もくじ
前回のブログの続きです。
店舗塗装のご依頼を頂き、いよいよ工事となりました。
今回の店舗塗装は、本当に外壁塗装工事とはすべてが違います。
基本的に外壁塗装は「家を風雨などから守ること」を主軸に考えた工事です。そのため、塗膜の厚さや塗料の持ちに重点を置きます。
しかし、店舗塗装の場合は見た目や仕上がりのイメージに重点を置いて工事をするため、塗料の持ちなどは後回しです。
それよりも、仕上がりの質感や色合いにこだわるため、メーカーの塗装方法を無視した工事になることもあります。
今回は、そんな店舗塗装の仕上げ工事についてです。どうぞご覧ください。
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打合せ後の現地打合せ
前回のブログでは、現場調査を2回行ったことをお話ししました。
現場調査2回のうち、最初はいわゆる現場調査を。そして2回目は店舗内の2か所で試し塗りをして塗料の色決めのための現場調査を行いました。
試し塗りの際に各所の色味を決め、図面に細かく書き込んだのがこの写真です。
この書き込みは、それぞれの壁をどのメーカーのどの塗料でどう塗るのかを書いてあります。
建築士の先生(以下:先生)の立ち合いで、すべての色を決めたのですが、塗る場所ごとに色や塗り方を変えるため図面に細かく詳細を書くことが必要でした。
その図面を持って、現場での最終打ち合わせをします。
曽根社長の甥である曽根カズ職人とそのチームが揃って、塗装箇所の確認をしました。
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養生テスト
塗装を始める前に、最後の確認として養生テストを行います。
今回は塗る箇所と塗らない箇所、そして色が違う箇所など…細かく塗装箇所が分かれているため、塗らない箇所への養生は必須です。
しかしこの養生を貼るためのマスキングテープで、元の塗装が剥がれてしまうことがあります。
万が一剥がれてた場合にはタッチアップ(部分塗装)で補修しますが、タッチアップしたとしても塗膜が剥がれた部分には凹みができてしまい、平らにすることができません。
そこで施主様に状況をご相談し、まずは1か所だけ養生テストを行うことにしました。
マスキングテープの中でも、一番粘着力の弱いテープを使って試し貼りをします。
結果、塗料は剥がれませんでした。
これでようやく塗装前の準備がすべて整いましたので、養生後に工事スタートです。
併せて観たいYouTube 塗装職人が語る養生
壁のパテ補修
今回の工事では、全体的に古びた感じを出すために、ささくれだった木部や壁の隙間などのケバ取りなどはせず、そのまま塗装をしていました。
しかし、1か所だけ補修工事をした箇所もあったのです。
それは玄関入ってすぐの壁でした。
ここには、もともと大きなステッカーが壁に貼ってあったのですが、ステッカーを剥がす際に壁の塗膜が剥がれてしまったのです。
さらに悪いことに、ステッカーに印刷された文字が壁面に色移りしていました。
そこで、パテ材で補修をしてから下塗りをすることのご提案を。
最初は先生から、「僕が現場に来ている間に何度か重ね塗りをするから、パテ補修はいらないんじゃないか?」と回答がありました。
しかし薄い色を塗り重ねる場合、下の痕が透け出ることもありますし、何度も塗り重ねることで表面が割れることもあります。
このような理由から、「壁の痕を消すために塗り重ねはおすすめできない」とお伝えしたところ、「それならパテで補修しよう」となりました。
こちらの写真は、パテ補修後塗装を施し、仕上がった壁となります。
痕がなにもわからないほど、きれいに仕上がりました。
ここまで、現地打合せ、養生テストを終えて、工事に入ったところまでお話し致しました。
このあとは、いよいよ塗装工事についてです。色分けを細かく記した図面を見ながら、工事をスタートします。
実は今回の工事でも、1回トラブルがありました…。
弊社の職人がやってしまったミスなのですが、そちらについても詳しくご説明致します。
併せて観たいYouTube 室内塗装の下地調整
各部の塗装工事
こちらの写真は、図面の指示に合わせて店内を塗っているところです。
見てお分かりいただける通り、今回は本当に細かく塗り分けをしました。
場所によっては、淡い色味を出すために極限までシャバシャバの状態に薄めた塗料で塗っている箇所もあります。
あまりにも塗料の希釈濃度が薄いと塗料の強度は下がりますし、塗料会社がだしているルールと違う塗り方をすればメーカー保証がつきません。
これらのデメリットについて、すべて施主様と先生から許可を取り、塗料の効果を引き出す塗装ではなく、店舗内を理想通り美しく仕上げる塗装を中心に行いました。
レンガ調の部分も、もともとは白色でしたが、反対色の濃いグレーで仕上げています。
今回は2回塗りですので、剥がれた場合には下地の白が見えてしまいますが、そちらも先生としては、あえてそのままにしてほしいとのことでした。
またフローリングもケバなどは取らずそのまま塗装を。
こうして、室内のデザイン性に沿った塗装工事が終わりました。
工事中のミス
冒頭でもお話ししましたが、今回の工事中も1回ミスがありました。
現場に入った曽根チームの若手職人が、通常の外壁塗装の下準備と同じように、ボンドコークで壁の隙間を埋めてしまったのです。
職人が壁の隙間を埋めていることに気が付いた先生は、あわててストップをかけました。この隙間は、デザインとしてあえてあけたままにしているものだったのです。
ケバ取りをしないで塗っている床と同様。あえて3ミリの隙間を残してレトロ感をだした壁でした。
たしかに通常の塗装でしたら、隙間をあけておくということはしません。水などの浸入も怖いため、必ず下塗り前に隙間を埋めます。
しかし、今回は仕上がりを優先する店舗塗装です。
その周知がうまくいっていないために、起きたミスでした。
先生からお叱りを受けましたが、僕としてはお詫びすることしかできません。
埋めてしまったところを取り除いても、隙間の絶妙なニュアンスを戻すことができず、本当にこの伝達不足を後悔しました。
ここ以外は、きちんと予測を立てて問題になりそうな箇所を回避しながら工事ができたので、全体的にはうまく行きましたが、本当にこのミスだけは残念でなりません。
併せて観たいYouTube 店舗内の木製カウンター
検査と仕上がり
最後は曽根カズ職人と先生が立ち合い、検査をしました。
完工検査ではありますが、今回は職人が作業をしている間ずっと先生が立ち会ってくださっていましたので、細かいタッチアップのみで大きな補修はありません。
実はこの日、僕は少し遅れて行ったのですが、予定よりもずっと早く検査が進み「松尾さんもう終わっちゃうよ?」と先生からご連絡が入るほど、スムーズな完工検査でした。
今振り返っても、今回はとても難しい現場だったと思います。
いつも以上に色味やイメージを大事にする現場でしたので、普段のようにセオリー通りの工事をしても、良い仕上がりにはなりません。
できるだけ施主様の意見、先生の意見を聞いて、その中でベストな工事をすることが大切でした。
そのために、何度も打ち合わせをして情報を集めたことで、施主様のニーズを引き出せたと思います。
メーカーに推奨されてない塗り方をした箇所もありましたが、これらがなんとかまとまったのは、先生のおかげです。
先生は無茶を言う代わりにリスクも引き受け、収めるところは収めて下さいました。
曽根職人とも話していましたが、本当に勉強になった現場だったと思います。
この経験値のおかげで、今後もさらに良い塗装工事ができそうです。