もくじ
ここ最近、雨漏りの工事お見積もりご依頼を多くいただいております。
僕の場合、お客様との打ち合わせをする時は話の取り違いなどが無いように、重要な内容は後程確認のためにメールさせて頂いたり、お客様が分かりにくい時には絵を描いたりして説明し、理解して頂けるように努めます。
なぜなら、話の取り違いからトラブルへとつながることがあるからです。
今回ご紹介するのは、そんな話の行き違いや、工事の安さだけを注目してしまったがために工事内容を疎かにしたことから起こってしまっている工事の不具合について、ご説明を致します。
補修がうまくいっていない新しい塗膜
まずはこちらの壁をご覧ください。まだ塗ったばかりのように見えますが、壁の表面がぼこぼこと浮き上がっています。
これは下地の処理が甘かったために中から湿気や空気などが上がってきてしまい、塗膜が中から膨れてきているのです。
そのため塗膜と下地が密着せず、このまま破裂すれば雨漏りの原因などになることも。
ではなぜ、下地の処理が甘くなってしまったのでしょう。
それはしっかりと時間をかけて、外壁の状態を把握したうえで工事をしなかったからです。
僕のブログでは何度もお話していますが、家というのはまっさらなものの上に塗料を塗るのではなく、10年以上年数のたった外壁に塗料を塗ります。
そのため、念入りに壁の状況を診断した上で塗料を重ねないと、このような状態になるのです。
こちらのお宅のお客様は、どのような打ち合わせの上でこの施工がされたのかは分かりませんが、どのような工程があるのか見積書できちんと理解をしていれば、家の壁がこのような状態にならなかったのかもしれません。
鱗のように剥がれる壁
次にご紹介するのがこちらの壁です。
塗料が壁から、ペリペリとはがれているのがお分かりいただけますでしょうか。
この状況から見るに、塗料を塗る前の下塗り、つまりシーラーを塗っていないことで壁と塗料が密着せずこのようなことになってしまったように見えます。
外壁工事の際にシーラーで下地塗りすることを知らない業者だったのか、それとも下地塗りの工程を飛ばすことで料金を安くしたのか…。とにかく、本来であれば塗料と壁が密着するはずなのにしていないため、壁はボロボロです。
こうなってしまいますと、いざ塗りなおそうとしても残った塗料を剥がす作業が必要となるため、それだけで工事費はプラスされます。
塗った当時は「工事代が安くすんだ!」と喜んだとしても、こうして10年経たないうちに通常の工事よりも手間もお金もかかる状態になってしまうのです。
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デコボコな仕上がりの外壁
こちらの建物は下地が部分的に剥離しており、それを慣らすこともせずに塗装したことでデコボコの仕上がりになっています。
こうした壁は本来ならば、スクレーパーなどで壁のデコボコ面を削り、さらに左官の職人をいれて一帯にパターンをつけながらモルタルなどで塗り込み削った部分をぼかします。
その上に塗装することで、はじめて凹凸の無い綺麗な仕上がりになるのです。
しかし、お客様の中にはこの追加工事にかかる金額だけを見てしまい、汚い仕上がりだとしても金額が安いほうがいいと表面をならす工程を省いた工事を選んでしまうことも。
それにも関わらず仕上がってから、「こんなに汚い仕上がりだと困る、こうなるとは思わなかった」とおっしゃる方がいます。
外壁塗装は、業者はあくまでも工事内容の提案しかできず、工事内容を選んで決められるのはお客様だけです。
そのため塗装業者の見積書に記載されている『工事内容』は、何よりも大切といえます。
つい金額だけを見てしまいますが、そこをグッとこらえて「何のために必要な工事なのか」ということを営業にひとつひとつ確認すれば、きっと正しい工事内容の選択ができるでしょう。
末期症状の公園の鉄柵
こちらは近所の公園で撮影したものなのですが、公園の鉄柵が末期症状を迎えていました。
サビが進行し、腐食し、柵として機能していません。
ずっと手入れもせずに放置されていたために、ここまで症状が進行したのでしょう。
自治体が管轄している公園でも、手入れや補修がされなければ建造物は傷みます。
戸建てであればなおさらです。
「まだ雨漏りもないし、特に困っていないから」と補修時期を先延ばしにすれば、いざ雨漏りなどに気が付いた時は手遅れになっていることも。
10年を一つの目安に、ひどくなる前に補修をすることが実は一番の節約になるのです。
この鉄柵のような状況になってしまうと、修繕費が大きく膨らみ工事費があがります。その前に少しずつ手直しを入れて行くことが、なによりも家の寿命を延ばし工事費を節約することになるのです。
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スレート屋根の縁切り
最後に、スレート屋根のお宅で雨漏りがあった事例です。
このお客様宅の雨漏りは、とてもわかりやすい理由でした。お打ち合わせ時にお客様のお話を聞いて屋根を拝見させて頂いたところ、スレート屋根の塗装をした際に縁切り処理がされていなかったのです。
原因がすぐにわかりましたので、雨漏り工事としては非常にラッキーだったのですが、実は縁切りをしていない家というのは多くあります。
というのも、10数年前には「縁切り」という工程は無かったからです。
以前はスレート屋根に塗る塗料は油性のものがほとんどでした。油性の塗料はさらさらしているため、スレート屋根の上に塗ったとしても多少隙間があきます。この隙間が屋根の内側に入り込んだ水を排出する箇所となり、功を奏していたのです。
ところが、現在は屋根上に塗る塗料が水性になり、水性塗料は油性塗料に比べるとぼってりとしているため、屋根の隙間をすべて塞いでしまう結果となりました。
これによって、屋根の中に入った水の抜ける隙間がなくなり、雨漏りが発生するようになったのです。
こういった事例が多く出てきたことで、「縁切り」という工程が生まれました。
ですので、築10年以上の家の場合「縁切り」をしていない状態で水性の塗料を塗っているスレート屋根がかなり存在します。
もしもこれを読んでいらっしゃる方で屋根がスレート屋根の場合、一度縁切りがされているかどうか確認すると良いでしょう。
しかしこれについても、やはりお打ち合わせ時にお客様から屋根の塗装時期やどのような工事をしてきたのか、また雨漏りはどのような症状だったのかをお聞きできなければ原因にたどり着くことはできないのです。
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工事は見積もりの打ち合わせ時から始まっています
今回ご紹介した事例の多くは、見積もりの打ち合わせ時にしっかりと内容を詰めていれば防げたものです。
きちんと工事時期を見定めて、塗装業者と話し合い工事内容を決める。
見積時のお打ち合わせは、お客様が家についての状況やこれまでの工事歴をお話し下さらないとダメですし、お客様が工事内容にしっかりと耳を傾けて頂けないとこれもまたダメです。
見積もりはただの金額のすり合わせではありません、ここからすでに工事は始まっています。是非とも金額だけではなく、工事の内容をしっかりと確認する打ち合わせをしてみて下さい。そうすれば、ご満足いただける外壁塗装工事になる確率がグッと上がります。