サイディングの傷み 予想外の原因に対応するには

先日お客様から、サイディングの傷みについてご相談がありお伺いしました。
家の外壁を拝見してみると、『凍害(サイディングの下地に胴縁を入れていない時に起こる症状)』の状況とよく似ています。

そこで、工事をしようと壁を剥がしたところ、まったく別の原因が判明したのです。
今回は、家の塗装でよく遭遇する予想外な仕様についてと、その工事方法についてお話し致します。

方法は千差万別 ひとつではない家の建て方

戸建てというのは、建て方が千差万別です。
車や精密機械のように、同じ材質や同じ構造のものであれば、修理の仕方も決まりがありますが…家の場合そうではありません。
ハウスメーカーによって、使っている材料が違う場合もありますし、建て方も一つではないのです。
それどころか、家を手がける職人によって手法も違います。
そのため、雨漏りや外壁の傷みが起こった際に考えられる原因は、あくまでも私たち塗装職人が経てきた現場経験と統計から割り出した予想でしかないのです。
今回のお客様宅は、家の外壁であるサイディングの一部分がボロボロになってしまったため、補修塗装工事のご依頼を頂きました。


通常、このようなサイディングの傷みは凍害が原因ですので、胴縁を入れて工事することが必要と考えます。
お客様も、あまりの傷み具合に「壁を引っぺがして工事をしてほしい」とおっしゃいましたので、気になる箇所のみ壁を剥がして工事をすることに。
すると、中から意外なものが出てきたのです。
それは、モルタル壁用の下地材『ラス網』でした。

実は塗装工事をしていると、こうした予想外な家の仕様に出くわすことはよくあります。
家を建てている途中で、何らかの理由で仕様変更があったのでしょう。
こうしたことがあるため、現場経験のある業者でないと補修工事や塗装の対応が難しいのです。

合わせて観たいYouTube〔ラス網を使用したモルタル工事〕

モルタル壁とサイディング壁では下地材が違う

こちらのお宅は築30年ほどだったのですが、周りには同じメーカーさんで建てた同じタイプの家がありました。しかし、他の家は全てモルタル壁仕様。
どういうわけか、施主様のお宅のみ途中までモルタル壁用の工事をしていたにもかかわらず、仕上げはサイディング壁になっており、こうした不具合がでたようです。

併せて観たいYouTube サイディング凍害の補修

モルタル壁は、壁にモルタルを塗り込むため、ベニヤの上に防水紙などを敷き、ラス網を乗せ、その網に引っかけるようにモルタルを塗っていきます。
ラス網は、言葉の通り金属でできた網です。
そのため、そこまで頑丈な下地材ではありません。
モルタル壁の下地材に対してサイディング壁の下地材は、サイディングボードと透湿防水シートで覆った断熱材との間に空間をあけるため、『胴縁』といわれる枠をいれるのです。
この胴縁を入れることで、内壁とサイディングの間に空気層を作り、水や湿気がサイディングの下を抜けるようにします。

※防水シートの前に並ぶ木の板が『胴縁』

お客様のお宅では、本来であれば胴縁を入れるところにラス網が入っていたため、空気層が薄く、サイディングのボードとボードを連結させる部分がラス網によってしっかりと支えることができず、隙間が空いたことによって水が浸入しているようでした。

予想外の原因は補修の保証ができないという現実

 

工事をするために壁を剥がしたことで、サイディングがボロボロになってしまった原因が分かりました。

外壁の下地材がサイディング用の胴縁ではなく、ラス網が入っていたためこのような状態を引き起こしていたのです。

さらにこの状況から予測できることとして、家全体にラス網が下地として敷かれているため、もしかしたら他にも不具合が出る可能性が考えられます。

しかし、今のところ不具合が出ているのはこの1箇所だけです。

 

これらの事実を踏まえて、ここからは施主様の判断が必要となります。

家全体のサイディングの下に入っているラス網を取り除いて、胴縁をいれるのか?

もしくは一部のみ腐食部分を取り除いて、ラス網の上に防水シートを貼るのか?

施主様は、こちらのお宅を中古で購入されているため、あと何年ほど住みたいかということも大切な判断材料のひとつです。

また、全ての壁を剥がして胴縁を入れ直す工事以外は、工事をしてもメーカーが提案する方法ではないことから保証がつきません。そのため一部分のみの工事をする場合には、保証がつかないことを納得して了承できるかどうかも大事なポイントになります。

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お客様が納得する形で判断頂くためには、あらゆる工事についての情報が必要ですので、できる限り予想される内容をご提示し、ヒアリングをしながら最善策を一緒に探します。

今回施主様は、傷んでいる部分のみを剥がしラス網の上に防水シートを貼り、雨水の侵入を防ぐという方法にしました。

しかし、これも完璧な補修工事というわけではなく、こうしたサイディングの腐蝕は外からの雨水の浸入と、内側からの湿気による水の溜まりが原因で起こる場合がありますので、これはあくまでも外からの水の侵入をふせぐだけの工事となります。

それら全てをご了承して頂いた上で、工事内容が決定しました。

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正攻法だけではできない補修工事

 

お客様宅は、厳密なことを言えば外壁の下地が悪いので、家全体の下地をやり直すのが一番よい方法でしょう。

しかし、全部の壁を剥がして工事をするとなれば500万円以上の工事費がかかりますし、他の外壁ではこうした傷みが出ていないのです。

壁は日当たりや東西南北などの方角、1階か2階かであることなどの条件で傷みかたが変わります。

屋根などにもよくあることですが、大屋根と下屋根では同じ屋根でありながら傷みかたは全く違うのです。

こうした条件の違いで、施主様のお宅も他の部分では外壁の傷みが出ないのかもしれません。

もちろん、今後他の箇所に不具合が出ることもあるでしょう。

しかし、全体を直すのではなく傷んでいる部分のみを直す。これも施主様の選択肢の一つなのです。

 

先日も、他のお宅ですがやはり凍害の症状がでている外壁がありました。その家も、サイディングの表面だけ補修することに。

凍害が起こっている原因が、釘穴から入っている水とも考えられたので、外からの原因をつぶしたのです。しかしこの場合は、また中からの湿気で凍害が起きた場合は保証外となります。

そういう話をご納得して頂いた上で、工事をするしかありません。

 

合わせて観たいYouTube 〔サイディングの湾曲修正とクリヤーフッ素のアパート塗装〕

 

家は建て方が一つではないため、その補修方法も多岐に渡ります。

だからこそ、マイナス部分とプラス部分を天秤にかけて、その時にかけられる費用でできることを選んで頂くしかないのです。

 塗装職人ではお客様にご納得頂ける方法をお選び頂く為に、これからもすべてをさらけ出してご提案をいたします。

その中で、最善の策をとることでお客様の家を少しでも持たせることができれば幸いです。

 

見積りで大切なのはお客様宅を把握すること。ご要望をうかがい図面を精査し、最適な工事を提案します。高い技術とサービスをご納得いただけるよう、いつも心がけています。施工管理技士でもあります。

些細なことでも構いませんのでお気軽にご連絡ください

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