もくじ
先日、雨漏りの応急処置をしたお客様宅から、屋根の報酬工事についての見積もり依頼がありました。さっそく自分が伺わせて頂き、カバー工法の見積もりをしたのですが
、いざ契約を結ぶ段になって板金屋の職人と一緒に伺い屋根に登ったところ、カバー工法では工事が出来ないことが発覚したのです。
今回は屋根の補修工事であるカバー工法と葺き替え工事について、お話し致します。
築40年の家 目に見えてわかる屋根の劣化
少し前に、雨漏りがあるからと応急処置のご依頼を頂いたお客様宅がありました。
行ってみると、たしかに軒裏が傷み、雨漏りがひどい状態です。
原因はスレート屋根とスレート屋根の隙間にゴミやほこりが詰まっており、水をうまく排出しないことが原因でした。
そこで屋根の縁切りをし、軒裏の補修を。
あくまでもこれは応急処置でしたので、お客様としてもゆくゆくは屋根の補修工事を行いたいので相談をさせて欲しいとおっしゃってくださり、その時は工事を終了しました。
その後しばらくすると、お客様宅へたくさんの訪問販売の業者が訪ねてくるようになったのだそうです。
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築40年のお宅ですので、外から目視するだけで屋根が劣化しているのが分かります。
そういう家を、訪問販売の業者は訪ねていき不安を煽るような不具合を言い並べ、工事をするよう誘導してくるのです。
ある時は、「近くに工事で来ているから、今だったらそこの足場を持ってくれば安く工事することができる」などいって、割引感を出して工事を持ちかけてきます。
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しかしこれは大嘘で、足場は必ず解体しなければ持ち運ぶことはできないので、安くなることはありません。
こちらのお客様も、そうした訪販のやり方を心得ていらっしゃるので、訪販にこれ以上訪ねてこられぬように、以前雨漏りの応急処置をした弊社へ屋根の補修工事についてご相談を頂いたのでした。
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図面の無いお宅の見積もり調査
今回は古いお宅でしたので、すでに図面がなく僕の方ですべて採寸をしました。
ここのところ、屋根塗装でお見積もりをしたあとに足場を組み屋根へ登ると、思ったよりも屋根材の劣化が進んでおりカバー工法にせざる終えないお宅が何軒かありました。致し方ないこととはいえ、工事の途中で方法が変わるのはお客様にとってなかなか辛いものです。
それですので、こちらのお客様宅は築40年と古い建物ということもあり、屋根工事は塗装ではなく最初からカバー工法で見積もりの作成を。
実は屋根というのは、実際に登ってみないと、全体の状態が分からないためどのような工事が適当なのか分かりません。
ですので、ご契約前に念を入れて板金の職人に最終チェックをお願いしました。
多くの場合は、足場を建ててからようやく屋根上にあがります。
しかし今回は、屋根の構造から安全を確保して見ることができたため、最終チェックを行いました。
いざ屋根上にあがり歩いてみると、べこべこと野地板などが腐っていることが分かったのです。
しかも垂木の方向が一般的な木造造りと逆なことも発覚。
つまり…カバー工法ができない状態の屋根だったのです。
カバー工法ができない屋根の状態とは
ほとんどの場合カバー工法では、元から葺いてあるスレート屋根の上に、更にガルバリウム鋼板などの屋根材を重ねます。
その際に、野地板に重ね張りする屋根材をビス止めするのですが、野地板が傷んでいる場合
は、ビスを長いものに変えて野地板の下にある垂木に向かってビスを打つのです。
通常スレート屋根は、横樋と並行になるように並べてあります。
それに対して木造造りの垂木は横樋に直角になるように組まれていますので、全てのスレート屋根の下に垂木がはしっている状態となるのです。
そのため、雨漏りなどで多少野地板に傷みがあっても、垂木で屋根材を止められれば、カバー工法は可能となります。
ところが、今回のお客様宅は通常の木造造りの家ではなく、鉄骨造りの家だったのです。
そのため、垂木が雨樋と直角ではなく並行に並べられており、スレート屋根の場所によってはビスを打つ箇所がない状態に。
前の雨漏りによって野地板が傷んでいたため、野地板にもビスを打つことはできません。つまり、完全にカバー工法は出来ない状態だったのです。
屋根の葺き替えとカバー工法はなぜ値段が大きく違うのか
カバー工法ができない場合、残された屋根の補修工事は、葺き替えしかありません。
そうなってしまうと工事費用は大きく変わります。
お客様宅の屋根は、もともとは予定していた金額で屋根補修と外壁塗装をするつもりでしたが、カバー工法が葺き替え工事となってしまったことで、予定金額で屋根の葺き替え工事の
みしか出来なくなってしまいました。
それくらい、カバー工法と葺き替え工事では値段が違うのです。
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なぜ100万円近くも値段が変わるかというと、それは工事の方法に理由があります。
カバー工法は先ほど紹介したとおりの施工方法ですが、葺き替えの場合、まずは屋根材を取り除く作業が必要です。さらにその廃材の処理費用(業者で出すゴミとなりますので産業廃
棄物扱いとなり、かなり費用がかかります)、廃材の運搬費用、野地板が傷んでいる場合は野地板の追加。厚さを調整するために1箇所だけマシ打ちするわけにはいかず、全面貼りと
なります。
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その上垂木が腐っている場合は、それも直さなければなりません。
葺き替えしか選択肢がないということは、カバー工法ができないほど野地板や垂木が傷んでいることがほとんどですので、それだけ修繕に費用がかかります。
またこちらのお宅の場合、面積が広い家だったため、屋根も広く…それがさらに金額へ大きく響いたのです。
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今回は工事前に屋根に登って見たところ、想像以上に屋根が傷んでおり、できる工事が屋根の葺き替えのみという結果に・・・・・・。そのため、せっかくお見積もり依頼を頂きましたが、金額が見合わずご契約には至りませんでした。
工事前に費用の全容が分かったので、お客様へご負担をかけることはありませんでしたが、ただ傷んだ屋根をそのままにすることになってしまったので、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
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傷んだ屋根のその後
今回もできればお客様のご要望にあった工事をご提案したかったのですが、どんなに方法を考えても葺き替え以外のご提案ができず、本当に残念でした。
とはいえ、工事をしなければ屋根の傷みは進んでいきます。
それどころか、さらに悪い状態になっていくでしょう。
ここで、ひとつ心配なことがあります。
それは、業者によってはこの状態の屋根でもカバー工法で工事を受注するところがあるということです。
もしもそんな業者がお客様にカバー工法を提案すれば、一時は屋根が綺麗になるものの、よりひどい状態になってしまいます。
傷みきった屋根に強行して行うカバー工法は、屋根を覆う工事をするだけなので、本来の屋根を補強するという効果は得られません。
ただ、化粧直しだけをするようなものです。
工事後に大風や台風などが来た際には、カバー工法で貼りつけた打ち付けの甘い屋根材部分が風でまくれ上がり、もっとひどい状態になってしまうでしょう。
なんとかその状態だけは避けられればと、願うばかりです。
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屋根が傷みきる前に行う屋根塗装の大切さ
外壁塗装も同じではありますが、屋根塗装はできれば10年に一度ほどやることをおすすめ致します。
それはある意味、屋根の傷みを定期的に調べることに繋がるからです。
多くのお客様は、雨漏りが起こってから屋根の傷みに気がつきます。
しかしそれでは遅いのです。
一見すると何十年も持つように見えるスレート屋根ですが、やはり限界は来ますし、早めのメンテナンスこそ節約に繋がる一番の近道となります。
屋根は運が良ければ状態が保たれますし、あまり屋根上を見る機会もないため、危機感を持ちにくい部分です。
どうかこうしたブログを通して、屋根の定期的なメンテナンスの大切さを知って頂ければと思います。
屋根は家にとって、一番大事な部分なのですから。