一般的に、和瓦の屋根の寿命は長いといわれています。
しかし実際のところは、瓦自体が綺麗だとしても開けてみると下地がとんでもない状態になっていることがあるのです。
今回は、そんな瓦屋根の状態や屋根工事の話を中心にお話し致します。
瓦屋根の施工方法が法改正されました
屋根工事のお話をする前に、建築基準法の法改正についてお話をいたします。
令和4年1月1日から、建築基準法にて瓦屋根の取り付け方が変わり、これまで番線と呼ばれる細い針金でのし瓦(瓦を薄い板状に焼いてそれを重ねたもの)などを巻いたり、瓦に番線を通した上でモルタルや漆喰で瓦を屋根に固定させていたのですが、今後和瓦については、原則瓦すべてをビス止めすることになりました。
理由の一つとして考えられるのは、令和元年に起きた房総半島の台風です。台風の際に、多くの屋根瓦が飛んでしまい、3年経った今もブルーシートで覆われた屋根があります。
吹き飛んでしまう瓦を少しでも押さえようと、番線ではなくビス止めをする…ということになったのでしょう。
とはいえ、このビス止めにはデメリットもあります。
実は、屋根瓦というのは地震の際には屋根から落ちるように施工されています。
「落ちるように」と聞くと、疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、地震の際に瓦が落ちることによって屋根が軽くなり家の倒壊を防ぐのです。
つまり、ビス止めをしてしまうと地震の際に落ちるはずの瓦が落ちないため、屋根が重いままとなり、最悪家が倒壊してしまう恐れがあります。(計算上は違うかも知れませんが)
ビス止めは強風対策としては良い方法ですが、地震への不安が残る方法なのです。そのため瓦屋根の固定方法は、これからもその家その家に合わせたフレキシブルな対応が必要です。
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雨漏り工事のご依頼から発見された屋根の傷み
今回のお客様は、雨漏りがあったため外壁塗装と屋根の葺き替えでご依頼がありました。
他にもたくさん工事するところがあり、屋根の葺き替えは雨漏りの原因となっている部分の屋根一面のみ行うことに。
外から見ると非常に綺麗な和瓦だったのですが、開けてみると中は写真のような状態でした。
雨漏りをキッカケに瓦を外してみたことで、ここまで下地が傷んでいることが分かったのです。
和瓦というのは、そこまできっちりと屋根に固定がされていないため、瓦と瓦の隙間からゴミや木くずなどが入り混みます。
こちらのお客様も10数年ぶりの葺き替えではあったのですが、それでもチリとゴミが積もり、防水紙が破れているところもありました。
表面は綺麗に見えていても、和瓦の屋根というのはこうした例が多くあります。
先日も別のお客様宅へお見積もりに伺った際に「うちはまだ屋根も綺麗だし18年しか経っていないから」とおっしゃった方がいました。18年といえば、かなりの年数です。
もちろん、瓦の表面は綺麗に見えますが、開けてみれば土やクズで溢れている状態で、ひどい時は、中が腐っていて屋根の上を歩こうにもぶよぶよで歩けない…ということも。
それくらい、屋根というのは見た目では状態の把握ができないのです。
今回のお客様は、瓦の下から現れたゴミなどを取り除き、
防水紙を剥がしてスノコをむき出しの状態にし、その上から野地板を増貼りして屋根の下地を補強した上で防水紙を敷きました。
また防水紙は小口を下に向ける必要がありますので、屋根の頂上まで伸ばした防水紙を反対側の屋根に折り込んで入れることに。
写真を見ますと、反対側の屋根に防水紙を入れるために、上段一列の瓦が外してあることがお分かりになると思います。
瓦は、桟木に引っかけて瓦同士をカチッカチッと連結させているだけなので、このように簡単に外すことができるのです。
さらにこちらのお客様宅では、傷んでいた棟瓦も交換しました。
棟瓦を取り除き、のし瓦を撤去した上で土台を作り、
写真に写っている黒いブチルゴムのシートをのし瓦の代わりに巻き付け、
最後は改正された建築基準法通りに棟瓦をビス止めして完成です。
本来、のし瓦というのは屋根の動きに対応するために、薄い板状の瓦をジェンガのように積まれています。
ただ積んであるだけなので、屋根が大きな動きをした際にはこののし瓦が動き、ほかの瓦への衝撃を吸収するのです。
このようなのし瓦の役目をさせるため、屋根の動きについていきやすいゴム製の建材セレクトとなりました。
今回は一面だけの屋根の葺き替えと、棟瓦の交換でしたので和瓦のままでしたが、最近では地震のことなどを考え、ジンカリウム鋼板などの軽量で屋根材として使用できる金属板に交換するかたもいらっしゃいます。
金属板は屋根材として地震の際にも、和瓦よりも軽く頑強なため安全性が高いと言われている素材です。
和瓦には持ちがいいという良い点がありますが、重さや落下の際の危険性など欠点もあります。
欠点を補うことで、はじめて建材の持つ良さを引き出すこともできるのです。
屋根工事は非常に費用が高く、なかなか思い切ることができない部分ですが、放っておけば工事費用はどんどん高くなります。
だからこそ、欠点を補うためにきちんとしたメンテナンスが必須となるのです。
屋根だけではなく、家の外壁や破風などさまざまな部分で言えることですが、見た目には綺麗だけれど中は傷んでいる箇所というのがよくあるのです。
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見た目が綺麗だから大丈夫ではない…家の外壁や屋根の状態
実は、建築材料や建築方法で『完璧』な建材や施工方法というものはありません。
必ず良い点がある一方で、欠点があるのです。
補修工事やメンテナンスというのは、この欠点をどうやって補うか…という工事です。
家にも車の車検のような制度があれば、もっと多くの人が定期的に検査をしてメンテナンスができるので雨漏りなどのトラブルに見舞われないで済むことでしょう。
しかし、現状では家を建てたあと何年で点検をしなければならないという制度はないのです。
だからこそ、一人一人が家についての知識を持ち、メンテナンスを正しくすることが大切といえます。
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メンテナンス工事で気をつけて欲しいこと
メンテナンス工事の際に、是非気にして頂きたいことがあります。
それは、工事を依頼する業者が専門業者かどうかということです。
塗装業者にお願いすれば、専門の業者に頼めたと思う方が多くいらっしゃいますが、実はそうではありません。
家の塗装工事というのは、多くの専門職人によって一つの工事が行われます。
例えば、塗装は塗装の職人ですし、足場は足場職人、シールはシール職人、屋根は屋根職人、屋根板金は板金職人、モルタルは左官職人と、それぞれに専門の職人がいて、こうした各箇所の仕事をきっちとすることで完成するのです。
専門の職人を手配しますので、通常の工事ではそれなりに人件費もかかるのですが、安い見積もりを出す工事はこの人件費をケチります。
つまり、塗装の職人が簡易的な足場を組んだり、ホームセンターで買った材料などでシール工事をしたりするのです。
もちろん専門の職人ではないので、仕事はそれなりになります。見た目では取り繕うことができますが、たとえ何か専門外の部分に問題があっても気がつかないことや、施工が不十分な場合も。
塗装工事には、適正な価格というものがあります。
工事費が極端に安くなっている場合は、必ずどこかにごまかしがあるのです。
ですので、メンテナンス工事をしようと考える際には、上記に上げたようなそれぞれ専門の職人が担当する業者に依頼するとよいでしょう。
そうすれば、今回のように瓦の下が大惨事になっていても適切な処置をすることが可能となるのです。
先ほども言いましたが、建築や塗装の材料において、良い点だけを持つ材料はありません。
必ず何か欠点はあります。
そこをうまくバランスをとるために、定期的に家をメンテナンスする必要があるのです。
家を守れるのは、家主の方以外にはいません。
一生のうちで一番大きな買い物である家だからこそ、しっかりとした管理が必要です