もくじ
塗料を正しい量で使用することの大切さ
みなさんが塗装の質を考える時に、一番注目することはなんでしょうか?
職人の技術?塗装後の仕上がり?塗料のグレード?何回塗り重ねるか?
実は一番大切なのは、「外壁の広さに対して適切な量の塗料を使うこと」。これが塗装の質を守る秘訣なのです。
塗料の効果は、正しい希釈率で薄めた塗料を適切に使ってはじめて発揮されます。
今回は、そうした塗料の薄めすぎによる弊害と、どのような塗料の塗り方が適切な量なのかということに注目してお話ししたいと思います。
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薄めた塗料で塗っても、適切な希釈率の塗料で塗っても見分けがつかない!?
薄めてシャバシャバになった塗料というと、塗ってあるものを見れば1発で塗料を薄くしたことに気が付くと思いませんか?
水彩絵の具であれば、水を多く入れて溶いた絵の具と、水を少しだけ入れて溶いた絵の具では、あきらかに仕上がりの絵が違います。
でも塗料の場合、動画を見て分かるとおり、薄めた塗料と適切な希釈率で伸ばした塗料で塗ったものの仕上がりは、区別がつかないのです。
ですので、塗ってすぐには分からず…塗装工事から2、3年後に塗装が剥がれてきたり、色があせたりしたことでようやく気が付くのです。
薄くシャバシャバにした塗料を使うと、塗料の持つ効果は半減してしまいます。
これではせっかく100万円近くかけて塗装を行ったとしても、意味がありません。塗料は、適切な希釈率で伸ばして使用するから、塗料の効果を最大限に発揮させることができるのです。
では、薄めた塗料での施工にならないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
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なぜ薄めた塗料で塗装をする業者がいるのか?
まず想像しやすいのは「塗料を薄めて使えば使用量を抑えられる」という理由ですよね。でもほかにもいろいろあるのです。
まず、塗るときにシャバシャバの方が断然、塗る時間が早く終わります。通常の希釈率の塗料と塗り時間を比べた時に、2~3倍くらい時間が変わることも…。
また、薄めに溶いた塗料は乾きの時間も早くなります。
早めに乾くということは、工期が短く済みます。工期が短くすめば、次の現場もいれることができて、どんどん仕事を請けることが可能になるのです。
こうした理由から、お客様の望む高いグレードの塗料を使いながらも、お客様が気づかないことを言いことに塗料を薄めて塗る業者もいます。
これでは、せっかくのグレードの高い塗料の効果を発揮できません。よくありがちなのが、塗料の種類ばかりに目が奪われてしまい使用する塗料缶数のことを気にしない場合です。
こうした業者を避けるためには、見積もり時に何缶ほど塗料を使うのかを聞くと良いでしょう。
壁の性質によっても缶数は変わるので注意が必要ですが、以下を目安にして見てください。大まかな算出です。
通常の一軒屋の外壁を塗った場合(建坪30坪換算):
- つるつるした壁:5~10缶くらい
- 凹凸の激しいザラザラした壁:14~25缶くらい
外壁塗装の場合はサイデイングやモルタルという種類に大きく分かれます。
ザラザラした外壁というのはモルタルの場合でサイディングの場合はどの外壁の種類でもそれほど使用缶数の差異は出ません。
モルタル外壁はとても多くの種類があるので、種類によっては使用缶数にも大きな幅が出ます。
例えば非常に塗料消費量が激しいのはこのような動画のような外壁で、塗料は25缶で重さにして370Kgを使用しています。
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だいたいの塗装会社は見積もり時に「施工費のみ」を提示しますが、ぜひ是非材料費と施工費の項目を分けて見積もりを出してもらってみて下さい。
塗料の希釈の仕方などを知ろう
こうした薄めすぎた塗料を使われないためにも、お客様自身で塗料の種類や希釈の仕方などを知っていると、現場を見たときにその作業が適切かどうか判断することが出来ます。
是非、動画と合わせてご覧下さい。
塗料は大きく分けて2種類あります。油性塗料と、水性塗料です。
塗料の種類や効果の詳細はまた別記事で詳しく説明したいと思います。
ここでは油性、水性塗料の希釈の仕方を説明します。
油性のものはシンナーを使って希釈し、水性のものは水を使って希釈します。希釈の仕方は塗料の入っている缶の側面などに記入があるので、お客様でも見ることができます。
また、撹拌のしかたもいろいろとあって水性のものであれば動画のように缶を上下左右に振ることで塗料と水を混ぜることが出来ます。
それ以外には、下の動画のようにミキサーを使って撹拌する場合もあります。
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混ぜて出来上がった塗料は、ホイップする前の生クリームくらいの粘度と覚えるといいでしょう。塗料によっては、モッタリとした状態がいいものもありますが、その場合でもマヨネーズくらいの粘度です。
まれに光触媒の塗料などの場合は、シャバシャバな状態で使うタイプものもありますが、ほとんどの塗料は「シャバシャバな状態は良くない」という認識で大丈夫です。
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希釈率の正しい塗料の効果を発揮するなら三回塗りをするのが肝
せっかくの正しい希釈率の塗料も、塗りが二回だと塗料の効果が低くなります。
外壁塗装の仕方を調べると、「三回塗り」という言葉がよく出てきますが、ここではこの三回塗りについて詳しくお話し致します。
この三回塗りとは、下塗り、中塗り、上塗りの三回のことです。
三回にはそれぞれ、こんな役目があります。
- 下塗りの役目:接着剤の役目(外壁と塗装を密着させる)
- 中塗りの役目:色付け(中塗りだけでは効果が発揮できない)
- 上塗りの役目:仕上げ、厚みをつけて塗料の効果を維持する
こうして下塗りから順に行うことで、三回塗りの効果が発揮されます。
また、この三回塗りですが作業時間としては冬の場合は一般的に3日ほどかかります。1日目で下塗り、2日目中塗り、3日目上塗りという具合です。
正しい希釈率の塗料は、乾くのにも時間がかかるため1日を必要とします。
真夏の塗っているそばから、湯気を立てて乾いていくような日でも、2日はかかります。
以前にYahoo!知恵袋で『1日で3回塗りが終わった』という質問文を目にしたことがありますが、これは有り得ません。
これこそ、薄めた塗料を使っているからできるのだと思います。
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正しい希釈率で塗ったからこそ起こるトラブル!?
希釈率と塗布量を守って三回塗りをしたにも関わらず、外壁を塗装してしばらくたった頃に、壁の表面に泡が沢山浮き上がってきてしまう症状が起こることがあります。
この症状を「置換発砲」といいます。
私が28年間塗装業をやってきて、3回だけ「置換発砲」が起こった外壁を見たことがあるのですが、それくらい珍しい症状です。
ざらざらデコボコした壁で起こりやすく、塗料の色も白などよりは、茶色など濃い色の時に起こりやすいように思います。
なぜこの状況になってしまうかと言うと、ざらざらデコボコした壁の無数にある小さい凹みの底部分に、粘度のある塗料が届かず、底部分の途中に留まり膜が張ったような状態になります。
そこに太陽の強い光があたり急速に温められたことで、凹みの底にあった湿気などが温まり、空気が膨らんでくることで、まだ乾ききっていない壁の表面がプクッと泡のように盛り上がるのです。
動画をみると、その症状がよく見て取れると思います。
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「置換発砲」がおこらないためには、少し薄めの塗料を使って凹み部分の底まで塗料が行渡るように塗装するしかないのですが、なかなか「この壁は置換発砲がおこりそうだな?」とは分かりにくいので、起こってから対処する…というやり方になってしまいます。
あくまでもケースバイケースなのです。
実際に、この動画で紹介したお宅の壁は、置換発砲した泡を一つずつマジックロンというタワシを使って手作業で潰し、下塗りの密着度がある状態でしたので上塗りをしました。
下塗りの密着度が無い場合は、下地調整からやり直す場合もあります。
まとめ
以上塗料を正しい量で使うことの大切さをご紹介しました。
「置換発砲」のような特異なケースもありますが、それ以外は塗料の効果を最大限に活かすためにも、正しい希釈率で、正しい塗布量を壁に塗ることが大切です。正しい知識を身に付けることで、より良い塗装ができればと思います。
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また別の記事で塗料の性能についてもご紹介したいと思います。
【参考情報・Yahoo!知恵袋】