工事の質を高めるために 班から班への引き継ぎが重要

前回に引き続き、1階が店舗で陸屋根の上にお客様宅の建物があるという珍しい建物の塗装工事についてのお話です。
こちらのお客様宅は、珍しい建物ゆえに塗装工事の際に一軒家に使う工事方法や、ある程度大きなアパートなどの建物に使う工事方法を掛け合わせて工事をしています。
そのため、塗装工事のあらゆる技術がご紹介できるのです。

先日、ようやく補修工事と下地処理が終わり、いよいよ塗装班への引き渡しとなりました。
今回のブログでは、工事の引き渡しとはどのように行うのか、詳しくお話ししたいと思います。

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もろくなった屋根でも大丈夫 カバー工法と板金工事

引き継ぎは、班のリーダーがお互い現場を見ながら行う

僕の担当現場で引き継ぎの際には、それぞれのチームリーダーが顔を合わせ、実際の現場を一緒に見ながら行います。
今回の引き継ぎは、下地班から塗装班への引き継ぎです。

ちなみに、塗装班は建物の高圧洗浄も担当するのですが、今回はこの高圧洗浄を箇所によって2種類使いわけることになりました。
というのも、いわゆるサイディングやコンクリートであれば通常の高圧洗浄でいいのですが、今回はタイル壁があったため薬品を使った特別な高圧洗浄が必要だったのです。
そのため、下地班の松尾(僕と同じ名字ですが下地、防水の専門職人です)は塗装班のリーダーである竹山と、薬品洗浄の専門業者の担当者二人に引き継ぎをいたしました。

下地班から塗装班への引き継ぎ1

まずは、下地班として補修をした箇所や、気になる箇所について情報を共有します。
その一つである陸屋根の補修箇所の情報共有について、ここでご紹介いたしましょう。
補修工事をした際に、陸屋根の排水溝そばに段差があることがわかりました。

この段差は床全体からみれば微々たるものではあるのですが、この後の作業を考えた際にトラブルの元になる可能性があるので、塗装の際に処理ができるように情報の共有をすることに。
通常であれば、多少段差があってもウレタン防水を撒く際にうまく段差をならすことができるためたいした問題にはならないのですが、今回こちらの陸屋根には、ウレタン防水を撒いた後、階段から家までレッドカーペットのように長尺シートを敷くことになっていたのです。
この長尺シートを貼った際に、床の勾配に対して1枚噛ませることになるので、このわずかな段差があることで水たまりができる可能性がでます。
そのため、段差に確実な対処しておくことが必要です。

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ウレタン塗膜防水を撒くと、低いところにむかって防水材が流れるため、コテや専用の道具を使って塗り、床が均一になるように慣らしています。
その際に、長尺シートの厚さを考えながら段差を埋め、雨水の流れを考え作業するのです。
わずか数ミリの段差ですが、この段差を考えるか考えないかで工事の仕上がりが大きく変わってきます。
こちらの詳しい作業については、また別のブログでお話しするつもりです。

下地班から塗装班への引き継ぎ2

次に、外壁などの懸念箇所について引き継ぎをします。


この写真は、1階の店舗の軒天部分なのですが、お店ののれんをかけるために後から器具がつけられていました。
店舗の方が取り付けた物らしく、壊れかかっておりましたのでこちらも共有します。
こうした箇所は、作業前に写真を撮りお客様へ報告し、職人達には注意箇所として連絡をするのです。

高圧洗浄は雨漏り発見の散水試験のようなもの

下地班から気になる箇所の情報共有の他には、補修した箇所の情報共有もします。
それらの情報をもとに、通常の塗装班が行う高圧洗浄をした際に雨漏りなどが起こらないかチェックをするのです。
現場によっては、高圧洗浄をして綺麗にしてから補修工事をするところもありますが、今回は先に補修工事をし、その後高圧洗浄をすることを選択しました。
高圧洗浄は、ある意味散水試験と同じです。
1階部分のALCの外壁や、陸屋根部分、そして2階に建てられた家など、とにかく注意する箇所が多いため、高圧洗浄で雨漏りの状態を確かめられるのは確実な工事として仕上げるためにも役に立ちます。

こちらの写真の通り、塗装職人では高圧洗浄をかける際に場所によって、アタッチメントを交換することが基本です。

 

雨戸のような細かい隙間を洗う際には、手持ちの小さなガンを、基礎部分や、ALCの壁面を洗う場合は、より広範囲を一気に洗い落とすことができるライフル銃のようなガンを使用します。
これらを使い分けることによって、効率的な洗い上げとなるのです。
今回は下地処理が終わってからの高圧洗浄でしたが、まれに後から高圧洗浄を行いますとお客様から「先に高圧洗浄をするのではないのですか?」とご質問を受けることがあります。
お客様がご心配される箇所として多いのは、シール部分の汚れなのですが、実はシールはほとんどの場合打ち直しをするため汚れを落とすことはそれほど重要ではありません。
シールは、どんなに汚れていたとしてもほとんどの場合撤去をするため、洗浄することは無意味なのです。

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薬材の入った高圧洗浄とは

上記で説明したのは、いわゆる塗装工事前に行う、塗装の職人が行う高圧洗浄のお話をいたしました。
ここからは、薬材を使用するタイプの高圧洗浄についてです。
薬材の入った高圧洗浄の場合は、通常の高圧洗浄では落とせない汚れを落とします。
といっても、対処できるものは限られていて、タイルなどのアクを取り除くことや、エフロレッセンスなどの除去に使用します。

それ以外にも、シールからでる油や可塑材などを溶かすこともできますし、壁などに貼り付けられたテープの残りかすなども洗うことが可能です。
今回の工事でも、この薬材入りの高圧洗浄を使って、タイル壁の高圧洗浄だけではなく、店舗のシャッターの高圧洗浄もすることになりました。シャッターについたテープの可塑材やガムテープの剥がし残った薄いフィルムなども取り、最後にコーティングをかけ磨き上げたので、シャッターも非常に綺麗になりました。

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肝心な工事や引き継ぎには立ち会いが必要

ちなみに高圧洗浄をかけるシャッターは、店舗のシャッターだったため、夜間作業となりました。そのため営業である僕も立ち会いをして、しっかりと作業の確認をしました。
仕事の引き継ぎなどもそうですが、申し送り事項がある場合や、夜間などのイレギュラーな工事の場合、意見の食い違いやトラブルなどが起こりやすいため、必ず現場の責任者として僕も確認します。


今回、こちらの店舗の皆さんは足場を組むときなども非常に協力的で、店舗前の駐車場などに足場前にパイロンを置き、足場にふれないようにすることへも理解して下さりました。
こうしたことも…ただ職人に任せるだけでは無く、僕も立ち会い、現場の安全を確認しながら工事しています。

チームとして褒められる現場は良い仕上がりに繋がる

今回は下地班から塗装班への引き継ぎについてご紹介しましたが、この引き継ぎは単純に申し送りをするということではなく、現場にある問題点や不安点を共有し、より良い仕上がりに導くためのリレーバトンなのです。
しっかりと全てを申し送りすることで、仕上がりに向けて塗装作業がより威力を発揮します。
そして、丁寧な申し送りは現場の信頼にもつながるのです。
工事が終わった後に、お客様からお褒めの言葉を頂くことがあります。
その言葉は営業である松尾だけでは無く、チームへの褒め言葉であることも多く、ある意味それを僕にとって最高の褒め言葉です。
塗装工事は、これまでもお話しした通り様々な職人が連携して行う工事です。
足場、下地、塗装、屋根、板金、シール、防水…すべて担当する職人が違います。
さらにいえば、工事の出来を大きく左右する材料を手配する材料業者も良い工事を行うために必要なマスターピースの一つです。


塗装班だけ技術が高くても、大工職人だけが最高の技術を持っていても良い仕上がりにはなりません。
塗装工事は、トータルでの出来が大事なのです。

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だからこそ、担当者同士で引き継ぎをしっかりと行い、その状況を営業である僕も現場監督としてしっかりと認識し、お客様へも共有する。
陸屋根にもしかしたら起こるかもしれない、水が溜まる不具合、お店の軒天にある金具の不具合などなど。
すべての事項を包括しながら、工事を進めることは非常にエネルギーのいる作業です。
しかし塗装職人では、この手間を惜しみません。
たかだか工事の引き継ぎですが、全ての力を注ぎ込むことで仕上げに向けて最高の状態で工事を続けていくために大事な工程です。
これからも細心の注意を払って、しっかりと班ごとの引き継ぎをしたいと思います。

若い時から大手の大規模改修工事に携わり、官公庁の仕事も多くこなしてきました。知識は当然のこと現場も正しい仕事ができて当たり前です。常にお客様の立場に回り物事を考えて行動しています。 漏水対策も得意分野で2人の子供を抱えて毎日仕事に励んでいます。防水施工技能士。

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