先日、横須賀のお客様宅に外壁塗装のお見積りで伺ったのですが、外壁や屋根に経年劣化が見受けられたほかに、場所柄、海が近いことからドアや窓の策などの鉄部に白錆(錆には赤錆、黒錆、白錆と種類があります)が多く目立っている状態でした。
今回の施主様は、ご家族が塗料メーカー関係のお仕事をされていましたので、塗装の際に塗料などもいろいろとご希望があり、塗装職人として今持っている技術の中でどこまでできるか…というクオリティの限界に挑戦をする現場となりました。
お打ち合わせの段階から、「この塗料はここに塗ったらこうなります」と言ったリスク管理のお話しも、かなり詳しい内容になり、職人にもいろいろと知恵を出してもらいながら、お客様とお話しを進め、プロ同士としてのお打ち合わせをさせて頂きました。
塗料というのは、それぞれの特性によって一長一短があり、塗る壁の条件で発揮される度合いが変わることもあります。
実際、お客様宅の外壁の状態によっては、塗料の効果がうまく出ない場合もあるのです。
例えるならば、車のスペックを見るときに燃費を気にされる方は多いと思うのですが、その数値はあくまでも何の障害もないオーバルコース(レース用のコース)で測定したものなので、いざ車を市街で走らせてみると、信号機や交差点で止まったりすることで、思ったよりも燃費が良くない場合があります。
それと同じで、塗料もあくまでもそのメーカーが用意した条件下の壁で試した結果を、効果として紹介しているので、「この壁の状態だと効果が上手く出ない」などということが出てくるのです。
そのような理由から、塗料のリクエストをただお聞きするのではなく、お客様の話しを注意深く聞き、職人と相談をし、外壁の状態に合っていて、尚且つお客様のご要望にもお答えできる方法を一つ一つ探しました。
こういった時に頼れるのが、この道30年のベテラン職人・原本です。
30年で培った経験と、一級塗装技能士の知識で原本からは多彩な提案がありました。そのおかげで、今回は本当に最高の塗装の提案ができたと思います。
実は、このブログの時点では塗装の完成をまだ見ていなので、この打ち合わせで予定された塗装が、どんな仕上がりになっているかは分からないのです…。
実際見たら、またここで報告したいと考えています。
今回は、本来であれば塗らないシャッターなども塗ることになりました。
通常、シャッターボックスは塗りますが、シャッター自体は塗ると開かなくなってしまうため、塗らないことがほとんどです。
ですが、お客様から「シャッターの錆を止めたい」というリクエストがあり、シャッター自体を塗るリスクもご理解頂いた上で、塗装させて頂くことに。
通常ではチャレンジしない箇所でしたので、職人の工夫でどのようになっているのか、仕上がりが本当に楽しみです。
また、通常窓の枠部分であるアルミ枠は、塗っても塗料がはがれてしまうことが多く、塗装保障のつかない部分でもあるので、ほとんどの現場では塗らないのですが、ここもリクエストがあり、原本が知恵を絞って塗ってくれることになりました。
こうした「塗らない」とされる部分を、プロがどう塗りとしてまとめるのか…というのも腕の見せ所な気がします。
実は今回の現場で、一つ事前調査の際に、間違った判断をしてしまった箇所がありました。
僕が事前調査を担当したのですが、写真にあるドアの部分に錆が出ていたので、てっきりスチール(鉄材)のドアだと思ってしまったのです。
ところが、実際作業に入ってみると、一面にダイノックシートが貼ってあるタイプのドアでした。
ダイノックシートというのは、フィルムシートで、スチール製のドアの上などに貼り、本来であれば素地の部分のスチールが錆びないようにするためのシートです。それなので、錆が出るはずがないドアに錆が出ていた為、僕は「ダイノックシートではない」と思ってしまったのです。
このダイノックシートを剥がすのは、とても手間がかかるのですが、ここでも原本たちが手を尽くしてくれて、綺麗にドアからダイノックシートを剥がし、さらには最上の仕事をしてくれました。本当に今回も、現場の職人たちに助けてもらいました。
その後、なぜダイノックシートから錆が出たのかを調べたのですが、色々と職人に話しを聞いたり、メーカーに問い合わせたりした結果、フィルムに小さな亀裂が沢山入り、そこから錆が出てきたのではないか…ということでした。今回の経験を、是非とも今後につなげたいと思います。
本当に、どの現場もそうですが、塗装作業というのは、リレー方式で、それぞれの職種の人間が上手に仕事をつないでいくことで、完成度の高い塗装が仕上がります。
僕もそんなリレーを繋いでいる中の一人ではありますが、現場管理の人間として、お客様からも、職人からもこうした様々な希望や意見を聞き、両方が納得のできるところに納めるのが、自分の仕事だと思っています。
これからも、どうやったらお客様のニーズに答えることができ、職人にとっては仕事がやりやすく、且つベストを尽くすことができる仕事になるかを考えていきたいです。
いつでも期待度が高い仕事に答えられるよう、お客様と職人、両方が納得できる仕上がりにするために、現場管理に尽力できればと思います。
こちらは過去のダイノックシートの工事事例です。