塗装工事をする前には、いくつか必要な準備があります。
足場を組むこと、高圧洗浄を家全体にかけること、そしてしっかりと養生することなどです。
今回は、養生が『なぜ必要なのか』ということや、養生に関わる経費や手間などについてお話ししたいと思います。
一番大きな養生 足場のメッシュシート
足場を建てる際に、必ず足場全体にメッシュシートを張り巡らします。
これは、塗料などの飛散防止用が大きな理由です。
最近では以前ほど、吹き付けで塗装をおこなうことは少なくなり、ローラーで塗装を行うことが主流ですので、そこまで塗料が飛散することはありません。
それでも、ローラーは転がすことで遠心力がかかりますので、多少の塗料はねがあります。
そうした飛散を制御するためにも、このメッシュシートは役に立つのです。
さらに、職人の落下を防止する効果もありますし、道具などが手からすっぽ抜けた際に道路などに落下することも防止できます。
高所で作業をしていると、道具の落下が100%ないとは言えません。道具が落下した時に、一番怖いのが通行人の上へ落ちてしまうことです。
しかしメッシュシートがしてあれば、道具が通りに落下することはありません。
また、防音効果のあるメッシュシートなどもあります。
こうした理由から、メッシュシートは重要な養生の一つなのです。
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養生はひとつひとつ手張りする
養生は、食品をラップで包むように、くるりと巻けば終わりというものではありません。
家の形や、保護すべき箇所というのは形なども千差万別なため、ひとつひとつ目的に沿って、職人が手作業で養生をかけていきます。
こちらの写真は、戸建てのウッドデッキなのですが、床面にブルーシートで養生をし、手すりなどの木部にも養生シートをかけました。
最後に窓に養生を貼り込み、これではじめて塗装することが可能になるのです。
窓周りは、開け閉めが必要な場合は養生を外すことがあるため、最後に養生します。
また、その逆で床面の養生は最後まで外しませんので、最初にしっかりと養生する必要があるのです。
さらに、家の周りに敷き詰められた砂利の上なども養生をします。
万が一塗料が垂れてしまうと、砂利を撤去することになってしまうため、地面ではありますが養生がかかせません。
写真の奥に見える室外機も同様です。こちらもしっかりと養生します。
最近では室外機用の四角い形をした不織布タイプの養生があるので、室内でエアコンを使用しながら養生することが可能です。
塗装工事というのは、新築工事とは違い、家の中に住みながら行う工事ですので、養生する際に少しでも不便にならぬように心がけます。
塗装する家の車なども養生しますが、それ以外にも隣接する家の車を養生する場合も。
(施主様の車以外は、全て事前にカバーを掛けて良いか伺った上で作業します)
こちらも最近では不織布のタイプが多いのですが、使用する塗料や、工程によってはビニールタイプの養生をする場合も。
その他、換気扇のフードなどにも養生をかけます。
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工事の工程としてかける養生
上記に連ねた養生は、あくまでも工事前に塗っては行けないところにかける養生です。
それ以外にも、工事の過程でマスキングをするのと同じように、養生する場合があります。
このスチールのひさしなどがそうなのですが、最初に壁を塗るため、スチール部分に養生をしてから壁面の塗装を仕上げます。その後、養生を剥がして、ひさし部分も塗装をします。
ひさし部分を塗るときは、壁の養生はしません。
なぜなら塗装をする時は、重力を考え上から下に塗り進めていくのが基本だからです。
壁よりもひさしが下にあることから、塗料が垂れないと考え壁の養生はしません。
併せて観たいYouTube〔塗装職人の養生をする手〕
その他の養生
ここまでは、家に備え付けられているものにかける養生でした。
次に紹介するのは、カーポートや、マンションの2階通路などに取り付けられているアクリル屋根の取り外した後にする、部材の養生です。
カーポートの屋根などは、足場を組む際に障害となるため取り外します。
取り外した支柱や、アクリル板はきちんと養生をして敷地内の隅などに保管をするのです。
(敷地内に保管場所が無い場合は弊社の保管場所や、場所を別途借りることも。その場合には保管料金がかかります。)
この場合にも、工事中の塗料などが付いてしまわないようにしっかりと保護し、工事後に全て元通りに戻せるようにします。お客様の中には、取り外したのを機にアクリル板を新しいものに変えられる方もいらっしゃいますが、あまりヒビなどが入っていない場合は、元のアクリル板をそのまま戻しますので、外したアクリル板を汚したり破損したりすることが無いよう注意が必要です。
防護のための養生
この写真の養生は、塗装工事用の養生とは少し用途が違います。
今回、階段下のタタキ部分にカケがあったため、モルタルで補修工事をしました。
このモルタル部分は、乾くまでの時間がかかるためしっかりと養生し、保護しながら作業ができるようにます。
今回もわりと最初の方でタタキ部分の補修工事をしたのですが、モルタルが固まるまでに1週間ほど時間がかかるため、しっかりとした養生が必要です。
あえて気がつきやすいように大げさな養生がしてありますが、真冬の場合などはこれに毛布をかけたりします。
というのも、モルタルやコンクリートというのは水と材料を混ぜて固まらせるので、寒さで0度以下になってしまうと、水分が凍ってしまうことも。
そうなると、コンクリートが固まらなくなってしまうため、寒さに対応するように毛布をかけるのです。
このように、補修箇所を保護する目的でも養生することがあります。
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養生以外にも材料の飛び散りを防ぐ方法
ここまで塗料の飛び散りや、落下、防護のための養生をご紹介しましたが、中には養生だけですと防げないものもあります。
それは粉塵です。
フェンスのブロック塀などを切断する際に、コンクリートが微細に砕け、粉塵として飛び散ることがあります。
粉塵は、養生をしてもメッシュなどをすり抜けてしまうため、切断する器具に掃除機を接続して、切ったそばから粉塵を吸いこむようにし、周りに飛び散る粉塵を極力抑えるのです。
粉塵は、飛び散らないように対処しないと、自分の家だけではなく近隣の方に迷惑をかけます。
そのためにも、工事をする前に必ず対策を採らなければなりません。
こうした被害の予想も、ある意味養生を家に施すための考え方と同じなのです。
養生の意味とは
ここまで、養生をする箇所についてご紹介しました。養生工事は、通常二日ほどの時間を要すこともあります。
つまり技術だけでなく、非常に手間も資材費もかかる作業なのです。
この養生費用は、工事の見積もりの際にもしっかりと工事費用として記載されるのですが、たまにお客様が「なぜこんなに高いの?多少汚れてもいいからこの養生代が安くならないかしら?」とおっしゃることがあります。
ここまでご紹介したように、工事前に施す養生は、オーダーメイドで家にフィットしたものです。さらに、塗料などから完璧に守るための資材、そして職人の手間と時間をみれば、その費用の内訳は一目瞭然です。
もしも、養生の費用を抑えて、最低限にした場合・・・塗料が垂れたところは悪目立ちしますし、それを取るためには手間がかかるため、養生するよりも割高な補修費用がかかります。
つまり、きっちりと養生をすることが美しい仕上がりになるだけでなく、結局は費用を抑えることとなるのです。
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養生は職人の力量が問われる作業
養生という作業は、とくに基本や決まり事があるわけではないので、あくまでも職人の知識と経験で行う作業です。
塗装をした際に、ここを保護しないと汚れてしまうのではないだろうか?ここも保護が必要ではないだろうか・・・と予測を立てて行います。本当にあらゆる視点から家を見て、仕上がりがどんな状態になるのか考え、未来への対策をする。これが『養生』です。
時には、壁に近い植え込みなどにも養生することもあります。つまり、家によって養生する箇所は本当にさまざまなのです。
そのため、同じ建て売りを買ったとしても、ちょっとした環境で家によって養生する箇所は変わることがあります。
塗装工事というと、塗ることだけを想像されることが多いでしょう。しかし、こうした下準備をしなければ美しい塗装ができないということも、お客様にご理解頂ければ幸いです。