実は難しい擁壁の塗装 小さな箇所なのに職人技が必要な理由とは 

今回は公園にある、擁壁の塗装工事の紹介を致します。
造園業者の紹介によって、担当した区の工事だったのですが…少し身構える工事でした。
なぜなら、地面に直接立っているコンクリート壁のため非常に水分を含んだ壁だったからです。


塗装工事の際に、家の基礎、家を取り囲むブロック塀や擁壁、門壁なども一緒にご依頼頂くことがあります。
そういった壁は、地面から吸い上げた水を外壁の中に含みやすい場所なので、塗り方や塗料の選び方に注意が必要です。
今回は、そうした地続きになっている外壁塗装工事についてご紹介したいと思います。

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なぜ擁壁塗装は大変なのか

まずは今回行いました擁壁の塗装工事についてご説明いたします。
この擁壁は、先ほどもお話しました通り公園にあるものでした。

擁壁は塗装面積もそれほど広くないため、小さな工事ではありますが地続きなため、いろいろ対処しなければなりません。
まずは塗料選びです。
こうした地面に直接触れている壁は、下から水を吸い上げやすく壁の中に多くの水分を含みます。そのため、塗料に望ましい性質としては、透湿性があり、塗った際には外からの水分を通さないもの。わかりやすい素材で例えると『ゴアテックス』が近いでしょう。

材料屋に問い合わせても、使用可能な範囲で提案される塗料は本当に少ないのです。
つまり、塗料を選ぶところから、非常に難しい工事といえます。

公園の擁壁塗装方法

では、ここからは実際の塗装工事をご紹介します。
まずは、高圧洗浄機を使った外壁洗浄です。
地面に近く、雨ざらしの中にある擁壁なので、苔やゴミなどが沢山付着しています。

こちらが高圧洗浄をかけたところと、かけていないところの写真です。
目に見えて、洗浄をかけた効果がご覧頂けるかと思います。

さらにかつて子どもが書いたと思われる壁画のようなものもあるので、それらも丁寧に落とし高圧洗浄は終了です。

次に、水性のカチオンシーラー(下塗り剤)を塗っていきます。
この下塗り剤も、呼吸するタイプのものを選びました。


ある程度擁壁の地を固めるためにも、ここでしっかりと下地剤を塗り込むことが必要です。
このカチオンシーラーは接着剤的な役目もありますので、土台と上塗り材をしっかりと密着させるように塗装します。
今回塗った擁壁は、土台が比較的しっかりとしたものではありましたが、ものによっては土台のコンクリート自体がボソボソと崩れやすくなっているものも。

また擁壁は、塗料を吸い込むため、面積が小さいにも関わらず塗り込むのに時間がかかります。そのため、せまい塗装面積ではありますが、ほぼ一日がかりの作業になるのです。

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下塗り剤を塗り込んだら、続いて中塗り、上塗りをします。
ここでは、セラミガードNEOを選びました。


これは昔からある塗料で、塗料の説明書きにも透湿性があり、『基礎部分にも』使用が可能とあります。(しかし、あくまでも外壁用で擁壁、門塀、基礎部分などが1番目の使用用途ではありません)

このセラミガードNEOですが、艶無しのマットなタイプの塗料となります。
擁壁、門壁、ブロック塀などに塗る塗料は、艶無しを選ぶことが基本です。
なぜなら塗料というのは、一般的に艶があるほど透湿性が少なく、艶がないほど透湿性がある塗料となります。


もしも間違えて艶有りの塗料や暑い塗膜の弾性塗料などを塗ってしまうと、透湿性のないことで水分が壁内に溜まり、膨れを起こす原因になることも。
例えぎりぎり膨れを起こさなくても、艶有りタイプ、弾性タイプの塗料の上に擁壁用の塗料を重ねても、元の塗膜が膨れてしまい、塗装職人では手の施しようがなくなってしまうのです。
それだけ、塗装方法や塗料と下地の相性選びは難しいと言えます。

ブロック塀の塗装にも注意が必要

次にご紹介しますのは、ブロック塀の塗装工事です。
ブロック塀もまた、地面に接しているため水分を吸い上げるタイプの壁となります。
そのため、塗装職人がこちらの現場でブロック塀を塗装した際は、表面だけ塗装し裏は水分が抜けるように塗らずにそのままにして地面から吸い上げた水の逃げ道を確保を。

ところが、このブロック塀。家の外壁などに比べると工事が簡単そうに思えるのか、お客様がご自身で塗装されることがあります。
ホームセンターで購入した、透湿性のない塗料を塗り、地中から吸い上げた水分の出口を塞いだことで、膨れの原因になってしまうのです。

こうなってしまってはもう、塗装職人では手の施しようもありません。
最悪…ブロック塀を取り壊すしか方法がない場合も…。
ブロック塀は一見すると簡単に塗装ができそうですが、非常に難しい塗装箇所なのです。

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簡単ではない擁壁塗装 是非塗装職人にご相談を

今回、公園の擁壁工事は3日間にわたり行われました。
1日目に高圧洗浄で壁全体を洗い、2日目にはシーラー、3日目に中塗り、上塗りを。
水を吸いやすい壁だったため洗浄の後は1日置くなど、小さな擁壁にも関わらず、外壁工事と同じくらい時間がかかる工事でした。


擁壁は、家の外壁に比べれば非常に小さな塗装箇所ですが、材料の選び方、塗り方など非常に細かな気遣いが必要となります。
くれぐれも、「簡単そうだから」とホームセンターの塗料で塗らないでください。
数千円で済ますはずの工事が、数十万円かけてブロック塀を取り壊す原因となります。

擁壁や、門壁、ブロック塀、家の基礎など…塗装をお考えの際は、是非一度弊社までご相談を。
難しい判断が必要な箇所ではありますが、お客様の家を守るために現場経験と、水分の回り具合などを踏まえて、ベストな工事を致します。

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建築施工主任 家のことを何でも出来るようにと、20代の時に長野県の木造建築の親方に弟子入りして大工の道へ進む。30代の時にはキャパシティを拡げるために農業や造園業にも従事。造園業では外構工事も多く手掛け、家に関するエキスパートとして活躍。見えるところだけではなく見えないところも手を抜かずにやるのがモットー。妻と子供2人の 4人家族。

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