雨漏りで悩んでいるお客様は、多くいらっしゃいます。
しかし、実際に雨漏りが起こっている壁の内部が、どのようになっているかということをご存じの方はほとんどいらっしゃいません。
壁の中の雨漏り原因を見ることは難しいので、分かりやすい例となる場所を今回は撮影してきました。
また、足場にかけるシートの巻き上げ方についても紹介します。台風時に足場を覆っているシートを巻き上げるのですが、これも建物の種類によって変わるということをご存じのお客様は多くありません。
今回はこの2点について、ご説明いたします。
川の氾濫から見える雨漏りの水みちとは
この写真は、先日の台風で増水した川を撮影したものです。
岩や壁などの障害がない場所では、川がいつもより増水しているものの一定方向に流れています。
しかし、こちらのT字部分になるとワケが違います。
水はうねり、泡立ち、幅がせまい方の川では水カサが増しています。
細い水路に入った水は、幅の広い部分よりも水位があがっているのがお分かりになりますでしょうか。
よく台風になると、堤防が決壊して水が溢れ出たニュースなどを見かけると思います。
堤防は、川が増水した際に水をせき止めるために計算をしてつくられていますが、その人間の計算を自然ははるかに超えて猛威をふるうことが。
写真からも分かるように、水は障害物があったり、川幅が狭くなったりするとそれだけで予測とは違う動きをするのです。
この水の動きが、雨漏りが発生している家壁の中でも起こっています。
壁の中はまさに、雨の川が流れている状況です。
さらに水には形がないため、どんな隙間でも入り込み雨漏りを引き起こします。
ですから屋根の縁切りなどをしていない場合に、水が屋根内部に溜まり、逃げ場所を求め防水紙の後ろに入り込み、木部を腐らせたりするのです。
また家の雨漏りは、何も雨だけが原因でないことも。
水は形を変えることができるため、湿気となって家の壁の中に入り込み、その入り込んだ湿気が冷やされることで、霧状だったものが水へと姿を変え、雨漏りの原因となることもあります。
合わせて観たいYouTube
雨漏りは、どの段階で雨漏り工事をするかというのも悩みどころです。
先日も雨漏りの工事を終え、なんとか連日の雨でも雨漏りは止まっていたお宅がありました。
ジャージャーと水が噴き出していた箇所の雨漏りは止まったのですが、先日の台風時に少し壁紙にシワが入ったのだそうです。
台風の影響でどこかから湿気が回り、壁紙にシワを寄せていると思われるのですが、水は垂れていません。
考えようによっては、台風の風によっていつもとは違う箇所から湿気が入り込んだことが原因のため、今後は起こらないかもしれないのです。
雨漏りが常時おきる条件としては、「水みち」という水が通る道ができることで雨漏りが起こりやすくなり板や柱や壁などを腐食していきます。
しかしこのように『たまたまの条件』で出た場合、台風が終われば壁の中が乾燥して湿気が解消されることも……。
ですので、今回はお客様と相談をして屋根裏を開けるなどの工事はせずに様子をみることにしました。
壁の中は、例として紹介した川のように本当に人間の考えを上回るような水の動きがあります。
こうした状況を知ることで、雨漏りの起こる過程を知って頂けたら幸いです。
台風時の足場シート巻き上げについて
次に紹介するのは、工事の際に足場を覆うシートです。
周りに塗料が飛び散るのを防ぐ他にも、防音性のあるシートなどもあります。
このシートですが、台風時には風の影響を受けないように巻き上げ作業が必要です。
上の写真をご覧ください。
上部のみ巻き上げがしてあるのですが、これはこの建物がRCの建物で、足場を組む際にアンカーといって足場の接続部分を直接建物の壁に打ち込むため、足場が風の影響を受けにくいのです。
それですので、上部だけ風を受けないように巻き上げれば台風でも耐えることが可能となります。
ただ、私達のような営業にはこの建物がRCだと分かりますが、一般のお客様にはこの建物がRCなのかALCなのか分からない方もいらっしゃるのです。
ALCの建物は壁の強度が弱いため、シートは全体的に巻き上げを行わないと、風に煽られたシートが、足場を壁からひっぺがしてしまいます。
そのため、同じように見えるビルだとしても、建物の構造によってシートの巻き上げ方が変わってくることに。
戸建ての家も同じです。
家の状況によって、シートの巻き上げ方は変わります。
たまにお客様で「ネットでこういう風にシートを巻き上げているのを見た」といって、同じ状態にしてほしいと言われることが。
しかしネット上に載っている建物と、お客様のご自宅はRCとALCのように構造が違うためできないことがあるのです。
他にも、同じ構造だとしても環境によってシートの巻き上げ方が変わります。
電線が近くにある家の場合は、きっちりと完全に巻き上げておかないと大事故になりますし、周りにあまり家が無ければ最低限風が通り抜けられる巻き上げ方で大丈夫です。
それ以外にも立場の違いで、変わる仕様もあります。
屋根の瓦などを敷く際に、瓦を屋根の上に積むのですが、台風などが来る時は瓦を下さなければなりません。
これも現場の管理者としては、台風に備えて瓦を下ろそうとしますが、それだけ費用がかかってしまうためお客様としてはなんとかならないものかと考えるのです。
またせっかく瓦を下しても、台風が来ないこともあります。
その為、こうした費用をいちいち計上しないために、『雑塗装一式』や『雑シール一式』といったイレギュラーに対応できる枠を見積もりの中に取っておくのです。
しかし、お客様によってはこの『雑塗装一式』などの、水増ししているように受け取られる方も。
家の塗装では、台風時の瓦の上げ下げもそうですが、壁を塗るために室外機を取りはずすことや、現場調査時には発見できないような箇所に塗装が必要な場合もあります。
それらを余すところなく作業するための費用が、この「雑塗装一式」なのです。
「しかしそんなかかるかどうか分からないものを見積もりにのせられても」とおっしゃる方もいますが、大半の工事ではかならず想定外の作業が発生します。
この費用がないと職人が費用以上の余分な作業ができず、結局お客様の家の塗装工事が中途半端になり、お客様が損をする結果となるのです。
あわせて読みたい
目に見えないからこそ正しい知識が重要
家の塗装は、予測した通りに工事が進むことはまれで、必ず何か想定外のことが起こります。
家の補修箇所は、目にうつる状態がすべてではありません。
内部にはさまざまな要因があり、さらには建物の構造や建て方によっても対応が変わります。
だからこそ、ネット上の情報を自分の家と照らし合わせてしまうことが非常に危険なのです。
僕はいつも不思議に思うことがあります。
例えば中古車を買う時に同じ年式の車が2台あって、一台が20万ほど安かったら、ほとんどのひとが20万安い方の車に「事故車」の可能性があることを疑うでしょう。
しかしこれが家の工事費になりますと、みなさん安い工事費に飛びついてしまいます。
20万も差があるということは、工事内容が大きく変わってしまうことを指し示すのです。
合わせて観たいYouTube
雨漏りをしている場合は、水の恐ろしさを思い出してください。
そしてご自分の家に、どんな工事をしようとしているのか金額ではなく中身を比べて見ることが大切です。
塗装工事から10年後に後悔をしないために、こうした正しい知識を身に着け良質な塗装工事を判断頂ければと思います。