最初に、7月3日に発生した集中豪雨により、被害を受けられました皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
連日の雨で、不安に思われていらっしゃる方も多いことでしょう。
僕の家の周りでも雨による川の増水などがあり、川が氾濫しないかと心配しました。
最近はこの大雨で雨漏りのご相談も多くなっており、連日お客様宅へ見積もりにうかがっています。
雨漏りがありますと、みなさん欠陥工事を疑う方が多いのですが、実は欠陥工事よりも家の持っている特性によって起こっている雨漏りもあるのです。
見る角度や場所によって、『補修箇所=問題点』の捉え方というのは大きく変わります。
今回のブログは、家が持つ『問題点の捉え方』についてのご紹介です。
川の増水から見る危険度の捉え方
先日、近所に流れる川のそばを通ったところ、写真のようにかなり水位があがり警報も出ていたので非常に心配になりました。
ふと川沿いの橋の上を見ますと、近所にお住まいと思われるお年寄りも増水した川を見に来られていて「ちょっと危ないな…」と心配に。
ハザードマップで、このように警報が出たのは久々でしたので、緊張しました。
さらに100mほど上流に行きますと、まだ川の水位には5mほど余裕があり、いつもの雨の日とそこまで変わらないようにも感じます。
下流の川の一部分を見れば、もはや洪水が起きる寸前と思えますが、上流ではそうは見えません。
見る部分によって、状況の捉え方は大きく変わります。
下流で見た人は、川が溢れることに備えるでしょうし、上流の人はまったく気にしないでしょう。
同じような大雨なのに、見る箇所によって感じられる危険度は全く違うのです。
また、会社近くの坂道でも、道路が冠水していました。
とはいえ、先日のブログで紹介しました雨が降ると冠水してしまう道路よりは、あまり雨が溜まっていないイメージです。
雨が降ると冠水してしまう道路の話はこちらに
この道路の冠水だけに目を向ければ、十分非常事態ですが、少量の雨で冠水してしまう道路と比べて考えますと、この冠水はまだまだ大丈夫なように感じます。
雨漏りも同じです。
調べる箇所によっては、感じられる危険度は変わります。
本当に雨漏りの修繕をするのであれば、雨漏りの原因となる箇所は一つではないのです。
雨漏りの原因となる出発点があり、中間点があり、さらに出口がある。川の上流だけを調べるのでなく下流も調べて事態を把握した上で、手を打つ必要があるのです。
雨漏りのお悩みから解放されたい
シーリングの断裂を欠陥工事と捉えていいのか
もう一つ事例をご紹介します。この断裂したシーリングを見て、みなさんはなぜこの状態になったと思われますか?
多くのお客様は、10年持つと言われたシーリングが、数年でこのように真っ二つになると、『欠陥工事』という言葉を思い浮かべるようです。
しかし、このようにシーリングが断裂した状態の場合、家が元から持っている特性が原因の場合があります。
その特性の一つとしてあげられるのが、環境です。
家が建っている地盤の状態が、家の前に走る道路の振動を家屋に伝えやすく、さらにはトラックなど大型の車が通ることが頻繁などの状況が重なったことで、外壁に取り付けられたサイディングボードが揺れ、シーリングを引き裂いてしまうことがあります。
他にも増築工事などをしていますと、壁に伝わる力の逃げ方が変わり、サイディングボードとサイディングボードが綱引きをする状態となりちぎれてしまうことも。
今回のこのシーリングも、両端がプライマーで固定がしてあったことで、壁が伸縮する際に引っ張り合う状態になってしまったため、シーリングの真ん中で裂けてしまったようです。
ですので、シーリングを剥がし、動きに対して鈍感な低モジュラス素材をいれて、壁を引っ張る力に対して対応できるようにしました。
つまり、結果的にはこのシーリングの断裂は欠陥工事があったことで引き起こされたわけでは無く、家をとりまく環境を踏まえた工事をしていないことで起きてしまったのです。
家の問題点に対して、見る角度を変えないと本当の原因が分からない…という実例の一つと言えます。
ジャロジーの長所だけを見る危険性
最後にご紹介するのは、ジャロジーです。
ジャロジーはガラスの板を重ねた窓で、ハンドルをくるくると回しながら開閉を行います。
一昔前の家ですと、ジャロジーを付けている浴室やトイレなどがありました。
雨の日でも窓を開けたままにすることができ、通常の窓のように大きく開けるわけではないことと、視界を遮る開き方ですので、防犯性もあります。
しかし、このジャロジー…雨漏りがおこりやすい窓でもあるのです。
ひどい施工ですと、ジャロジーの周りにシーリングが施されておらず、大雨になるとナイアガラの滝のように水がジャージャーと吹き出てきてしまう場合も。
また、シーリング工事がしっかりと施されていたとしても、そもそもジャロジーには隙間がありますので、そこから雨が入る混むことが多々あります。
このジャロジー部分の雨漏りを解消する方法は、ジャロジーを取って、その部分に開閉ができないはめ殺しの窓を付けることしかありません。ジャロジーで換気することが目的だったのに、換気ができない施工しか手立てがなくなってしまうのです。
多くの人は、ジャロジーを取り付ける際に、長所には目を向けますが短所となるところには目を向けません。
そして、短所が表面化してから手を打とうとするのです。
短所が表面化したころには、簡単に直すことは不可能になっていますので、多額の費用がかかってしまう場合も。
もちろん、短所があるから取り付けられないわけではなく、短所を上手く押さえられるように施工することもできます。
ただ、それには通常の取り付け工事よりも費用がかかるのです。
ジャロジーのデザインと長所のために、費用をかけて取り付けるのか、それとも費用を抑えるためにジャロジーの取り付けを諦め他の換気方法を考えるのか。
長所と短所を知った上で選べば、その後の対応に大きな差が出てきます。
ただし、ここでもっとも大事なことは、スタート地点でジャロジーの長所短所を選びませんと、雨漏りに対する予防はできないということです。
ジャロジーをとりつけた後からいくら補おうとしてもそれは応急処置にしかならず、短所を根治することはできません。
だからこそ、どんな工事でも最初に短所をしっかりと理解することが大切なのです。
外壁塗装工事 補修箇所から考える問題点の捉え方とは
僕はよく、家のサビは虫歯と同じで、家の補修箇所については手術痕と同じだとお客様に説明します。
虫歯菌が浸食した歯は、治療することはできますが元の完全な歯に戻ることはありません。しかし、適切な治療と検診で長く持たせることができます。銀歯治療は安いですが再び虫歯になる確率が高く、セラミックなどいいものを使えばそれだけ歯を持たせることができます。
サビの補修もこれと同じです。
安い施工は、それなりの年数しか持たず、しっかりじっくりと修理すれば少しでも長く持たせることが出来ます。
また、家の補修箇所はどんなに綺麗に修理したとしても、手術痕と同じで光の当たり具合によっては傷が見えたりします。傷口が盛り上がって見えることも。
手術前の完全体に戻るということはなく、術後は必ずその傷と上手く付き合っていく必要があるのです。
補修箇所はどんなにすごい技術を持っても、新築に戻すことはできません。
完全に直る訳ではありませんので、メンテナンスなどをしながらうまく付き合って行かなければならないのです。
お客様の中には「150万、200万かけたのだからこれで完璧に直るだろう!」と思われる方もいらっしゃるのですが、一度壊れた箇所は繕うことはできても元の状態に戻すことはできません。
だからこそ、補修する際にはさまざまな視点からその問題箇所見て、環境による影響はないのか、家のポテンシャルはどんな状態なのか、問題箇所が他の箇所に及ぼしている影響はないのかなどを考える必要があります。
単純に壊れているから直す…ではないのです。家は水と油をギリギリのバランスを取りながら、良い点悪い点を持った状態で建築しています。
先ほどのジャロジーの例でも説明しましたが、悪い点を見ないようにしてしまうことは、その後の補修に多大な費用がかかる原因を自ら作っているのと同じです。
さまざまな補修工事
補修箇所は、その家が持つ問題点です。
しっかりと事実を受け止め、問題点をいろいろな角度から検証して補修工事をしましょう。
相見積もりを取る際も、くれぐれも金額だけを比べるのではなく、工事の内容を比べて決めることが大切です。
しっかりと補修箇所に必要な工事をすることで、完璧に直らなくても、家とこれからも長く付き合っていくことができます。
塗装工事は、家を持たせるための工事です。
家の問題点に向き合い、さまざまな角度から問題を検証しましょう。
問題点を大して検証もせず、安くてごまかすだけの塗装工事をすることは、100万円ものお金をドブに捨てるのと同じことなのですから。