今回は、お客様、職人、営業すべての力を合わせて完工できた現場をご紹介します。
外壁塗装と雨漏り補修のご依頼でしたが、お客様のお宅には様々な問題がありました。
それを各ジャンルの職人やお客様、そして営業でスクラムを組んで取り組むことで解決できたのです。
そんなワンチームで行った、工事の詳細についてお伝えします。
問題山積みの建物の状況
今回のお客様宅は、先ほども述べました通り外壁塗装と雨漏りの補修のご依頼でした。
お客様からご連絡を頂いた内容から、「工事の内容としてはこんな感じかな?」と予想をつけて現場調査へ伺いました。
ところが実際お客様宅を拝見しますと、想像よりはるかに厳しい状況であることが分かったのです。
パミール屋根であること
大きな問題のひとつは、お客様宅の屋根がパミール屋根だったこと。
パミール屋根とは、以前ニチハから発売されていた屋根材の一種なのですが、数年たつと層状に剥がれもろくなってしまうもの。
屋根上を歩こうものなら、おせんべいのようにパリパリと割れてしまうのです。
パミール屋根はもろいので、屋根上で工事をする屋根塗装は出来ません。
パミールについて、詳しくはこちらの記事を参照してください。
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また割れた屋根の隙間から雨水が入り込み雨漏りの原因になってしまうため補修は必須なのですが、パミールが脆いため補修方法としてはカバー工法しかありません。
ですがカバー工法は、屋根塗装より費用がかかります。
もう一つ大きな問題は外壁にありました。
サイディングボードが横張りであること
通常であれば横張りのものが多いサイディングボードですが、こちらのお宅は縦張りだったのです。
これには塗装方法悩まされました。
さらに、家を建てた際に規定の希釈率よりも薄めた塗料で塗ったせいか外壁の塗膜が薄く、それも雨漏りの原因のひとつになっていたのです。
横張り?縦張り?サイディング壁は張り方が重要
なぜサイディングボードの縦・横が重要なのか。
詳しく解説します。
縦張りと横張りの違い
サイディング壁を貼り付ける前に、胴縁(どうぶち)と呼ばれる幅5センチ、厚さ1センチの骨組みを家のまわりに組みます。
その胴縁を土台にして、サイディングボードを張り付けて壁として仕上げるのです。
通常は横張りと呼ばれる方法でサイディングボードを張り付けます。
横張り家の周りに縦のボーダー状に胴縁を組み、その上にクロスさせるようにサイディングボードを張り付けるもの。
サイディングボードは上下が連結可能なパネル状になっています。
そのため上から順に屋根を重ねるような要領で出っ張り部分を上、へこみ部分を下にしてボードを連結させられます。
これによって、上段のボードが下段のボードに覆い被さるように連結可能。
雨水は上から下へと流れますので、覆い被さったボードの上を雨水がすべり落ちるように張れるのです。
この場合、ボードの内側に水が入り込んだとしても胴縁が縦に組んであるため、内側に入った水はほぼ障害物がなく下へと落ちて排出されます。
ただ、お客様のお宅はサイディングが縦張りでした。
縦張りの場合、連結部分の目地が横線となるため、壁に横縞が入ったかのような印象になり見た目がスタイリッシュになります。
サイディングボードの長所を引き出す張り方としては横張りが最適なのですが、今回の建物は見た目の美しさを重視してサイディングが張り込んでありました。
ただ、この縦張りは問題点が多いのです。
縦張りサイディング壁の問題点は大きく3つ
縦張りサイディング壁の問題点は、大きく分けて次の3つです。
- 横張りの胴縁が雨をせき止める
- サイディングの連結部分が横向きになり、雨が入ってきやすい
- 窓などの外壁開口部から雨漏りが発生しやすい
詳しく解説します。
問題1:横張りの胴縁が雨をせき止める
1つ目の問題点としてあげられるのが、胴縁の組み方です。
横張りの時は、胴縁を縦に組みましたが、縦張りの場合は横に組みます。
家の周りを横縞のように45.5センチのピッチをあけながら、胴縁を下から壁の一番上まで組み上げ、そこに縦張りのサイディングをクロスさせるように張りこむのです。
横縞のように胴縁があるということは、ボードの内側に入り込んだ水が下に落ちてくる際に胴縁にせき止められます。
胴縁に行く手を阻まれた雨水は、『アミダクジ』でもしているかのように胴縁をつたい、さまざまな箇所へと入り込み、最悪雨漏りを引き起こす原因となってしまうことも…。
問題2:サイディングの連結部分が横向きになり、雨が入ってきやすい
2つ目の問題点としては、パネルの連結部分です。
サイディングは、先ほども申しましたとおり連結のできるパネル状になっているのですが、縦張りではこの連結部分は横になってしまうため、雨の侵入をよけることはできません。
傘は上から降る雨は防ぐことができますが、横から降る雨は防げませんよね。
つまり、縦張りのサイディングの連結部分というのは上から降る雨に対して傘を横向きに倒して差しているようなものなのです。
問題3:窓などの外壁開口部から雨漏りが発生しやすい
3つ目の問題点は、窓などの外壁開口部です。
縦張りのサイディングボードのつなぎ目が、外壁の開口部に垂直におりてしまうことにより、溝をストレートにつたった水が窓まわりに直撃し、窓の隙間から雨漏りすることが…。
通常の雨であれば、窓に当たっても雨漏りには早々なりませんが、雨が降るたびに同じ箇所に水が直撃していますと、その部分から雨漏りとなります。
以上の理由から、縦張りのサイディング壁というのは塗装屋泣かせの壁なのです。
さまざまな難点に対して補修開始
今回のお客様宅塗装工事は、屋根のカバー工法と、雨漏りの補修、外壁塗装など外壁塗装のフルセットです。
それを踏まえたうえで、補修を行いました。
様々な職人の力を活かします。
屋根のカバー工法は屋根職人がしっかりと対応し、外壁塗装は塗装の職人、シール職人、大工でお互い指示を確認しながら行いました。
下塗り剤で補う縦張りサイディングの難点
縦張りパネルの問題点は、下塗りで難点を補うことに。
下塗りの際には、お客様の希望で塗料に厚みをつけたいというリクエストもありましたので、砂骨ローラーとよばれる目の粗いローラーで柚肌塗りをしました。
フィラと呼ばれる下塗り剤を外壁に塗装する際に、横の目地にもたっぷりと塗り込むことで目地を厚くします。
縦のサイディングボード連結部にあたる目地には、塗料で埋めたくありません。
そこで、ハケを使って違う(カチオンシーラー)下塗り剤を塗り込み、ボードの動きに対応できるようにしました。
「ボードの動き」というのは、木材の特性から湿気や気温などで家が伸縮することで壁に動きが出ること。
多少の遊びを残してその動きに対応することで、壁のひび割れなどを防ぎます。
窓枠部分や水の排出にも対応
ここでさらに工夫をしたのが、同じ縦の目地でも窓枠部分に垂直に当たる部分には下地材を塗り込んだこと。
厚さを持たせることで、目地部分に雨水が集まるのを防いだことです。
目地の箇所によってはシールを打ち、雨水の排出や壁の動きが出る箇所など開けるべきところは開けられるように施工します。
細部まで神経を使った工事でした。
お客様、職人、営業 ワンチームで行った外壁塗装
塗装工事にかかわる職人たちがすばらしい連携をしたことによって、客様宅の外壁補修は無事に完了しました。
雨漏りがありましたが、施工後は大雨でも雨漏りが直っていることが確認できました。
家の外壁塗装は、一人の職人が屋根も壁も担当するわけではありません。
屋根には屋根職人、シール打ちにはシール職人、塗装には塗装職人、木部の補修は大工などなど。
すべての箇所に専門家がいて、それら職人たちの技術をつなぎあわせたものが雨漏りを止める外壁塗装となるのです。
職人とのやりとりも、通常であれば朝礼夕礼くらいしかしないのですが、今回ばかりは昼礼もいれ、指示も細かく伝えました。
もしも、だれかが指示を無視したり、独りよがりな作業をしたりしていたらここまでの仕上がりにはならなかったでしょう。
また、今回の塗装ではお客様のご協力もありました。
お客様のイメージや希望も明確にご提示いただき、とても分かりやすかったです。
細かい箇所も丁寧にご対応いただき、お客様とのやりとりメールの文字数を合計しますと、かなりの文字数になると思います。
お客様の想いを叶える塗装工事とは
僕は、足場を建てる前の現場調査(お医者さんでいうところの問診)に時間をかけます。
家の状態は、外観のみでわかるものではありません。
家の新築時の様子や、増築、改築などの経歴を調べたり、屋根材はどんなものが使われているのかを見たりすることで把握できます。
家の状態をしっかりと把握することで初めて、この家の補修に必要な技術を持つ職人たちを集めることができるのです。
さらに大切なのが、お客様の話をしっかりと伺うこと。
お客様の本当の希望は何なのか、もっとも気にされているところはどこなのか…それを引き出すことが僕の仕事の肝なのです。
今回のお客様は、当初「壁の色を黒にしたい」とおっしゃっていました。
しかし、よくよくお聞きすると「家の中がとにかく暑くて困っている」ともおっしゃっていました。
僕は「黒にしたらますます暑くなってしまうかもしれない」とお伝えし、違う色のご提案をしたのです。
さらにお客様のお話をお聞きしますと、黒にされる理由としては壁が汚れることを気にしておられて、壁の汚れが目立たない黒を考えていらっしゃることがわかりました。
そこで僕が提案したのは、遮熱効果の高く意味合いも汚れもつきにくい白い塗料です。
結果、提案した白い塗料を採用していただき、仕上がりにも大変喜んでいただけました。
このように、お客様が本当に気にされていることや困ってらっしゃることを聞き出せなければ、お客様に本当の意味で満足いただける塗装にはならないのだと僕は思うのです。
遮熱塗料についてはこちらの動画を参考にしてください。
併せて観たいYouTube
全員でスクラムを組んで最高の塗装工事を
塗装工事は、すべての箇所を100点にすることはできません。
どこかを100点にしてしまいますと、必ずどこかにマイナス箇所が現れるからです。
このマイナイス箇所が極力出てこないように、80点ずつをとりながらすべての問題点を丸く収めるバランスの取れた工事が、結果として100点の工事になります。
今回はお客様、そして職人たちと一丸になれたことで、すべての工事のバランスをとることができ、無事完工することができました。
これからも、職人や営業、そしてお客様ともスクラムを組んでワンチームとなり、最高の工事をしたいと思います。