10月からの法改正で工事の費用が変わる 屋根工事の現状について

今度の10月から屋根工事においてさまざまな価格アップがありそうです。
というのも、『労働安全衛生法』の改定が決まって、よりアスベストの撤去や職人の労働環境についての安全性が厳しくなります。
今回はどんな種類の屋根の工事が厳しくなるのかなどのお話です。

屋根工事 和瓦の場合

工事を決める際に、多くのお客様は値段を見比べて決めていらっしゃいます。
そしてネットで塗装工事や屋根工事について検索をして、できるだけ安く良い工事を選ぼうとされるでしょう。
僕からすると、こうしたネット記事は一方向からの視点では書かれているのですが、他の視点がなく非常に危険だと思っています。

たとえば、和瓦の屋根についてです。
みなさんは、2019年の台風15号が千葉県にもたらした甚大な被害を覚えていらっしゃいますでしょうか?
多くの家の瓦が吹き飛ばされ、ブルーシートの屋根で辺り一帯が埋め尽くされるほどでした。
この台風がきっかけに、瓦屋根のボルト付けが定められるようになったのです。

これには、良い点と悪い点があります。
そもそも和瓦は瓦と瓦をはめ込むようにかさねて、それを番線とよばれる針金でくくるだけで屋根上に取り付けられています。
これは地震が起きたときに瓦が下に落ちて屋根を軽くすることで、家の倒壊を防ぐための工法です。

あわせて読みたい 瓦屋根は見た目が綺麗なら大丈夫?

瓦屋根は見た目が綺麗なら大丈夫? 気をつけたい家の外壁や屋根の状態 

しかし、台風の際にはこの方法だと屋根瓦が吹き飛んでしまう…。
統計を見れば、地震と台風であれば、台風の方がはるかに発生頻度は高いので、ボルト止めすることが義務化されたのです。

しかしこのボルトも付ける位置を間違えると、雨漏りの原因となってしまいます。

さらに、ボルトで固定したことによって、地震の時にどのような作用が起きるのかは誰にも想像がつかないのです。
良い効果を期待して義務化されたものが、実は弊害の原因になってしまうことはよくあります。
瓦屋根の工事方法が変わることで、これからある意味予測のつかない状態になるのです。

併せて観たいYouTube 屋根瓦のズレを補修する

さらには、これまでと工事の価格も変わります。
もしも、瓦1枚1枚をボルトで留めることがあれば、屋根を補修する際もこれまで以上に費用がかかってくることでしょう。(現状は棟部分)
今後和瓦屋根の補修工事を考えていらっしゃる方は、頭の隅に置いておくことをおすすめします。

これは余談になりますが、和瓦屋根の場合…補修工事しようにもどうしていいか分からない場合も。
こちらの家は、和瓦の上にソーラーが乗っていて、ところどころ瓦がずれているため、非常に屋根が不安定でいつ崩れてもおかしくない状態です。

こうした家の場合、屋根を直すにしても瓦を組み直すには大がかりな補修が必要になりますし、ソーラーが乗っているのでこれを外すことから始めることに……。
これは思っている以上に費用がかかります。
葺き替えするには、瓦もソーラーも下ろさなければならないですし、カバー工法もソーラーがあるのでできません。

ある意味屋根としては、非常に危険な状態なのに、相当な費用を覚悟しなければならず手も足も出せない状態といえます…。
屋根の工事をするときは、必ずその後に補修することを念頭におくことが大切です。
いざ補修しようとした時に、手も足も出せない状態では仕方が無いのですから。

屋根の工事 スレート屋根(ノンアスベスト)の場合

次にお話しするのは、もっと深刻な『アスベスト』についてです。
まずは、ノンアスベストの屋根材のことを少しお話しましょう。
これは以前から僕のブログでもお話していますが、2006年に発がん性物質の含むアスベストを含む部材の使用が禁止となり、ノンアスベストの屋根材が出てきました。
パミールやコロニアルネオなどが初期のノンアス屋根材としては有名なのですが、それらの屋根材には屋根が層に分かれ反り返り剥がれてきてしまうという症状があり、ここ数年で多くの補修工事依頼が来ています。

これらの工事についても、労働安全衛生法が変わったことで足場工事の基準などが変わったことにより費用が変わってきているのです。
補修方法としては、カバー工法か葺き替えがほとんどですが、このカバー工法と葺き替えについてお客様によくある勘違いが……。

カバー工法をご提案しますと、屋根の上にかかる重量を気にされる方が多いのですが、実は屋根を葺き替える際もコンパネの増し貼りが必須となり、この張り替えるコンパネも12ミリのラーチ(針葉樹の板)なので以前の下地材よりも重量があるものなのです。(貼らない方もいらっしゃいます)

併せて観たいYouTube 重い瓦を7分の1の軽量屋根に葺き替え

つまり吹き替える場合は下地材の重量が、カバー工法の場合はカバー用のスレートに重量があるため、そうした意味では葺き替えもカバー工法も重量だけでみればそこまで大差はないと言えます。
もちろん、カバー工法にはカバー工法の利点と欠点、そして葺き替えにも利点と欠点があるので、この先10年のことを考えながら、どちらがお客様宅に向いている工事かをご相談頂ければ嬉しいです。
必ずお客様が最良の決断ができるように、できる限りの現場経験と知識でサポート致します。

ここまで、瓦屋根の屋根工事の現状と、『労働安全衛生法』による工事費用の値上がりについてお話しいたしました。
ここからは、『労働安全衛生法』、そして『石綿障害予防規則』の改正による、工事費用の変化についてお話し致します。

特にスレート屋根には、アスベストの問題があるのでより工事費用の値上がりに関わってきますので必見です。どうぞご覧下さい。

今回の法改正で一番困るのは、アスベストを含有している屋根材です。
屋根本体もそうなのですが、下地材や吹きつけ石綿、断熱材などいろいろあります。
またアスベストの怖いところは、タイルや瓦には含まれていなくても、接着剤などに混入されている場合もあるのです。
アスベスト含有建材はレベル1からレベル2、レベル3とあり、それぞれによって対処方法が異なります。

(写真はイメージです)

しかも、10月から『石綿障害予防規則』が改正され、工事開始前の石綿有無の調査が必要となることに。
工事対象となる、全ての部材について石綿含有があるかどうか設計図などを元に調査することが義務づけられ、調査のために1検体を取るのに2~3万かかり、その検体を最低でも2~3カ所から採取をしなければなりません。
その調査後、アスベストの含有が確認された場合は、除去もしくは封じ込めをする必要がでてきます。

しかし、この除去にはさまざまな問題があるのです。
というのも、屋根材を剥がしたり、部材を撤去したりする際に粉状になったアスベストが飛び散ってしまうと被害がでてしまいます。さらには産廃費もかかるため、処分費用は高額となるのです。

事例として、以前こんなことがありました。
現在では含有率は石綿をその重量の 0.1 %を超えて含有するものの使用は禁止されています。

それらを守った上で、防護服などを着て作業している作業員の母親にアスベストの健康被害が出たことがあったのだそうです。
現場で着ていた作業服を母親が洗濯をしていたのですが、その作業服に付着したアスベストを一定期間に亘って吸引したことで健康被害が出てしまったのだとか…。
それくらい、アスベストはわずかな粉でも蓄積されると被害がでます。

あわせて読みたい ノンアスベスト屋根はカバー工法か塗装どちらで施工?

ノンアスベスト屋根はカバー工法か塗装どちらで施工?正しいカメラ調査と診断

これらの理由から、アスベストの撤去作業や封じ込め作業をする場合には、アスベストが付着した防護ネットは捨てる必要があり、その後さらに新しく防護ネットを貼る必要がでます。
そのため、アスベスト作業をする際の防護ネット1枚目はお客様の購入となるのです。
ここでも追加で費用がかかることとなります。

10月からの法改正は、どれも安全性を確保するために定められたものではありますが、ここまで工事の費用に直結して来るのです。

屋根の工事 スレート屋根(アスベスト含有)の封じ込めの場合

ここまで撤去のお話をしましたが、撤去するにも粉塵となって広がってしまう場合や少しでも費用を抑える場合は、撤去ではなく封じ込めをします。しかし封じ込めにはまた違うデメリットが……。
アスベストを保持したまま封じ込めるため、建物の資産価値は下がることになります。
どちらを選ぶのかは、お客様次第ではあるのですが、どちらにしても100%スッキリとした解決策になることはありません。

2006年より以前は、軽く丈夫で安く非常に使いやすい建材として扱われていたアスベストが、こんなに問題を起こしてしまうなんて。当時は思いもよらなかったことでしょう。

(写真はイメージです)

しかし、建材や部材には、こうしたことがよくあります。
ですので、僕の場合新製品を率先して使うことはありません。
メーカーや部材の卸業者と連絡を密に取り、現場の情報を集めて実績のあるものを使用します。
少しでも、お客様の家のためになるようにしたい…と心底思うからです。

法改正から来る費用の値上がり 現状を知ることの大切さ

今回は10月からの『労働安全衛生法』の改正や『石綿障害予防規則』の改正で起こる、工事費の値上がり理由についてお話しました。
さまざまなお客様が、ネットで情報を収集され工事費の目安をつけ、新商品の利用を望んでいらっしゃいます。
しかし、ネットの情報は一方向の良い点しか見えておらず、欠点やその他の面が欠落していることがほとんどです。

どうか、ネットの情報を鵜呑みにするのではなく、あくまでも一情報としてとらえてお見積もりの相談にいらして頂けたら…と思います。

塗装職人では、創業32年の実績と現場経験からできる限りお客様の状況に合わせたご提案が可能です。
他社に比べれば、高い見積もりかもしれません。

しかし、これにはすべて費用に裏付けされた工程があります。そしてそれらの工程をこなすことができる、経験を伴い実力を備えた熟練の職人たちもいるのです。
裏返して言えば、安い工事というのは工程を省いていたり、経験の少ない職人を使ったりすることで、安くすることができます。

併せて観たいYouTube 塗装をして2年で外壁がはがれる悲劇 安さが魅力の業者も倒産!?

先日弊社にお越し下さったお客様が、おっしゃっていました。
実は相見積もりをしたところ、20万円ほど弊社の方が高かったのだそうです。

しかし、すべての工事において明確に内容を裏付けがあり、ブログも見て頂いていたことから任せたいと言っていただけました。
20万円という金額は、決して安い金額ではありません。
その上で、弊社の工事内容に賛同されご依頼を頂いたことは非常に嬉しく思いました。

 

お客様の家のホームドクターになる。
それが塗装工事を引き受ける際に、最終的に弊社が志すところです。

お客様の家の状態に合った工事を行うために、塗装業界や建設業界の実情を踏まえつつ、現場で得た経験をフルに活用して発信しながら、これからも工事をしたいと思います。
何かございましたら、いつでもご相談下さい。
ブログを読んで、興味を持って頂けましたら幸いです。

 

若い時から大手の大規模改修工事に携わり、官公庁の仕事も多くこなしてきました。知識は当然のこと現場も正しい仕事ができて当たり前です。常にお客様の立場に回り物事を考えて行動しています。 漏水対策も得意分野で2人の子供を抱えて毎日仕事に励んでいます。防水施工技能士。

些細なことでも構いませんのでお気軽にご連絡ください

通話料無料

0120-382-361

[電話受付時間] 09:00-20:00