もくじ
今日はスレート屋根の縁切りについて。
今年はいつもよりも暑く感じており、スタッフや職人一同より熱中症対策には力を入れて過ごしています。
今回は、そんな暑い夏の作業の中でもさらに過酷なその縁切りの屋根作業についてのお話です。
屋根塗装をした際に、縁切りをする…という話が必ずでるのですが、タスペーサーを入れるかどうするかでお客様が悩まれることがあります。
実は塗装職人の工事では、あまりタスペーサーを使いません。
なぜ使わないのかなど、お話したいと思います。
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屋根はなぜ縁切りが必要なのか
まずは、屋根に縁切りが必要な理由についてお話します。
屋根塗装をする際に、塗料を端から端まできれいに塗り上げると、屋根と屋根の重なりである水はけの出口が塗膜で塞がってしまう場合があります。
塗膜で塞がってしまいますと、屋根の中に入った水の排出口がなくなり、雨水がたまり、そのせいで雨漏りになることがあるのです。
それを防ぐのが、塗装後におこなう縁切りとなります。
縁切りは、どのような家だとしても屋根塗装をした場合には必ず必要な工事なのです。
タスペーサーの問題点とは
上記で説明しました縁切りですが、さらにこの縁切りを強化するために使うアイテムがタスペーサーです。
最近ではネット上でも詳しく紹介されていますし、テレビCMなどが流れる地域もあります。
しかし、このタスペーサーは使用方法に注意が必要なのです。
タスペーサーのお話をする前に、まずは屋根材について軽くお話しいたします。
2006年を境に、屋根材の強度は大きく変わりました。
こう書きますと、まるで現在は強度が上がったように思いますが、実はその逆なのです。
2006年以前はセメントを薄くのばした化粧スレートにアスベストの繊維を入れて軽く強い屋根材でしたが、人体への被害などから2006年にアスベスト使用が禁止され、それ数年前から各メーカーはノンアスベストの屋根材に変更しました。
1990年代は、新しいノンアスベスト屋根材だったため非常に割れやすいものが多く、2010年代に入ってようやく割れにくい屋根材になってきた印象です。
それでも、アスベストが入っていたころよりは強度が弱い印象があります。
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これらを頭に置いた上で、タスペーサーの話をしましょう。
タスペーサーは屋根と屋根の隙間を空けるために差し込むアイテムとなります。
その分屋根が浮き上がりますので、屋根の上を歩いた時には屋根が割れる可能性が出てくるのです。
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たまに、塗装工事が終わり屋根上の例えば、アンテナに不具合があったことで屋根に上ったら、タスペーサーで浮き上がった部分を踏んでしまい、屋根材が割れてしまったということもありました。
タスペーサーを付けた今回の塗装工事はいいものの、また10年後塗装をしたとき、苔も砂ぼこりも蓄積された状態ではタスペーサーを付けた場所もわかりにくくなっいているため、よく確認しながら施工しなければ上を歩いて割ってしまう可能性があります。
もちろん一番理想なのは縁切りしなくとも初めからスレートの重なり部に隙間が空いている屋根です。
これは個体差というべきかもしれませんが楽に10円玉が入る隙間があるスレートもあります。
弊社では、しっかりとして縁切り作業をしますので最初の塗装工事であれば、タスペーサーはおすすめしていません。
2度目の塗装工事の際には屋根の状態によっては使用することもありますが、基本的にはタスペーサーによって屋根に隙間をあけて屋根が割れる可能性を避けたいと思っています。
もちろん、お客様の要望で「縁切りをすれば大丈夫なのはわかるけれど、どうしても不安だからタスペーサーも付けたい」とおっしゃる場合には対応いたします。
ただ、その際にはタスペーサーのメリットデメリットをしっかりと押さえていただければ幸いです。
職人の技術が必要な縁切り作業
塗装職人の縁切りは、ベテランの職人が行います。こちらの動画をご覧下さい。
屋根一枚一枚に対して、このような長いヘラをさしこみます。
屋根の広さが70平米の場合、150枚〜160枚ほどの屋根板があるのですが、その1枚1枚に縁切りを施すのです。
以前、縁切りに工事費用がかかることから「屋根の隙間にヘラを入れるだけならできる気がするから、こちらでやるよ」とおっしゃるお客様がいらっしゃいました。
3日ほどかけて縁切り作業をしたのですが、結局お客様は、腰を痛めてしまい「自分でやるんじゃなかったよ」と後悔を……。縁切りは、簡単そうに見えて非常に技と手際のいる作業です。
そもそもが勾配のある屋根に上って、長時間作業をすること自体が大変です。
職人であれば、半日ほどの作業となり、安全対策としてヘルメットを装着し、ハーネスをつけ、その状態で作業をします。
併せて観たいYouTube スレート屋根の縁切り
さらに、ヘラを単純に差し込んでいるように思いますが、塗膜を破るのと同時に、屋根と屋根の隙間にたまった塵やほこりなども取り除いているのです。
また慣れない職人や、素人の方がこの作業をすると、屋根先を傷つけてしまいタッチアップなどの手間がかかってしまいますが、熟練の職人の場合には傷をつけることはほとんどありません。
工事をしない人からみると、たった半日でおわる作業なのにこんなに費用がかかるのか…と思う方もいらっしゃいますが、この半日にはこれまで職人が培った技術や経験が凝縮されているのです。
タスペーサーを使用しなければならない屋根塗装
屋根塗装には一般の塗料から遮熱塗料など様々なものがありますが、中でも使わなければならないものが断熱塗料です。
断熱塗料は肉厚をつけてこそ断熱効果が発揮されるため縁切りは屋根の個体差を上回って重なり部が埋まる可能性が高いためタスペーサーを使うことが多くなります。
水切りカッターやカワスキで隙間をあけるだけでは、太陽熱などの影響で重なり小口の塗膜が柔らかくなって徐々に塞いでしまうことにもなりかねません。ただあくまでも現場状況次第にはなります。
塗装職人では塗装の技術だけでなく、あらゆる工程にプロフェッショナルを求めます。
外壁塗装のことで工事をお考えでしたら、是非ご相談ください。
家に極力負担のない方法で、家を守るための塗装工事をいたします。