追加するため、塗料は正しい希釈率で使用することができず、シャバシャバの状態になります。
こうした塗料の希釈率の違いや、1回塗り、3回塗りなど工程の差は目に見えては分かりません。

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もちろん施工した壁を切断して、塗料の断面を比べることができれば、塗った後でも差を見ることはできますが、通常の工事ではそのようなことは不可能です。(特別な検査は除く)
そこで今回は、工事中でも分かりやすい技術や工程などの差を見るべきポイントをご紹介します。

塗装用のローラー

まずは、塗装の際に分かりやすいのがローラーの種類でしょう。
ほとんどのお客様は、先ほどもお話ししましたように塗料のグレードなどに目が行きがちですが、塗料のグレードよりも大事なのは塗り方です。
適切な希釈率で溶かした塗料で厚みをつけて塗ることは、塗装工事において非常に重要となります。

塗装する際に使用するローラーは、一見するとどれも同じように見えますが、毛の長さや、素材、形状などさまざまなものがあり、用途によって種類が違いますし、ローラーを使い分けるということは一手間増えるということになるため、工事の時間もその分かかることに。
しかし、この使い分けが塗料の効果を最大限に発揮させるのです。
さらに正しい希釈律で溶いた塗料は重みがあるため、ローラーを綺麗に壁面に転がすだけで一苦労です。特殊なローラーであればあるほど、技術も力も必要となります。

これは、弊社で行っている塗装体験に参加したお客様であれば、みなさん実感されていることでしょう。
また、どの壁にどのローラーを使うか…ということなども、職人や営業の知識が必要となるため、どの業者でも同じように出来るかというと違います。
そのため、外壁の塗装…と一口に言っても、どれだけ気を配り壁面に合った塗装をするかによって工事期間や費用が変わってくるのです。

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シーリングの打ち方とヘラ

次に分かりやすいものとして、シーリングがあります。
サイディングタイプの外壁の場合、必ずシーリング工事が必要です。
このシーリングの、打ち方によって費用の差がでます。
シーリング工事を安く上げようとした場合、増し打ちを提案されることがありますが、これは費用が安いもののシーリングを打ち直すことと比較すると効果は期待できません。
なぜなら、古いシーリングの上に重ねてもペラペラの層を作り、見た目を綺麗にするだけだからです。
シーリングを打つ際には、しっかりと前のシールを剥がし溝を掃除してから打つ必要があります。


シーリングの工事後の理想は、壁からシールがはみ出ることがなく、均一にしかも肉厚なシーリング剤がみっちりと注入されていること…。
厚さを確保するために、溝にシールを打ちヘラできっちりとおさめていきます。シールからひげ1本でも出ていると、そこからシール剤が引っ張られシーリングに隙間を作る原因となるため、少しの乱れも許されません。

またシーリングを打つ場所によっても使い方が違うため、ヘラも1種類ではなく数十種類ほど必要となるのです。
カナベラという金属性のヘラや、スポンジをつけた物(このスポンジにもいろいろな種類があります)などなど、これらを駆使して、シーリングの表面をなめらかに整えます。


シーリングを打つ際には、『返し』と呼ばれる箇所があるのですが、ここの返しが盛り上がらないようにするのもヘラによる技術です。

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このシール打ちには、工事方法においてもピンからキリまであります。
シール職人ではない塗装の職人などが、ホームセンターなどで購入したシール剤を打ち込む工事は安くあがりますが、シールを打つためのヘラなど特殊な道具がなく、表面の整えかたも甘いためあまり持ちません。
逆に、シール職人がきちんと元のシールを除去し、シールを打ち込み、ヘラでデコボコがないように整えたシーリングは、持ちが違うのです。
ここに金額の差がでます。

ここまで、塗装工事の費用の差が見分けやすい箇所について、塗装のローラーの種類、そしてシーリングの理想的な工事とヘラの種類についてご紹介いたしました。
これら二つは、道具を見ればいかに塗装やシーリング工事をする際に、ひとつひとつ丁寧に工事をしているかということが分かります。
薄めた塗料でばーっと雑に塗装した工事と、ヘラやローラーを使い分けながら細部まで気を遣って丁寧に塗装した工事…文章で見比べるだけでも、その差は明らかです。
最後にそういった丁寧な仕事をするために最も大事な土台ともいえる足場についてお話し致します。

足場の差は一目瞭然

もっとも工事の費用差が分かりやすいものとして紹介するのが、足場です。
この足場は、金額の差が一目瞭然にでます。


足場は塗装工事の基礎で、ここがしっかりしていないと良い工事はできません。
まず一番費用の差として分かりやすいのは、単管足場とくさび足場でしょう。

単管はその名の通り、職人が歩く足場がパイプ1本となります。
足場自体は非常に安く組めますが、塗装するための足もとが不安定になるため、それなりの工事しかできません。

くさび足場の場合は、幅木などで足もとを確保することもできるので、職人が工事をしやすくなります。

しかし、このくさび足場にもさまざまなオプションによって費用の差が出るのです。
例えば、足場の上り下りのための階段、中桟や手すりが1本増える事に安全性はあがり、加えて落下防止の網をつければ安全性はより確かなものに…。
ですが、これらはすべてオプションです。

費用を抑えて階段などを取り付けない場合、足場の1階と2階の間に簡単な簡易的な梯子のようなものをつけて職人が上り下りしますが、階段とは違い両手に塗料の缶などを提げたまま移動ができないため、まずは材料を上の階にあげ、その後自分もあがるなど、手間が増えます。
時間としては微々たる物ですが、職人が作業できる時間は日中と限られているため、この小さな手間が積もることで工事日数が増える場合も。

手すりや中桟が無いと、それだけ足場は安定しませんので職人も動きが悪くなります。逆に手すりや中桟があれば足場が安定するため、その分職人の動きはスムーズになり、安全も確保できるので作業が早くなります。
また足場を建てる際に、壁あてをつけるのか、もしくは壁にアンカーを打つのかによっても費用差は出ます。

壁あては、その名のとおり、足場の安定を図るために壁に支えをつけることです。
壁が傷つかないように保護材を使います。


これも壁あてをつけない足場よりは、足場が安定し職人たちの作業がしやすい状態に。
さらに壁あて以上にしっかりと足場を固定させたい場合は、壁にアンカーの打ち込みをします。
壁に穴を開けて、足場が家からずれることが無いように打ち込むのですが、アンカーを外した後には補修工事が必要なため、壁あてよりも費用がかかるのです。

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そして、足場の費用の差は工事途中の作業でも出ます…。
足場には養生用としてシートがかけられているのですが、風や雨が強い場合にはそれらのシートを巻き上げることが一般的です。
しかし、このシートをひとつひとつ巻き上げるためには、それだけ人件費がかかることに。そこで、人件費を安く済ませようとした場合は、このシートの巻き上げをしないことで費用を削ります。
しかし、これは非常に危険な賭けなのです。
もしも、工事期間中に強風や台風などがあったら…足場が崩壊してしまうことも。
先日も偶然通りがかった他社の工事現場で、強風の日に足場シートを巻き上げていないところがありました。

この写真のような高台にある家で、巻き上げを行わなかったら…強風が吹いた際には非常に危険です。
たかがシートの巻き上げや足場のことと、軽んじて費用を削ってしまう方も多くいらっしゃいます。
でもそれは、費用の安さと引き換えに安全性を放棄していることとなり、非常に危険なことなのです。

番外編 電線の防護カバー

費用差が分かりやすい箇所の番外編です。ご紹介するのは、電線につける防護カバーについて。
この防護カバーはそこまで頻繁には使いませんが、家に電線が近い場合取り付けることがあります。

防護カバーを取り付けるためには、電力会社にカバーの取り付け依頼をしなければなりません。ゆえに、塗装工事費とは別に取り付け費用がかかります。
あくまでも防護カバーをつける、つけないということはお客様の判断になりますので、防護カバーをつけずに費用を抑えて工事をすることも可能です。(お話しはします)

しかし、足場は電線近くまで組み上げるため、万が一電線に触れると感電などによって大事故になります。その場合には、防護カバーをつけるよりも多大な費用やトラブルが起こることになるのです。


費用差がわかりやすい箇所ではありますが、つけない場合のリスクが非常に高い工事といえます。

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塗装工事の費用は安さとリスクは比例する

今回のブログでは2回に亘って工事の費用差が明確になる箇所についてご紹介しました。ローラーの違いや、シーリングで使う道具による技術の違い、足場の違いなど…いかがでしたでしょうか。

先日も塗装職人の横浜店へ見積もりのご依頼があったのですが、その方は費用だけを見て工事をするかどうするかの判断をされていたようです。
同じく神奈川県内にある塗装会社と相見積もりを取っていらっしゃるとおっしゃっていましたが、説明をさせて頂いたものの工事内容については一切比べていらっしゃらなかったので、非常に残念に思いました。
足場一つ比べても、費用を安くするということはそれだけ安全性の低い、作業がしにくい足場を建てることとイコールで、安さとともにリスクまで負っていることになるのです。

安い工事には必ず理由があります。必ず何か大事な手順や安全性を省き、費用の調整をしているのです。
塗装工事にはより良い仕上げにするための技術がいたるところにあり、それらをタダ同然ですることはできません。

なぜなら、職人たちはその技術でお金をもらっているからです。
その技術の断片は、ローラーやシーリング用ヘラの種類であったり、足場だったり…そうしたところから見えてきます。
少しでも工事中に起こるリスクを減らし、家の寿命を延ばす塗装工事をするために…目先の安さだけにとらわれず、ご自分の家にとって何が一番必要なのか判断して下さい。
施工方法と費用をしっかりと見比べて工事内容を決めれば、きっと納得する工事ができるでしょう。

 

 

 

若い時から大手の大規模改修工事に携わり、官公庁の仕事も多くこなしてきました。知識は当然のこと現場も正しい仕事ができて当たり前です。常にお客様の立場に回り物事を考えて行動しています。 漏水対策も得意分野で2人の子供を抱えて毎日仕事に励んでいます。防水施工技能士。

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