普段から菊池のブログでは、安全に塗装工事を行うために、電線防護管の設置や、人通りの多い道路の足場材上げ下ろしでは道路使用許可、道路占有許可、そして交通誘導員(ガードマン)配置の必要性などをご紹介してきました。
今回、そんな菊池のブログをご覧になった警察の方から、他社が起こした電線と足場の接触による傷害事件について意見を聞きたいと連絡をいただきました。
この傷害事件の連絡をきっかけに、もう一度工事の安全性を考え直したいと思い、電線防護管の必要性と塗装工事の安全性について、塗装職人としての考えをご紹介したいと思います。

電線が足場に触れて起きた他社の感電事故
その他社の感電事故は鎌倉で起きました。
足場に電線の引き込み線が触れ、施主様がその足場に触れて感電したそうです。
捜査一課の刑事さんからの問い合わせだったのですが、「事件を判断するために、電線防護管のことを知りたいと思っています。塗装職人さんでは電線防護管を設置する塗装工事の記事を掲載されていますが、どのような条件下で防護管が必要なのでしょうか」と質問がありました。
塗装職人の現場では、高圧線と足場の距離などが規定があります。電線防護管の設置はもちろんですが、電線の引き込み線が足場に触れる可能性がある場合でも、黄色い筒状のスポンジ養生を取り付けます。この養生で、引き込み線が足場に接触するのを防ぐのです。

今回の傷害事件の主な原因として考えられるのは、次の2つです。
- 足場に養生(スポンジ)をまったく付けていなかった
- 養生を付けていたけど、途中でずれてしまった
なぜずれてしまうのか?
足場の上では職人が歩き回ったり作業したりするので、足場全体が揺れます。
その振動で、スポンジが少しずつずれたり、めくれたりすることは現場ではよくあることです。
私たち塗装職人は、長年の経験から「振動も含めて安全をしっかり考える」ことを徹底しています。
心配な箇所には常に細心の注意を払っています。
だからこそ、今回の現場の状況を警察の方に、塗装のプロとして客観的にお伝えしました。
ちなみに、この電線防護管の設置工事ですが、専門的な工事のため塗装職人から東京電力(東電)に依頼をして行います。

そのため、工事費用が塗装費用とは別立てになるのです。
東電では、東電で決められた金額があるため、値段を安くすることはできず、お客様からは「本当に必要なの?」と疑問を持たれてしまうこともあります。
電線防護管の設置工事は、8万円ほどかかるため、なおさらです。
しかし、引き込み線であれば低圧なのでそこまで大事にはなりませんが、高圧線に触れた場合には大けがだけでなく即死もありえます。
工事をする際に、電線が家と近い場合や引き込み線がある場合には、一度業者に電線の扱いについてお尋ねください。
電線防護管を付けないことで、感電事故は簡単に起こります。
安全性よりも安さを優先しないよう、十分にご注意ください。
交通誘導員の必要性
電線防護管は、今回具体的な事例があったことで、電線を防護することの重要性をご理解いただけたかと思います。
次は、交通誘導員(ガードマン)の必要性についてお話したいと思います。
この交通誘導員もまた、配置するかしないかで工事費用と安全性が大きく変わる案件です。
交通誘導員の手配は、道路幅や道の状態などによって人数が異なります。
費用は、交通誘導員一人当たり2万円ほど。
通りの入り口と出口にそれぞれ一人交通誘導員を立てるだけで、4万円かかります。

お客様に金額をお伝えすると、「お隣が工事した時には交通誘導員なんて立ててなかったけど」とよくおっしゃられます。
交通誘導員は何も制服を着ている人ばかりではなく、時には作業着の場合もあります。
作業着ですと、現場の職人に紛れてしまい、道に立っていたとしても目立たなくなることがあるのです。そのため、お客様の印象に残りません。
また制服や作業着は、周囲の景色の一部として認識される、いわゆる「没個性化」という一面もあるため、なおさらでしょう。
もちろんお隣が、交通誘導員を本当に立てていない場合もあります。
業者が「費用を少しでも安くしたい」と思い、交通誘導員を雇わずに工事を進めているケースがあるのです。
たまたま事故が起きず、工事がうまくいったから良いものの、もし工事中に事故が起きてしまったら……。その責任や損害は、お客様に大きな負担として跳ね返ってくる可能性が高いです。

以前、商店街に面した通りで、道路使用許可と占有許可を取って作業をしたことがありました。
その時は、商店街の方も協力的で、交通誘導員として配置したスタッフに「STAFF」と文字の書かれたビブスも貸し出してくださったのですが、商店街ということもあり、作業中に声をかけてくる人がいたのです。
「ちゃんと許可取っているの?」「迷惑だよ」と言いながらスタッフに絡んできました。
そこで、許可証を見せながら「道路占有許可と使用許可を警察に届け出ています。ご迷惑をおかけいたします」と言ったところ、「それならいいけど」と言って、去っていったのです。
ビブスまで着ていても、こうして難癖をつけてくる人はいます。
もし許可を取らずに作業を行い、警察へ通報されたら…工事は中止です。
警察に道路使用許可書と道路占有許可証を提出し、許可が下りるまでには1週間ほど。その間、工事ができなくなります。
工事中断を避けるためにも、道路使用許可と道路占有許可が必要な現場では、警察への許可申請と交通誘導員の設置は必要不可欠なのです。
ここで、補足として警察署への申請方法も簡単に説明いたします。
警察署への届け出ですが、申請書1通を出すだけではありません。
提出書類が何種類もあり、図面や地図、交通誘導員の配置図などさまざまな資料を添えて提出しなければならないのです。(道路使用許可、道路占有許可の申請書には、交通誘導員の記載が必要)

しかも、届け出をする警察署は、どこでもいいわけではなく、使用する道路のある地区の警察署へ出向き、また許可証の受け取りも申請した警察署に行く必要があります。
さらに区境にある道路では、それぞれ該当区域の警察署へ届け出が必要です。
もちろん書類の使い回しはできませんので、資料も提出書類も2倍となります。
道路使用許可と道路占有許可は、手続きに手間も日数もかかるため、弊社で承る場合には代行費用が必要です。
この代行費用を抑える方法は、お客様ご自身で届け出をしていただく以外にはありません。
道路使用許可証と道路占有許可証を取るためには、交通誘導員が必ず必要ですので、ぜひお知りおきください。
塗装工事で見落とされがちな法律とルール
塗装工事で見落とされがちな法律とルール
今回は、電線防護管の必要性や、道路使用許可、占有許可の重要性についてご紹介しましたが、この二つは安さを優先して見落とされがちな点です。
塗装工事の際には他にも、立地によって様々なルールや届け出が必要なことがあります。
線路沿線の建物の場合には、道路幅が10mより短い場合、倒れた足場が線路にはみ出る恐れがあります。そのため、鉄道会社への足場建設の許可が必要です。
バス停が家の目の前にあり、荷物の上げ下ろしができない場合には、バス会社にバス停の移動を依頼します。
もしもの事故に十分に備えてから工事を始めることで、現場をスムーズに進めることができるのです。
上記のような環境下で塗装工事をお考えの際は、材料や工事の費用だけを考えるのではなく、工事の安全性についてもご検討ください。
工事の安全性を守ることは、高品質な仕上がりを保つためのポイントです。迷われたら、安全性を優先してください。
安全性を選ぶことが、余計な手続きや申請が増えず、一番節約への近道となります。
