本年も大変お世話になりました。
さて、今年最後のブログは、外壁の改築工事についてです。改築工事を考える前に、是非読んで頂ければと思います。
先日ご連絡を頂いたお客様は、とにかく雨漏りがひどい…とのことでしたので、まずはお宅まで伺いました。
お客様宅に到着して、壁面を拝見させて頂いたところ大きなヒビが…。しかも壁の内部から、一部分だけ四角い状態で壁が盛り上がっていて、ちょうど雨戸を収納する戸袋のような形です。
お客様に伺ってみると、やはり戸袋を取り外してその部分にモルタルを塗りこみ塞いだ跡とのことでした。
通常壁の中は、木材などが入っていてモルタルを支えるのですが、改築工事をした元戸袋の壁は、あるべきものが無いために、モルタルが前に出てきてしまっています。
増築や改築で外壁につなぎができた影響で段差などが出でしまい、クラック補修も跡が出やすくなってしまいます。
増改築で外壁につなぎと段差ができたクラック補修(Facebookアルバム)
通常、こうした施工は建築士が構造計算をし、左官工がそれに沿ってモルタルを塗りこみ、塗装の職人が最後仕上げるのですが、どこか計算がくるってしまったのか、それとも家の揺れに耐えきれなかったのか…とにかく塗りこめたはずのモルタルが浮き出てきてしまったことで、壁にヒビが入り、そこから雨水が侵入し雨漏りになっているようでした。
ちなみに「家の揺れ」とは、地震や、トラックなどが通る時の振動による揺れのことです。これらの原因によって家は揺れるので、揺れを予測して壁の施工することが必要となります。
モルタルはもちろん、コンクリート・タイルなどのひび割れや浮きを補修する専門資格です。活躍の場は主に、マンションやビルのひび割れや爆裂、浮きの補修ですが、こういった劣化補修に精通している証と言ってもいいかもしれません。
このお客様のお宅は、もともと窓枠や戸袋が木でできているタイプのお家で、木が腐るのを恐れ、ペアガラスの窓に改築したのだそうです。
この木枠の腐食を抑える方法は、他にも板金で木枠などを包み込むというタイプもあるのですが、お客様は金額の高いペアガラスの改築を選び工事をされました。
実は一時期このペアガラスが流行り、戸袋などを壁に埋めてしまうお宅が増えたのですが、モルタル壁のお客様の場合、埋めた壁の部分がうまく外壁と馴染まず、ヒビが入ってしまう場合が…。
うまく行く場合もあるのですが、その場合もこの写真のように塗料の盛り上がり部分が残ります。
逆に板金で窓枠などを包んだ場合は、木枠を残すものの、こちらのほうが壁に余計な負荷がかからないため、年数が経っても木が腐りにくく長持ちします。
金額の高い工事を選んだのに、その工事のせいで10数年経って雨漏りの原因になってしまうなんて…皮肉としか言えません。
なぜ、このようなことが起きるのか。原因の一つは建築業の最大のウィークポイントである、工事がリレー形式であることです。
建築士、左官工、塗装職人の3人がお互い意思疎通をすることなく、個々に勝手な作業をすると、必ずどこかにヒズミが生まれます。
大手施工会社であれば、建築士、左官工、塗装職人が1つの会社に所属しているイメージなので、意思疎通が取れているように思う方もいらっしゃるかと思いますが、実際はそれぞれの下請け会社が作業をしているので、バラバラの作業になります。
営業なり、現場監督なりが管理をきちんとして、現場をまとめれば統一した工事をすることも可能なのですが、全体を見ずに寄せ集めの工事をすると、「繋ぐ工事」にならないため、一個一個の施工は良かったとしても、トータルで見た場合に工事はうまく行きません。
今回の外壁の割れも、改築工事の際に管理していなかったのか、下地が悪いためにおこってしまったようでした。
これまでのブログでもお話しましたが、下地が悪いとどんなに良い塗装をしてもカバーすることはできないのです。
このヒビ割れについて、お客様からは「なんとかしてほしい」「割れ目の補修をしてミミズが這ったような壁になるのだけは避けたい」とリクエストがあり、弊社でできる施工をご説明させて頂きました。
提案させて頂いたのは以下です。
下地:
割れている箇所を切って、さらに平行に切れ目をいれてコーキング剤をいれ、揺れの動きを壁の中で吸収できるようにする。
さらに、補強布(ガラスクロス・無機素材)を防水材で張り込む。
塗り:
下塗り:(塗料メーカー)
中塗り1:肌合わせ 防水剤(防水メーカー)
中塗り2:塗料の防水材で、下地の跡を隠すための模様付けを壁全体にする(塗料メーカー)
上塗り1:防水材に特化したもの ※価格が少し高い(塗料メーカー)
上塗り2:(塗料メーカー)
壁の中にコーキング剤を緩衝材代わりに入れ、揺れに対応できるようにし、さらに雨漏り除けで防水処理を施し、なおかつ防水材と塗料材を織り交ぜて使っていきます。塗りも5回行います。
この工事の最大の難点は、防水メーカーと塗料メーカーの材料を、それぞれの会社が提案しているのとは違う、イレギュラーな使い方をすることです。
通常であれば、防水メーカーなら防水メーカーだけ、塗料メーカーなら塗料メーカーだけの材料を使うところを、他社の材料を「合わせ技」的に使うため、この施工には保証がつけられません。しかもこの工事で、雨漏りが100%止まるとは言えないのです。
このことはお客様にもお伝えしました。
お客様は、僕の提案を聞いて「この家にはこの改築工事で家一軒建つくらい費用をかけてしまったのに…こんなことになるなら建て直せばよかった…」とおっしゃっていました。
今回提案させて頂いた工事も、300万くらいかかります。下地の工事が無ければ、それだけで100万くらい安くなっていたでしょう。
ヒビ割れを補修した跡を隠す必要がなければ、塗装中の模様付けも必要ありませんでしたし、最初の戸袋を埋める際にしっかりと対応していれば、このような工事内容にはならなかったはずです。
家の改築や塗装は、施主様の方でも知識がないと、後々にトラブルを引き起こす場合があります。
この戸袋の改築工事も、もう少しモルタル壁の特性が分かっていれば、このような工事はしなかったでしょうし、お客様に信頼できる「かかりつけ医」のような業者がいれば、雨漏りは起こっていなかったかもしれません。
このブログを読む方々が、少しでも知識を蓄え、家に合った塗装や改築をされますように参考にして頂ければ幸いです。
クラックの幅だけでなく無数にあった6年前はひびだらけでした。
参考記事: